佳織が見た星空⑥

「ほら、天の川に3つの明るい星がる。夏の大三角」


晴彦はすぐに見つけることができたようだった。

私も見つけることができた。

確かに、三角になっている。


「わし座のアルタイルが彦星。

 こと座のベガが織姫。

 ちなみに、大三角のもう1つは、白鳥座のデネブ」


「なんだか、三角関係みたい」


「おいおい、佳織……」


「でさ、琴座ってことは、織姫様は琴を演奏できるの?」


「う~ん……琴座は西洋の星座の話。七夕は中国の星座の話。

 だから、織姫と琴は関係ないよ」


「なあんだ。せっかくなら、

 織姫はピアノ座の星にしてくれたらよかったのに」


「……佳織らしいな」


今日からちょうど1か月後の8月7日は、実は私の誕生日。

北海道や東北の一部では、8月7日が七夕まつり。

七夕の日に生まれたので、

私の名前は織姫様から一字取って、佳織になった。


彦星の彦の字が付いた晴彦と、

七夕の夜にこうして付き合っているのも何かの縁かも。


「東洋では琴座は織姫様だけど、西洋では男だよ」


「え? そうなの?」


「琴座は、オルフェウスっていう琴の名手の伝説が

 もとになっているんだけど、

 オルフェウスは男なんだよ」


「え~! 知らない方がよかった……」


「……うん、琴座の伝説は知らない方がいいと思う」

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