第84話 対馬の守りを固めつつ、大和の支配を固め伊賀や北伊勢の豪族を調略し北畠を攻撃しよう
さて、李氏朝鮮より日本よりの朝貢を行うよう使節が対馬にやってきたが、俺はそれに関して朝鮮への返答としては日本と朝鮮は明皇帝の臣下として対等であるという理由をつけて断っている。
朝鮮にとって朝貢貿易は経済的にはメリットはないが中華に次ぐ東華を自認する李氏朝鮮から見れば日本が対等など思い上がるなとあっちは言いたいのだろうな。
朝鮮は女真族や琉球に対しても同じような態度を取ってるが、琉球は名目上臣下に入って朝鮮での滞在費などを浮かせているが、女真族は攻撃あるのみになっているようだが。
さらに面倒なことに大内教弘が「対馬はもともと朝鮮の地、我兵を興して少弐を往伐せん。朝鮮、之を挟撃して、以て牧馬の島と為すが可なり」と対馬は朝鮮の領土だとか言い出したことが有ったりもしたのだ。
実際稲作がほぼ不可能な対馬は日本・朝鮮の双方にとって特に旨味はない土地と思われていたのだろうけどな。
国内に対しては日本が朝鮮に対して臣下の礼を取る必要はないから断ったと言っておいている。
商人にとっては今まで通り朝鮮に滞在費や輸送費を全部持ってもらったほうがいいと思われているだろうがそれはしらん。
大友や宗の二枚舌外交の結果として対馬が日本と朝鮮のどちらも自国の領土だと思われているわけだが、俺が対馬の宗を配下に入れて壬申約条の破棄並びに対馬の日本領土宣言をしたことから李氏朝鮮側もメンツのために対馬は自国の領土で自国は日本の上であると言わざるをえんのかもしれんがな。
とは言え朝鮮は対馬が自国領であるということにこだわるかもしれない。
俺は大友の水軍主力であった若林鎮興を呼び出し伝える。
「朝鮮が対馬を武力で占領しようとするかもしれん。
返り討ちにする準備はしておくのだ」
「は、直ちに準備致します」
もっともこの頃の李氏朝鮮は日本の平安時代のようなもので文官や学者などの知識層の昔に功績をあげた者の地縁血縁ばかりが出世していて、無能なものが優遇されてばかりで武官や職人などは冷遇されていて武官や兵士は全くやる気がないはずだ。
しかも朝鮮には名簿上は20万の兵がいることになっているが、ちゃんとした軍事訓練を受けた兵士はかなり少ないらしい。
国は給金を出してるが大半は役人の懐に入ってるらしい。
「だからそこまで心配することもないとは思うがな」
応永26年(1419年)の李氏朝鮮による対馬襲撃である応永の外寇では李氏朝鮮はボロ負けして応永35年(1428年)第1回の朝鮮通信使が来たさいに対馬の宗に歳賜米が与えられてること考えれば間違いなく弱いし、おそらくその強さは変わってないと思う。
島に迎撃用の大砲などを設置しつつある程度食料や飲料水を確保しつつ可能な限り海上で殲滅したいとは思うが。
まあ、朝鮮は基本あっちが突っかかってきたらカウンターを入れてやろう。
明は日本と朝鮮の対馬の奪い合いに関しては軍事的に介入するつもりもないだろうしな。
そして明にも朝鮮からの日本への朝貢要請を報告しておき、石見銀山で取れた銀を皇帝やその側近へ送って対馬に関しては日本に権利があると言ってもらうようにしようか。
李氏朝鮮は国庫は破綻寸前で同じようなことはできないはずだからな。
結局外交は関係国への根回しと相手に対して軍事力で優位に立つしかないのが面倒なことだ。
また出雲と伯耆における尼子の支城は少しずつ落城しているから、月山富田城の包囲網は順調に狭まっている。
伯耆と美作との分断は順調だから現状尼子も大分苦しいだろう。
勢力拡大時に四方八方へ攻め込んでいたせいで尼子を救援しようとするものも周辺にはいない。
「問題は畿内か」
実は大和で畠山総州家6代当主の
で、こいつらは細川晴元と組んで三好長慶や畠山高政と敵対していたのだな。
とは言え畠山高政も三好長慶とは距離を取りつつあるのだけどまだ全面的に対決するには早い。
「公方様と三好長慶の双方に許可を取り、又四郎が畠山総州家に養子として入り畠山の名を受け継ぐ許可をいただこうか」
一色は侍所別当だが畠山はそれを上回る家格だ。
又四郎が畠山の名を得ておけば大和や伊賀、紀伊、河内などの周辺に対しての影響も大きいし、とりあえずは傘下にくわえて、いずれ来るだろう畠山高政と三好長慶の全面対決になったら三好側について畠山高政を叩き潰しておくのも良いかもしれない。
そして伊賀に関してはまだかろうじて影響力を持ってる伊賀守護の仁木長政を中心にその被官の柘植や服部を中心に調略していこうか。
「まずは伊賀守護の仁木義広を近衛の家令のよしみで守護としてたて服部などを服属させようか。
被官の柘植などが反抗するなら攻めて滅ぼしても構わぬ。
他の伊賀の国人が島津に従うなら可能な限り望む官位を朝廷に奏上し現状の領地安堵に加え必要ならば雑賀のように傭兵契約をしても良いし高山国への移住開墾を行わせても良い。
東海道の整備のために日当を出して働いてもらっても構わぬ」
「承知いたしました」
伊賀仁木氏は近衛家の甲賀信楽荘の代官でもあったから名目としては手助けもしやすい。
北の六角派の藤林、南の北畠派の百地が素直に従うかは微妙だが島津にただ逆らっても勝ち目もないだろう。
「同時に楠正具を仲介して同じように伊勢の国人を調略せよ。
又四郎忠平には南より北畠を攻略するように伝えよ」
「承知いたしました」
一向宗門徒達は美濃の東山道も遮断しているから一色はかなり苦しかろう。
とは言えもともとの本拠は尾張ではないから美濃に撤退すれば、ある程度は被害は減らせるかもしれないがな。
長島に近い桑名周辺の国人は一向一揆に従ってるようだが、必ずしもその数が多いわけでもないようだ。
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