火竜のブリジットちゃんは、勇者サマにコクりたい
月杜円香
第1話 火竜と勇者
「こらこら、ついて来るな。心臓を取り戻してお前は、自由なんだ」
彼、マークウェル・カインは、先ほどから、ちょこちょこと着いて来る小さな女の子を振り払うのに必死だった。
彼女も行く当てはないのだ。
何処で生まれたのかも知らない。
親が何処にいて、どうして迎えに来てくれないのかも……。
マークウェルは、金色の髪をかきあげて言った。
「困っちまったな~~」
そうして、大きな溜息をついた。
そして、ようやくマークウェルに追いついた、少女は彼を見上げてにっこりと笑った。
『ユウシャサマ、スキ』
たどたどしいレトア語で喋ってきた。
マークウェルは、咄嗟に身をかがめた。
彼女が火を吹いてくるのである。
「喋るな~~黒板を渡してあるだろ!?言いたいことはそれに書け!」
少女は頷くと、サラサラともう一度同じ言葉を今度はレトア語で書いてきた。
《勇者様、好き》
「好きなのは分かったが、どうして俺の後をついて来るんだ!?」
《勇者サマ、恩人。心臓をトリ戻してくれた》
「魔族退治に行ったら、お前の心臓石が飾られてて、人形になってたお前がいたというだけだ。助けた訳じゃない……と何度言えば理解するんだ?」
《ブリは、まだ赤ちゃんなの》
確かに、見かけは5歳くらいである。
見事な赤毛で、深い青い瞳が印象的な可愛い子である。
マークウェルは、この話の通じない少女がまさか噂でしか聞いたことのない竜族だと聞いた時にはビックリした。
竜の卵は人族には、万病に効くとされて風竜などは山奥に姿を消していた。
水竜は、限られた水源にしかおらず、地竜はもっと個体数が少ない。
火竜の噂は、あまり聞かないが、目の前に火竜だと名乗る少女がいるのだ。
信用するしかなかった。
名前を聞いたら、火が飛んで来たのだ。
彼の自慢の金髪が燃えた。
仕方なく彼は、肩まで髪を切ることにして、ブリジットに黒板を与えたのだ。
これ以上の被害を被らないために……。
そして思い出すのだ。この火竜のブリジットと初めて会った時のことを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます