ありきたりなお話をひとつ


「とまあそんな話。

 驚かれた方もいるかしら?


 私にしては平凡でしたものね。


 一人暮らしの男性が

 自室で長い女の髪の毛を見つけてから

 ラップ音などの怪異に襲われるという。


 オチではね、

 寝ていたところに首を絞められましたが

 彼はご健在なんですよ。

 ほら、今日もそこに。」


と、女怪談師が観客席を指さす。



そこには誰もいないパイプ椅子が一つだけあった。


ザワつくファンを尻目に彼女は

「なかなかにハンサムでしょう?

 遠路はるばる来てくださったのよ。」

 と空に笑いかける。



このライブを最後に、彼女は消息不明となった。

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