第4話 変遷

「よし!

 では、出かけるとしよう。」

「はい!!」

 江田島とメアリ達は初クエストに向けて準備を整え、クローネの店を出発する。

「いってらっしゃ~~い。」

 クローネ達が見送る。


 ◇ ◇ ◇


 初級者鉄板のクエスト「薬草積み」に出発した江田島一行。

 採集などの方面は、亜人たちの得意分野のようで、近隣の林に探索に入ったところ、程なく依頼数も集まり、早々に冒険者ギルドに引き上げる。

 戻る途中も薬草を集めていく女性陣。

 気がつけば、依頼数の二倍も集めてしまっている。

「大丈夫かなぁ?」

 江田島は不安そうにしている。

 が、女性たちは気にするふうもなく、冒険者ギルドに入って行く。


「はい、クエストは無事完了していますね。

 …二回分で処理しますね。」

 理解の早い受付嬢に江田島は頭の下がる思いであった。


 思ったよりも良い収入になった事もあり、わいわいと帰る江田島一行。

 最後尾にいる江田島とメアリが話し合っている。

「二回分の査定をしてもらったのは、有難かった。」

「そうですね。

 次も頑張ってみましょう。」

「そう言えば、メアリ達も冒険者にと言っていたが?」

「はい、私達も冒険者になってみてはどうかというお話ですね。」

「ああ、だが、良い事なのかどうか判断がつかぬ。」

「当面の収入を得るという事であれば、いい選択だと思います。」

「そうか…。

 では、クローネ殿に迷惑がかからないようにせねばならんし…。

 すまんが、お願いするとしよう。」


 頭を下げる江田島とウインクで答えるメアリ。

 クローネが店舗を再開するにしても、ミランダ達のケアに注力する必要があり、お店の運営はまだまだ先の事になっていた。


 ◇ ◇ ◇


 薬草集めを続ける事一ヶ月。

 地道な努力と確かな結果を残すという事で、次第にギルドの信頼を勝ち取り、冒険者パーティーのレベルが1段階上がった江田島チーム。

 薬草採取も、単なる薬草の採取に加え、鉱石の採掘、モンスターの部位集めも加わり、報酬の対価もぐっと上がってきた。

 駆け出しのころは、日用服とサンダル程度の装備だった。

 今の装備を眺めてみれば、皮の胸当て、ミトンのような手袋、なめし皮の靴、短剣という装備に改善してきた。

 江田島も小銃と日本刀の使い分けから、小銃をミルに渡し、日本刀に集中するようになった。


 木刀も購入し、暇さえあれば、江田島の師事のもと、メアリ達にも剣術指南が行われていた。

 クエスト中のモンスター討伐も順調に運び、クエスト対象外のモンスターであっても、丁寧に解体することで、換金時に多少の色がつくことが多かった。

 子どもたちが居る事を鑑み、クエストは決して無理のないよう、冒険者ギルド側とも十分に打ち合わせをしていたので、窮地に追い込まれる事も無かった。


 ◇ ◇ ◇


 さらに二ヶ月が過ぎる頃、江田島は剣士クラスを取得。

 メアリは狩人レンジャー

 ミルは狙撃手スナイパー

 モリオンは暗殺者アサシン

 マユミは回復職ヒーラー

 と、それぞれにクラスを獲得していった。

 その頃には、亜人とはいえ、メアリ達も一目置かれる存在になっていた。


 いよいよ、全員が装備の充実に取り組もうかとする頃、クローネは被服の販売仲介、被服補正修理の店を始めた。

 江田島たちがクエストをこなす一環で、クローネ達が襲撃された所に行くことがあり、放り出していた中古服の回収に成功。

 どうにか店舗を開けるだけの品数もそろい、ミランダとパティーも、ご主人の喪失感から復帰し、徐々に針仕事にも習熟していったのである。


 ◇ ◇ ◇


 江田島たちが村に来て半年。

 一定の結果を出せるパーティーとして認識される江田島さんたち。

 クローネたちの店舗も軌道に乗り出す。


 ただ一つの問題、それは、彼女たちの子供に居場所がなかった事である。

 村に学校のような施設が無かった事もあるが、身寄りのない子供たちのような扱いを近隣の家庭から受けていた。

 少しずつ元気がなくなる子供たち。

 子煩悩な江田島は忙しい最中でも、どうしたらいいのかと悩み始めていた。


 たまたまクエストが無い日があれば、駒や竹とんぼを作っては、子供たちに遊び方を教え、盛んに遊ばせていた。

 当然近所の子供たちも欲しがるので、分け隔てなくおもちゃを与え、一緒に遊ばせた。

「貴方も好きよねぇ。」

 クローネ、メアリが異口同音で言えば、江田島はただニコニコするだけだった。

「だって、子供は国の宝じゃん!」

「はぁ…。」

 そして、クローネ、メアリはため息をつくのだった。


 ◇ ◇ ◇


 夕食の準備をしながら、メアリがクローネに相談を持ちかける。


「私達はそろそろ店を出ようと思うの。

 これ以上迷惑はかけられないし、私達も家を構えられるようになったから…。」

 メアリが切り出す。


「私は居てもらっても構わないんだけど…。

 むしろ一緒に居てもらった方が助かるのよね。」

 クローネが答える。


「助かる?」

「金銭的には勿論、子供たちが一緒に遊んでいるのが救いなのよね…。

 私達も店舗で謀殺されてるから、子どもたちの面倒までは…。」

「でも、お互いのプライベートがあるでしょ?」

 二人の間に沈黙が流れる。


「であれば、もっと大きめの店舗いえに引っ越すってのはどうかしら?」

「!!!」

 メアリの提案に絶句するクローネだった…が

「それも有りかも知れない。

 貴女たちも力をつけてきた事だし、新天地サイネスに移動するのもいいかもしれないわね。」

「あとは、江田島しだいかしら?」

「あら、押し切ってもいいかもしれないわよ。」

「まぁ♪」

 クローネとメアリは笑い合った。


「じゃぁ、根回しをするという事で。」

「りょ~~かい!」

 二人は意気投合し、話はまとまった。

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