黄昏の向こうがわ

たんぜべ なた。

第1話 プロローグ

 今日もめぼしい獲物は取れなかった。

 三人パーティともなるといろいろと入用も増えてしまう。


「さて、どうしたものか…」


 今夜のご飯の心配をするマック。


 この辺りは、開けた平原の所々に林が点在する。

 眼前の林に目を凝らすと、林で袋のようなものを殴りつけているゴブリン達、その数六匹。

 手早く武器を構え、さらに近づいてみると奥に馬車があり、袋状の布からは革靴かわぐつを履いた足が見えている。


「まずいなぁ…撲殺されてなければいいんだけど。」


 ロムはボヤキながら、あまり見たくないものを想像しながら剣を構え近づく。


 セラとマックは林の外に待機している。


 取り敢えずゴブリン達を追い散らすつもりでいたものの、ゴブリン達も反撃してきたため、やむなく戦闘へ…。


「まぁ、こんなものでしょうか」

 マックが帽子のひさしを跳ね上げる。

「そうね」

 セラが相づちを打つ。

 結局、ゴブリン達は一匹も逃げることなく…というよりも、鎧や武器を残して全員消し炭に…。


 セラは、哀れな骸達むくろを散見している。


「剝ぎ取れるモノもキズが少ない良品だしね!」


 いつもの通り、ロムが獲物を林から平原に誘い出しておいて、マックの電撃魔法をお届けするのが、この局面における彼らの定石セオリー


 なお、セラは防御を固め、マックの盾になる。


 ロムとマックは獲物達けしずみから、鎧や武器を剥ぎ取り、セラは中身を検分するため、袋を開く。


「ちょ、ちょっと!」


 袋から出てきたのは燕尾服の男。


 セラの声に反応し二人が駆け寄る。


 小ざっぱりとした男性に三人は戸惑う。

 服に多少の汚れはあるが、怪我などは見受けられない。


 うっすらと目を覚ます男性を、三人は固唾をのんで見つめる。


「お腹が空きました…」


 口調は穏やか、凛とした声が響く…んだけど、紡ぎだす言葉がどうにも…と閉口する三人。

 黄昏たそがれがすべてを覆い始める頃だった。

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