　彼が告白する一年ほど前、腰まで届く長い金髪の女性レイラ＝フォードは、とある中学校で英語の教師をやっていた。

　レイラはある時、担任でもないにも関わらず、とある生徒を進路指導室に呼び出した。

「安藤くん、担任の先生から第一志望の高校を見せてもらったんだけど、今の君の成績なら確かにギリギリ合格できるとは思うわ。でも、受験がゴール地点ではないことは理解している？」

「はぁ……どういうことですか……？」

　安藤と呼ばれた少年は、日頃から勉強を頑張（がんば）っているにも関わらず、褒（ほ）められていないと感じたのか不服（ふふく）そうな顔をしていた。

「君は勉強熱心（べんきょうねっしん）だし、この中学では成績が優秀（ゆうしゅう）な方だけど、恐（おそ）らく第一志望の高校では下位（かい）近くの成績になってしまうかもしれないわ。せっかく良い高校に入れても、そこで勉強について行けなくなって落ちこぼれてしまっては意味がないわ」

　レイラは言いくるめようとしているのか、尤（もっと）もらしいことを話している。

「どうしても君が第一志望の高校に行きたいのであれば止（と）めはしないけど、個人的にはもうワンランク下げた第二志望の高校を勧（すす）めるわ。高い成績を取り続けた方がモチベーションも上がって、結果的に第一志望の高校に行くよりも良い結果を生（う）むと思うわ。一度親御（おやご）さんとも相談してもらえるかしら」