A大学民俗学名誉教授B氏の話
突然の連絡だったのに会ってくれてありがとう。
そして、「何も聞かずにこれらの資料に目を通してくれ」という私の願いを聞いてくれたことにも感謝するよ。
そこにある資料は、それぞれに付けられたタイトルの通り、ある村に子供たちの間だけで流行っているペコペコという都市伝説についてのものだ。
初めてそれについて聞いたのは、
私のゼミに来ていた春子という女性からの情報提供だった。
彼女の親戚が住むその村では、
口裂け女やトイレの花子さんよりも
ペコペコという山で聞こえる謎の音の噂が流行っていると。
なぜ、姿かたちもなく、ただ音がすると言うだけなのにこんなにも村では大きな存在として崇められているのか知りたくなった私は
ペコペコに関して調べあげたんだ。
最初は図書館、次にネット、新聞記事という具合に調べていき、そして、現地に赴いて見つけてしまったボイスレコーダーと古文書を見て
私は、このペコペコがただ音を出すだけの怪異では無いことに気づいてしまった。
いいかい?これから私は君に一つだけ疑問提起をするよ。
何故はっきり全てを言わないかと言うと、
君を危険に晒さないためだ。
それだけ、ペコペコというものは危険なんだ。
資料を読んだ君ならもうわかっていると思う。
いいか?君。
姿を見たものが居ないのになぜペコペコは侍の姿をしていると決められているんだ?
それを印象づけるように村ではわざわざ
侍一色の祭りまで行っている。
これは、ペコペコはあくまで古くから山にいる妖怪のたぐいであり、ただの音であり、
現在も存在しているものでは無い、と
人々に暗示をかけるためでは無いのか?
私が言えるのはここまでだ。
私が君にペコペコの情報を提供したのは
この闇の出来事を世に公開してもらうため。
ただし、それこそ、新聞のように書いてしまえば、見た人や君自身に危害が及ぶ可能性がある。
普段から小説を書いている君だったら
きっと上手いことペコペコの情報を世間に
広めてくれると思ったんだ。
約束してくれ。
ペコペコに関する情報は伏字を多く使って、
さも作り話かのように書いて欲しいんだ。
ペコペコに関して書く時は必ず、この文言をつけてくれ。
いいかい?約束だよ。
これはみんなを守りながら、忌まわしい儀式の内容を広め、尊い命を救うためには必要な言葉なんだ。
いいかい?必ずこう付け加えるんだよ。
『ペコペコに関する噂は全てフィクションです。』と。
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