俺は私!?よく分かんないけど、二人で英雄目指して頑張ります!!

@voidlast00

第1話 遭遇

異世界ーその言葉を聞くとみんな想像するのは剣と魔法のがあり、様々な種族が行き交う魅力的な世界だろ。確かに現代は200年以上前の人達からすると異世界に見えるだろう、ただ違うところがあるとすれば様々な種族はいないし、何よりその世界は地球なのだから。


そんなことを考えながらボイドは少し暗めの灰色の髪を揺らしながらため息をついた。

「剣と魔法の世界じゃなくて剣の世界だったなら良かったのに…」

地球は200年前突如として異変を迎えた。空、いや宇宙空間にヒビが入ったと思ったらそこから大量の隕石が地球に向かって降り注いだ。その結果世界中の国が莫大な損害を被った、それだけならまだ良かったのだがそこからさらに悲劇が起こった。降り注いだ隕石ひとつひとつに大量の魔力が内包されておりその魔力が地球に流れ出し、人々が魔法を使えるようになった。えっ、これの何が悲劇だって?確かに魔法はとても便利だ、今でも全人類が使っている。だが、世の中当然いい人ばかりではない、多くの人が魔法を使って悪事を働いた、争った。多くの人が死ぬ、明日の我が身の安全すら分からない世の中は混乱した。暗い時代、世の中が混沌となった時代が100年近く続いた。だがその時代も終止符を迎える、一人の人物によって

「じゃあ、ボイド、この問題答えてみろ」

「あっ、はい。シーク様です」

「正解、じゃあ次の問題いくぞ!」

ここは魔法学園、魔法の才能を持つ未来ある若者たちが魔法を学ぶために作られた場所。この学園を卒業した者は軍や国家の魔法研究部など安泰が約束されている。それゆえに、倍率は毎年とても高い。町全員で試験を受けて合格するのすら奇跡に近い。

(やっぱ、シーク様ってすごいよなー)

そう、先ほど問題に出ていたシークというものが混乱した暗い時代に終止符を打った人物。圧倒的な力で悪党たちを成敗し、世界をひとつにまとめたのである。その後、自身は最高権力者になり、10人の優秀な部下を幹部にして使い、様々なことに力をいれた。

この学校もシークによって建てられたもので、次世代を育成し優秀な者はシークが直々に指名し、幹部たちから様々な知識、経験をもらい次の幹部になるために建てられた。なのでみんなシークに指名を受けようと必死に勉強している。

(ただ一人俺を除いて、な)

ボイドがそう思いながらまた大きくため息をついたとき、

「そんなため息ついてどうしたの?」

と、隣の女子が話しかけてきた。

「いや、何でもないよ、ラブ」

「そぉ、ならいいけど悩み事があるならなんでも相談してね」

笑いながらそう言ったこの女子は、ラブといってボイドの唯一といってよい友達である。素直でとても明るく、周りからの評判もいい。見た目もよく、髪は金髪で目がライトグリーン色、肌は色白でシミがひとつもない。まさに絵に描いたような若い女子だ。

「お前も中々大変なこと多いんじゃないか?今だって大変そうだし」

そう言ってボイドは彼女のそばにある大量のプリントを見る。

「ははっ、否定はしない」

「しないんかい」

別にこのプリントは勉強が出来ないやつに渡される地獄の問題集ではない。むしろ彼女は頭がいい、成績も上から10番以内に入っている。なのに何故こんな大量のプリントがここにあるのか、それは彼女の性格のせいで、彼女は頼まれたら断れないお人好し…いや優しい性格なのである。さらに成績もいいので教師からの信頼も厚い。ゆえにこうやって教師から雑務を押しつけられるのである。そこで断ればいいだけなのだが彼女がお人好しなせいで引き受けてしまう。

「ほんと、よくやるよなお前も。それ教師の仕事だろ?別にお前がやんなくてもいいんじゃないのか」

「それはそうかもだけど、頼まれちゃったから断れないし…」

「まじでお人好しだな」

「そこは優しいって言って欲しいな…それにほら私ってみんなみたいに裕福な家じゃないからね、少しでも先生からの印象は良くしたいじゃない?」

そう、彼女が今言ったようにここに通っている生徒のほとんどは裕福な家に生まれた者ばっかだ。理由としては、魔法の才能は遺伝することが多い。親が優秀ならその子もまた優秀、これが普通である。優秀な親は当然シークに指名されたり、されなくても有名な会社の幹部になったりしている。ちなみに社長にはなれない、これは絶対のことで社長イコールシーク直属の幹部でそこからさらに枝のように分かれている。だから支部長などになることは出来ても社長にはなれない。

「……手伝うよ、何をすればいい?」

「えっ」

ボイドがそう言うとラブは驚いた。どうやらボイドが手伝うとは思ってなかったらしい、ちょっと心外である。

「生徒にやらせるってことは重要な書類とか無いだろ」

あったとしても精々各授業の年間費用ぐらいだろう。

「んで、何すればいいんだ」

「えっと、じゃあこれお願いできる?」

渡されたのは各学年の授業日数確認の書類だった。

「ん、任せろ」

本当はもっとめんどくさい書類を渡されても文句無くやるつもりだったのだが、恐らく言ってもやらしてくれないだろう。なので渡された書類をやることにした。

「そういえば、次の授業ってなんだっけ?」

「確か…魔法実技だね」

「うわ、マジかよ、一番嫌いな授業だわ……」

あははと、ラブが愛想笑いをする。恐らく多くの生徒が楽しみにしてあるだろう魔法実技の授業だが、ボイドにとってはただの苦痛でしかなかった。

「っと早くしないと休み時間が終わっちまうな」

「そうだね」

そして二人は黙々と書類を整理していったのだった。

―――――――――――――――――――――――


「では授業を始めます」

あれからなんとか大量の書類を終わらせてギリギリ授業に間に合った。

(まじであの量を一人で終わらせようとしていたラブには驚きを隠せないな。)

本当あのお人好しの性格はどうにかならないのか、とか考えていると先生に当てられた。

「ではボイド君、魔法属性について説明しなさい」

なんか今日よく当たるな、と思いつつ答える。

「そもそも魔法というのは魔力を使って強制的に自然の法則を起こすものです。魔力はどんなものにも宿っていて、それは人も例外ではありません。個人差はありますが誰でも体内に魔力を宿しており、魔法を使えます。」

「さらに魔法には属性があり基本的に、火·水·風·土·雷·氷·光·闇の八つに別れています。さらに無もありますがこの属性については前例がないため詳細が何も分かっていません。理論上あると言われているだけで、実際は存在していないのではないかとも言われています。」

「よろし……」

「そして魔法属性はどんどん増えていってます。最近では火と風を合わせた火焔、風と雷を合わせた嵐、風から派生した音などが確認されました。」

「……よ、よろしい。」

なんか先生がが若干引いてるような気がするがそこは気にしない。

「では、実際に魔法を使ってみましょう。各々得意な魔法をあの的に向けて打ってください、くれぐれも人に向けるんじゃありませんよ。そんなことをしたら私が直々に罰則をしてあげましょう、魔法の恐ろしさがよく分かるようにね……」

そう言うと教室全体の空気が張り詰めた、みんな間違えても人に打たないにと考えている。

(これが他の先生だったら、バカな連中が人に向かって魔法を使ったりするんだろうな…)

何を言おうこの先生はとても怖いのである。世界にまだ数人しかいない精神魔法を使う人で、噂によれば数々のテロ集団に精神魔法を使って拷問したことがあるらしい。精神魔法はどれだけ肉体が強かろうが防御魔法が優れていようが関係なくかかる。要は精神力の問題なのだが大抵耐えられない。そんな先生に逆らったらどうなるのか……考えたくもない。そんなこんなでみんな的に向かって魔法を打ち始めた。

「ファイアーボール!」

「ウォーターバレッド!」

各々得意な攻撃魔法を打ち始める。大概は初級、レベル2。稀にレベル3や4の中級魔法を使っているがやはり威力は低め、的に当たっても傷がつくだけで壊れはしない。ちなみに参考としては、レベル1から2は初級魔法、3から5は中級魔法、6から8は上級魔法、9は極大魔法、10はロストマジック、失われた魔法って言われている。

これが熟練の人だったら例え初級の魔法を使ったとしても、的は跡形もなく破壊されるだろう。

(はは、おばさんのやつと比べたらお遊びレベルだな、当たっても痒いだけで済みそう)

そんなことを考えていると

「さぁ、ボイド君、君はこっちです」

「はーい」

先生に呼ばれてボイドは近くによって行く。先生に呼ばれたということで周りの生徒がこっちを見てくる

「またアイツだよ……」

「何だよ…一人だけ特別扱いか」

「あの男子……使えないくせに」

「「「魔法が使えないくせに」」」

そう、みんなが言っている通りボイドは魔法が使えない、だが魔力量は学園創立以来最大で、量だけで見れば最高権力者シークと遜色ないレベル。故に最初は期待されていたが魔法が使えないと分かるとこの様子である。

(ほんっっと、人って分かりやすいよな。まぁもう慣れたからいいけど)

みんな好き勝手に言ってくれるものである。使えないだとかザコだとか結構罵倒されたときはあったが、今はこうやって陰口を言ってくるだけで済んでいる。

理由は単純、この学園が実力主義でボイドが実力だけで言えばトップレベルに入るから。もし、魔法禁止の闘いをやったら確実に一番上になる。実際ここにいるクラスメイト全員(ラブ以外)がボイドに決闘という建前で喧嘩売ってきたので、最初は1対1でフルボッコにしたら残りの27人全員一斉にかかってきたのでこれも全員フルボッコにした。そしたら翌日から悪口を言わなくなった、代わりに陰口を言うようになったが……。

「では始めますよ、準備はいいですか?」

「OKです」

「いきます、精神干渉魔法レベル7」

そう言うと先生の周りに大量の魔方陣が浮かび上がり光始める。

(魔法発動までに10秒も要してないところ本当にすごい、熟練の人でも上級魔法ともなれば30秒はかかる。)

そんなことを思っていると、急に視界が真っ黒になる、体の感覚もない。先生の術にかかったのだとすぐに気づく、精神干渉魔法はその名の通り対象の精神に直接干渉し思いのままにする。ここで凄惨な光景を見せたり快楽を覚えさせたり、と色々できる。生かすも殺すも術者次第ということである。

(さて、こっちもやり返しますか)

何故先生がこんな魔法をかけてきたかというと、ボイドには精神系魔法の素質があるかもしれない、とのことだ。なにせ、最初の授業のときに先生がクラスの生徒全員に初級の精神魔法をかけたのだが、ボイド以外の全員きれいに術にはまったのである。それが普通らしいがボイドにしてみれば、なんか一瞬嫌な感じがしただけで済むらしい。これを機に先生とマンツーマンで精神魔法の訓練をしている、お陰でだいぶ魔法に対する耐性がついた、勿論魔法は使えなかった。徐々に魔法の威力を上げていって遂に上級魔法に対する訓練が始まった。これが中々に難しいのである、中級までは、もどるぞーって思ったら戻れたのだが上級ともなるとそう簡単には戻れなかった、訓練をしてから1か月以上毎日魔法に抵抗するも、一回も戻れた試しがない。そんな中、いつも通り戻ろうと精神世界で努力していると不意に後ろから声がした。

「頑張ってるね」

振り返るとそこには、少女が一人こちらを向いて立っていた。

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