第79話 続:その頃の東国:三好の本願寺への一向一揆要請と蜂起
さて、今川と武田は今川義元の時代以前は長く争っていた。
これは武田が先祖代々の源氏の名家を自称しており鎌倉以来の守護であるのに対して今川は足利の有力分家であったからだ。
また甲斐は鎌倉公方の勢力圏であるが駿河は室町幕府の勢力圏であったのもある。
このあたりは九州における大友や少弐に対しての大内氏の関係と言ってもいい。
かつて信濃では後醍醐天皇の子供である宗良親王(むねよししんのう)が伊那谷を拠点として南朝の東国における最重要拠点の一つとして北朝方と争ったりもしているがこのときの武田氏は親戚でもある小笠原とともに南朝方と戦っている、そしてもともと甲斐に残っていた南朝方の石和流武田氏の武田政義(たけだ まさよし)を北朝方の安芸武田氏である武田信武(たけだのぶたけ)が打ち倒したが、その後甲斐国は鎌倉府の管轄であったために、応永23年(1416年)に関東地方で起こった上杉禅秀の乱では、信武の孫である武田信満が関東管領の上杉氏憲禅秀の女婿にあたるため禅秀に味方したが、幕府の介入で禅秀は滅亡し、信満は鎌倉府から討伐を受けて自害することになった。
これにより甲斐は守護不在状態となり、甲斐国人である逸見氏が鎌倉公方・足利持氏の支持を得て守護職を求め台頭したが、それに対して室町幕府は高野山で出家した信満の弟である武田信元を還俗させ、信濃守護・小笠原氏などに助力させ甲斐へ派遣、信元の死後に信満の子の武田信重が同じく幕府の支援を受け甲斐へ派遣されると、武田氏は再興したが、守護代である跡部氏やその他有力国人との闘いは続き一族の内紛や今川からの侵攻にも悩まされた。
また、応仁の乱以後、武田氏が信昌・信恵方と信縄の内紛状態となった時も甲斐の国人や今川はそれを後押しし甲斐国内は大きく乱れたが信縄の嫡男で晴信の父である武田信虎が当主になると、武田宗家はようやく統一されたが、甲斐国内は統一されておらず、信虎は甲斐国人衆らとの戦い続けながら今川義元の父である今川氏親、続いて兄である氏輝の代においても、両者は引き続き抗争を続けていた。
故に今川は尾張までの勢力伸長が済めば甲斐へ手をのばすのも必然と言えた。
今川義元は既に権力を喪失し、京を追放されている室町幕府の将軍や管領にも細川の臣下でしかない三好長慶にも従うつもりはないが、名目は必要なため朝廷や幕府に対して献金を行い鎌倉府の鎌倉公方の地位を求めた。
そして義藤から改名した将軍足利義輝は政所執事である伊勢家の勢力を削ぐために今川に対して鎌倉公方の地位を与え長尾景虎とともに関東を平定するように指示したのであった。
一方武田が滅んだことは京の三好長慶にも伝わり、将軍足利義輝が六角や比叡山とともに長尾景虎や一色義龍にも三好長慶討伐の文を送っているのも知られていた。
三好長慶はそれを阻止するために石山本願寺に協力を求めた。
石山本願寺はそれを良しとして各地において一向一揆を蜂起させた。
一向一揆は近江では細川や足利、六角、比叡山などと、越前では朝倉と、越中では畠山と、越中から越後へ広まって長尾と、長島の願証寺(がんしょうじ)は尾張、美濃で一色と、尾張、三河では今川と、畿内東海北陸の大名勢力は一向一揆との戦いを余儀なくされた。
更に今川と長い間争っていた甲斐の国人にとっては武田晴信は信濃へ侵攻により略奪をおこなって飢えをなくし、乱妨取りによって銭を与えてくれた名君であった。
その為甲斐では国人による反今川のゲリラ的攻撃が続き今川や長尾は関東への出兵どころではなくなってしまっていたのだった。
更には鉱山で働かされていたのは乱妨取りをうけた主に信濃の農民たちであったが、彼らはこれ幸いと鉱山から逃げ出してしまった。
それにより金山の金を掘り出す人間もいなくなり今川の目論見は大きく後退したのだった。
この頃の大名の動向
島津
中央朝廷:親密 将軍:中立 三好:親密
中央朝廷や事実上の幕府の実権を握っている三好と親しくしている。
将軍は京に戻ってきたら頭は下げるが最終的にその下につくつもりはない。
尼子
中央朝廷:親密 将軍:中立 三好:親密
中央朝廷や事実上の幕府の実権を握っている三好と親しくしていて守護職をもらっている。
上洛して三好と争うつもりはない。
山名
中央朝廷:中立 将軍:親密 三好:反発
細川と縁戚のため将軍や細川に肩入れして三好と反発している。
しかし尼子との争いが優先。
朝廷にはあまり意識を向けていない。
長尾
中央朝廷:親密 将軍:親密 三好:反発
中央朝廷や追放されている将軍を正統として上洛し三好は討つべきと考えている。
一色
中央朝廷:親密 将軍:親密 三好:反発
長尾と同じく中央朝廷や追放されている将軍を正統として上洛し三好は討つべきと考えている。
姉小路
中央朝廷:親密 将軍:親密 三好:反発
長尾と同じく中央朝廷や追放されている将軍を正統として上洛し三好は討つべきと考えている。
六角
中央朝廷:親密 将軍:親密 三好:反発
以前から三好と戦い続けている。
中央朝廷や追放されている将軍を正統として三好は討つべきと考えている。
紀伊河内畠山
中央朝廷:中立 将軍:中立 三好:中立
六角などとは手を組むつもりはないが、三好に頭を下げ続けるつもりもなく政治的には完全な中立に近い。
三好と六角・細川などが共倒れになってくれれば理想的と思っている。
今川
中央朝廷:親密 将軍:中立 三好:中立
中央朝廷の権威は利用できることもあり友好的だが権力を失った将軍にも三好にも従うつもりはなくそれ故に上洛の意思はなく室町幕府からは関東公方としての独立を目指している。
後北条
中央朝廷:親密 将軍:中立 三好:親密
今川と同じく中央朝廷の権威は利用できることもあり友好的、三好とともに現状の室町幕府の権力を握っている伊勢氏であるため将軍に従うつもりはなく上洛思考はない。
朝倉
中央朝廷:親密 将軍:中立 三好:中立
朝廷の公家を迎えており朝廷とは親密だが勢力拡大はあまり考えていない。
将軍と三好の争いに介入するつもりもない。
今はこんな感じだと思っています。
その他の大名は自分の領地を守るのに精一杯という感じでしょう。
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