佳織が見た星空④

「ねえ、北海道ってどっち?」


「え? 北海道? 北なら北極星を探せば分かるよ」


晴彦は振り返り、空を凝視した。


「見つけた、あれが北極星。佳織は北極星の見つけ方、知ってる?」


「知ってるよ! 理科で習ったっしょ」


しまった、北海道弁が出てしまった。


私は札幌の女子高から、推薦でこの音大に進学した。

札幌では街が明るすぎて、星なんて少ししか見えなかった。


私は昔、学校で習った知識を思い出して、北極星を探した。


「北斗七星かカシオペアを見つければ、北極星が分かるんだよね?」


「うん。ほら、こっちに北斗七星、こっちにカシオペア」


晴彦は、それぞれを指で示してくれた。


「うわ、大きい!」


教科書や問題集に載っていた星座。

それを、実際に夜空で見てみると、

当然のことながら大きく見える。


北斗七星は、ちゃんとひしゃくの形になっていた。

見つけることができた瞬間、難しい問題の答えが分かったときのような、そういう感動がこみ上げてきた。


では、北極星をはさんで反対方向に、カシオペアがあるはず。

私は探した。


「あ、Wっぽく見える。カシオペアも見つけた!」

カシオペアは、きれいなWの形ではなかったけれど、

確かにジグザグに並んでいた。


北は北極星があるから分かりやすくていいな、と私は思った。

私のご先祖様は、きっと開拓時代に内地から北海道に渡ってきたんだと思う。

北極星が輝いている方角、北を目指して船でやってきたんだろうな。


そういえば、私が通っていた高校のセーラー服にも、星がついている。

高校の名前にも星という字が入っている。

地元のビール会社のマークも星。

そして、札幌のシンボル、時計台にも星のマークが付いている。


地元にいたときは、あまり深く考えていなかったけど、

今、すべてがつながった気がした。


昔の人は、北極星を見つけて北に向かったんだ。

北極星は、北へ向かう人のシンボルなんだ。


では、南は?

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