第114話 潜入者

「グアッ! ラ、ランタン伯爵様の企みで、わ、私はそれの裏付けを取るた、ためコ、コバルト公爵様の依頼で――」


「アンラとめろ! コイツ、ギルマスの仲間だ!」


「ええ~、まあ良いけどさぁ~、ほいっと~」


 最後に残り、俺の攻撃を避けた男はギルマスの依頼でこの人攫い集団の中へ潜入していたようだ。


 俺の一撃を避け、アンラに自白魔法をかけてもらい、退治している時に質問したんだが、のたうち回りながら喋った内容に驚いた。


「大丈夫か? 依頼とは気付かずすまねえな」


 魔法を解いてもらい、なんとか座り込んだ状態で顔を上げた男、兄ちゃんは、ふぅと息を吐き俺達と、向こうの五人を見た。


「なぜ向こうの奴らも倒れてるんだ? あっ、馬車の奴らもか! いったいどうやって……」


眠りヒュプノスを使ったからな。それよりランタン伯爵が人攫いもやってたんか? 馬車狙いの盗賊もやってやがったのに?」


「なぜそれを知っている!? それは別の潜入者が進めていて、まだ内定前の事だぞ? ……君は何者だ?」


 簡単に、馬車狙いの盗賊も捕まえた事を話し、王様達も知ってる事だと話しながら眠らせた男達を縛る前に、馬車に捕まっているエルフ達を解放させる事にした。


 馬車から助け出したエルフのみんなに水と、簡単な食事を用意して食べてもらい、俺と五人の冒険者、それと潜入していた兄ちゃんで、人攫い達を縛り上げ、エルフ達が捕まっていた馬車に押し込んでおいた。


 もちろん武器や魔道具なんかはアンラが全部取り上げてあるから逃げる事はないだろう。


 押し込み終わり、夜営地の真ん中にみんなで集まり、食事をするエルフ達に今回の事を話し、潜入していた兄ちゃんは始めに謝り、事情を説明した。


「――と言うわけで、辛い思いをさせで申し訳ない」


 そして腰から曲げて頭が足にくっつくほど頭を下げた。


「ふむ、頭を上げてください。それで私達は解放されて村に帰れると? 人攫い達はまだ村にいて、残りの者達を見張っているのですが」


「そうなんか?」


 エルフの男の人が兄ちゃんの話を聞いた後、そう教えてくれたので、それならそっちも捕まえねえと駄目だな。


「ならよ、俺はエルフの村に荷物を届けねえといけねえし、手紙もか……」


「なら寝る前に行っちゃう? 朝にみんなには戻ってもらうとしてさ」


 ちと考えている内にアンラはそんな事を言ってきた。


 兄ちゃんに聞くと、人攫いのリーダーはもう捕まえたが、サブリーダーが村に残っているそうだ。


 人数は十五名で、魔法使いが一人いるという。


 リーダーとサブリーダー、それに魔法使いはランタン伯爵の直属部下だそうで、他の者もそうだがその三人は絶対逃がせない、ランタン伯爵を問い詰められる証拠になるらしい。


 まあ、馬車狙いの盗賊の事でもう王様達も動いているとは思うが、次から次へとランタン伯爵の悪事が出てくるもんだぜ。


「よし、エルフのみんなは明日の朝に来てもらえっといいか? それとも今からは暗いし無理だよな」


「そんなの考えないでさ、さっさと行って眠らせて縛ってさ、フルフルに運んでもらえばあっという間じゃない?」


「おっ、それもそうだな。フルフル、頼めっか?」


 俺とアンラの話しについてこれないみんなの事は放っておいて、肩にいるフルフルに聞いてみると『ピッ』と返事をしてくれた。


『良いと言ってますね』


「ありがとうなフルフル。んじゃ、すぐ行って帰ってくるからよ。アンラ、行くぞ」


「は~い、なら夕ごはんの鍋は収納しておくね~」


 鍋を収納したのを見て驚き、フルフルが肩から飛び立ち大きくなって少し離れたところに着地したのを見て驚愕し、フルフルに飛び乗り飛び立った後、下から色んな声が聞こえた。


 ……まあ帰ってから説明だな。


 気配を探り、暗い空を俺が示すまでもなく、あっという間に森の中で焚き火の灯りが見える、エルフ達が住む村の上空に到着したようだ。


「面倒だし、村全体を眠らせる? エルフ達は後から起こせば良いよね? あっ、魔法使いがいるなら魔道具を持ってるかもしれないのか~」


 フルフルの上で、俺を後ろから抱きしめてソラーレが乗る肩の反対側に顎をのせているアンラ。


「そうだな、寝かせて、起きている奴だけシバいてやっつけるか?」


『アンラよ、ケント様にそんな手をわずらわせる事をせずとも、姿を消して魔道具を奪った後に眠らせれば良かろう』


「おお! ダーインスレイブ賢いじゃん♪ じゃあ~それで! 姿を消して~行ってきま~す。ほいっとぉぉぉ~♪」


 俺に回していた手を離し、フルフルの上で立ち上がると、ぴょ~んと飛び下りた。


 百メートルは高さがあるのに気軽に飛び下りて行くとは流石だな。


 十分ほど経った頃、下で手を振るアンラが見えた。


 フルフルも気付いたのか、急降下で高度を落とし、ズンと村の広場に着地した。


「きゃぁぁぁ! エ、エンペラーイーグル! 世界樹の守護者様が!」


 なんだ? エルフ達は眠らせてないのか?


 フルフルが降りた広場には……十五人の男達が転がっており、その広場を囲うように建ち並ぶ、木でできた家の影から縛られていたロープを外しながらエルフ達が現れ、フルフルの事を見ながらそんな事を言い出し、広場に入ったところで膝をつき、手を組んで拝み始めた。


「ぬふふふ! どうどう? 人攫いだけ眠らせたよ~、言われてた通り十五人だし、これで解決だよね~」


 長いロープで男達を縛り始めようとしているアンラはドヤ顔で腰に手を当て、胸をはっている。


 やるじゃねえか、褒めてやるか。

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