第6話 旅情
三人を乗せた馬車を
旅の行程は穏やかなものであった。
途中、野盗の集団に遭遇するが、マックの機転(雷撃魔法)で難なく撃退に成功する。
「それでは、我々はここで。」
「お世話になりました。」
クロウは謝礼を商隊長に渡し挨拶を交わす。
「じゃあなぁ、お前らも元気でな。」
「ありがとうございますぅ。」
殿の馬車で同乗した商人たちと挨拶をするセラ達。
◇ ◇ ◇
商隊と分かれて王都を目指す四人の影。
王都は海に面しており、この城壁の街は王都を陸側から守る砦となっている。
この町から王都に向かう街道は石畳の両脇にランプが並ぶ。
道すがら旅館や食堂を始め、露店や屋台までが立ち並び、路地に入れば、綺麗なおねぇさま方も居られるお宿も整っている。
夕日も傾き始め、旅の途上にある方々も早々に宿を見つけ、
四人も王都入場に向けて前泊をすべく宿を探していると見覚えのある顔がセラの目に飛び込んでくる。
「バ、バルトさん??」
「よぉ、待ってたよ。」
バルトに促されて入った宿屋は「ホテル」と言われる貴族方御用達のものであった。
室内の装飾や調度品、ホテル従業員の
その様子を残念そうに眺めるセラ。
バルトが四人を従えて受付で宿泊の手続きをしていると、クロウが
クロウはその人のもとに近づき、召使としてのあいさつをしている。
二言三言会話をしたところで、二人は待合フロアーの奥にあるウェーティングバーに入っていった。
「クロウさん…何しに行ったんだろう?」
「あぁ、彼の知り合いが居たんでしょうねぇ。」
「ふぅ~ん。」
セラのつぶやきにバルトがウインクをして答える。
「さぁ、君たちも一ヶ月ご苦労だったね。
食堂でしっかり英気を養ってもらおう!」
「異議な~し!」
食堂の言葉に反応したロムとマックが迎合する。
荷物を受付に預け、バルトを先頭に冒険者たちは食堂に入っていった。
「馬車の旅はどうだったかい?」
「はい、快適そのものでした。」
バルトが切り出すとセラが答える。
「野営なども覚悟していましたが、毎日どこかの町や村に入ることができました。
どこでも宿が完備されていたので、そういった意味でも助かりました。」
「まぁ、強いて言えば早朝出立が多かったので、早起きが得意になったんだけどね。」
率直な感想をマックが言えば、珍しくロムが毒づいてくる。
「でも、不思議よねぇ。
丘を越えたり、森を抜けたりと決して平坦な道じゃなかったのに、一日の行程で次の町に到着してたわよね。」
「きっと、道が整備されていたのか、あるいは馬車が行動できる範囲を逆算して宿場町を作っているのか…。」
「セラの売り子姿は傑作だったなぁ。」
「ロムぅ、ちょ~~っと、お話ししましょうかぁ。」
「うひぃ~~~!セラ様、お許しを!」
じゃれ始めたロムとセラを横目にマックがバルトと話を続ける。
「ひょっとして、彼らはただの商隊ではないってことですか?」
「お察しの通りさ。
彼らは第二近衛騎士団お抱えの輸送兼商隊といった立場の者たちなんだ。」
「じゃ、じゃぁ、馬車で移動中の状況は…」
「そう、つぶさに僕の耳に届いていたんだよ、雷撃使いの魔法士さん。」
「…」
◇ ◇ ◇
「それにしても…」
しばしの沈黙の後、バルトが話を続ける。
「クロムウェル氏は、どこでうちのお抱え商隊のことに気づいたんだろうね。」
「あなた方が、彼に教えたのではありませんか?」
マックが水をさす。
「いいや。てっきり自分たちで馬車を仕立てて乗り込んでくるとばっかり思ってたよ。」
バルトは自嘲気味に笑っている。
「馬車ほしいぃぃ~~~!」
突然ロムとセラが会話に乱入してくる。
「だぁぁ!うるさいなぁ、もう…」
話の本題に入る前に邪魔が入って、不機嫌になるマック。
「まぁ、今日は飲んで食べて、おおいにはしゃいでくれたまえ。」
「異議な~し!」
いつの間にかエールを手にしたロムとセラが仁王立ちになって答える。
そんな二人を残念そうに眺めるマックと、にやにやするバルト。
そう、彼らの一角だけが、いつも通りの酒場の風景になっていった。
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