第133話 どうやら北条は徹底抗戦するつもりらしいので兵を出して潰すことに決めたぞ
さて、里見の親子は上洛して俺に対して頭を下げたが、後北条の親子は結局やってこなかった。
「やはり北条氏康は俺が弟の家久に上杉の家督と関東管領を継がせたのが気に入らなかったのだろうか」
そういう俺に毛利元就が答えた。
「おそらくそうでございましょうな。
鷹司と北条さらには奥羽の伊達は対等な関係での同盟であって関東管領を北条が、奥州探題職を伊達がそれぞれ担うものとでも考えておったのでしょう」
「名目上は一応臣従したが今上陛下の臣下としては鷹司も北条も対等とでも思っていたか」
俺がそういうと元就はこくとうなずく。
「むしろ公方の下の職であることで対等と思っていたかもしれませぬな」
「すでに動かせる兵の上でも朝廷の官位でも対等ではないのだがな」
「信濃や駿河・越中までとそれより東は管轄が違うという認識もありましょう」
実際関東は中央とは関係なく内乱が起こってきたのも事実なんだよな。
「関東や越後と奥羽が室町殿の威光の届かぬ場所であったが故か。
まあ、九州も同じような場所であったからわからぬでもないが」
「いずれにせよ鷹司に従わぬということはひいては朝廷へ弓を引くと同じこと。
まずは帝にしたがわぬ大逆者としての討伐宣旨を出していただきましょう」
「うむ、そのようにしよう。
ところで長尾と戦っていた時に北条に従っていた者たちのどの程度をこちら側につけられたのだ?」
宇喜多直家が入れ替わって報告を始めた。
「はい、甲斐の小山田信有は病床についているため弟の小山田信茂に全権委任しているようですが、武田信繁の遺児である望月信頼を旗頭にたて穴山信君、春日虎綱、飯富昌景などとともに参陣するとのことです。
また相模国小山田庄(今の町田)の小山田本家の小山田弥三郎もともに加わるとのことでございます」
「ふむ、小山田本家も北条を見限ったということであるな」
「はっ、下総の千葉胤富や武蔵の太田資正、太田康資などの太田一族、その他には成田長泰など上杉の家臣であったものもこちらへ続々寝返ってきております」
「ふむ、長尾景虎が小田原を攻めたときもこれ幸いと下野や武蔵の上杉の家臣だった国人は裏切っているからわかるが、千葉も北条を見限ったか」
宇喜多直家はコクリとうなずいた。
「もともと里見と北条の間の争いで土地を荒らされるのにも嫌気が差していたのでありましょう。
本来、北条はもう下総には干渉しないはずでもございましたゆえ」
「となると北条はぼ一族と伊豆以来の譜代のみで俺たちと戦うことになるわけか、それでも勝算があると見ているのか?」
こう言うとこんどは角隈石宗が答えた。
「川越の夜戦や長尾景虎の小田原攻めという大軍との戦いの勝利という実績はありますからな。
勝算がないとは思っておらぬでしょう」
「しかし、そいつらは大軍であってもまとまりのない烏合の衆だったと思うが」
「では、現在関東へ兵を出す鷹司の参加の領主たちの兵が完全な統率が取れると言い切れますでしょうか?」
角隈石宗のいうこともなかなか辛辣だな。
「ああ、確かに尼子の月山富田城を落とした時ほどのまとまりはたしかにないかもしれないな」
「月山富田城攻めでも結構な時間がかかっておりますが、小田原にこもれば1年2年は持ちこたえるだけの自信もありましょう」
「しかし、こちらの補給が万全で後詰めがなくては籠城しても意味があるまい」
「ならばこちら側の糧道を断たれれば継続して戦えなくなる可能性があるということでもございます」
「ふむ、輜重隊に対しての奇襲もあり得るということか」
「北条は風魔と呼ばれる忍びを持っておりますからな」
「ふむ、少数による破壊工作にも気をつけなばならんか」
「さようかと」
まあ俺の暗殺に関して言えば薩摩弁におかしなところがあればとりあえず捕縛というやり方をしてるのも有ってそうそうは近づけない。
しかも暗殺のプロが二人そばにいるのだ。
暗殺の仕方を知るものが一番良く防ぐ。
「では、最低限の弾薬糧秣は馬などで運ばせるとして、なるべくは船で運ぶとしようか。
兵をおこし北条を討伐する、皆に伝えよ」
「かしこまりました」
「いっその事小田原には砲弾を多量に打ち込むか」
この時代の小田原城は東西を川の流れが遮り南方は海に面している。
普通に考えれば海からは攻めるのが難しくなるわけで難攻不落をうたわれるのも確かなのだが俺は大友をぶちのめした時には同じように海から多量の砲弾を撃ち込んでいる。
「そうすれば城にこもってもおれませぬでしょうな」
まず俺は今上陛下よりに後北条氏討伐の勅書を発していただいた上に錦の御旗と節刀を授けていただき、大義名分を整えた。
関東甲信越東海の各大名などに陣触れを行い兵を集めさせるとともに、米を大量に買い付け伊豆・相模では高値で買い取っていくことにする。
そして里見や九鬼、長宗我部や熊野・今川などの太平洋側の水軍を出動させ、米や鉛玉などの輸送も行わせることにした。
北条としてはこうなった以上は小田原城で耐えつつ、こちらに打撃を追わせて少しでも有利な和睦条件を出してなんとか家の存続を図りたいところだろうがちょっと甘すぎだぜ。
もはや賽は投げられた、だが名将である北条氏康を侮ることもできないのも事実だ。
これで大きな戦は以後は無くなりそうだし各大名の若手も参陣させておくべきかもしれないな。
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