第2話  勇者、マークゥエル  

 神殿公認のAランク精霊使いの認可を貰ってマークウェルは、意気揚々と西域に戻って来た。

 冒険者ギルドの仕事斡旋の受付のお姉さんに、神殿公認だぞ~と貰ったバッジを見せびらかせていた。

 お姉さんも、


「すごいですわ~マークウェルさん~」


 と、ノリ良く手を叩いて喜んでくれた。


「んで?神殿公認の精霊使いの勇者に、相応しい仕事ある?魔族退治とか?」


「そうですね~ティエリ山脈の奥深くに、アルゲイ族の巣があることが分かりました。今、討伐のためにパーティーを募っているところです」


「あ~いらね、いらねぇわぁ~俺が一人で行って来らぁ!」


「でも、魔族の巣ですよ、今までの様な数匹単位の、通り道じゃあありませんわ。危険です」


 受け付けのお姉さんは、心配してマークウェルに言った。

 マークウェルは、神殿で貰ったばかりのバッジを受け付けのお姉さんに渡して、


「エマ。これはお前に預けて行く。魔族退治が終わったら、取りに来るから持っててくれ」


「まぁ……」


 マークウェルは、受付嬢にも手を出していた。

 金髪碧眼、巻き毛の受付嬢は、冒険者の中で憧れのマドンナだったのに。

 みんな、抜け駆けなどせぬように、遠巻きに見ていただけだった。

 ある朝、ギルドのプライベート用の階段から二人で降りて来るのをたくさんの人が目撃して、二人の関係が世間に知れることになったのだ。


 ♦


 風の大将に飛ばせてもらって、アルゲイ族の好む血の匂いのする粉を散らしながら、ティエリ山脈に入って行った。


  血の匂いに誘われたアルゲイ族を一匹捕獲した。

 愛刀宗平ムネヒラで鋭い爪を全部、切ってやり脅して巣の場所を教えるように言った。


 アルゲイ族の魔族は、武器である爪を切り落とされ、言う事を聞くしかなかった。

 弱点の首によく切れる、刀で脅してくるのだ。


 巣が見えた時に、魔族は仲間にこの事を知らせようとして、マークウェルの手を噛んだ。本来なら血をすすって食事だが、今回はそんな悠長なことは言っていられない。

 人間の仲間も来るかもしれなかった。


 アルゲイ族は、巣を目指してマークウェルのもとを飛び立った。




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