第60.5話 江田島の手紙

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 拝啓

 如何がお過ごしでしょうか。


 さて、今回手紙をしたためましたのは、

 孫の顔が見たいのはもちろんですが、

 気のおけない方々と久しく語らず、

 私も少々、気が滅入っております。

 …

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 台所で、クスクスとクローネが笑っている。

「もう、あの子ったら…」

 先ほど受け取った江田島からの手紙。

「相変わらずの筆不精ね。」

 そう言って、お茶セットを持って居間へ移動する。


 居間には、ミユウマユミが待っている。

 テーブルにお茶セットを置くクローネ。

「お母さん、さっきの手紙は誰からだったの?」

 ミユウが身を乗り出してくる。

 マユミは感心なさそうに外を見ているが、うさ耳はしっかりクローネの方を向いている。

「お父さんからよ♪」

 クローネの言葉に耳を疑うミユウ。

 今まで、ゴンゾーの事をと呼んだことのない母親クローネの言葉だけに、ミユウは驚き、母親の顔を覗き込んだ。

「ん?

 どうしたの?」

 母はいつも通りの顔だった。


 ◇ ◇ ◇


「…なぁ、ルーよ。

 お義母さん、おかしくないか?」

「ロイ君もそう思う?」

 いつになく楽しそうに洗濯をしているメアリ。

 その後ろ姿を訝しそうに眺める若夫婦。


「何があったんだろう?」

 ロイが首をひねれば、ルーも肩を竦めてみせる。

「もぉ~。

 本当に、筆不精なんだから。」

 そう言ってシーツをパンッとはたくメアリ。

 本当に満面の笑みをたたえた、いい顔になっている。


 なぜか分からないがモリオンも揃って笑顔で洗濯を手伝っている。

「何か変なモノでも食べたのかしら?」

 謎が募るルーさんだった。

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