②マラカイトの花束

大和詩依

プロット


◯参考作品

図書館戦争シリーズ

ハッピーシュガーライフ


◯世界観(ファンタジーなら詳細に、ラブコメはSF要素等を強く取り入れないならサラッとでもOK)


 現代は私たちが生きている世界と変わりはなし。


 転移先の異世界は、科学の代わりに魔法が発達している。しかし、文化レベル的には現代と比べると発達しているところとしていないところがある。魔法で大体のことはできるけど、服装や建築は中世より。


 転移先の異世界の国について。元は大陸にある大国の領地であったが、汚染された森によって王都との行き来が難しく、この件に関しては国もあまり手を出したがらなかった。そのくせ税だけは取ろうとしてくるから、大国の領地であることに利点を感じず独立の道へと進んだ。結果大国の南にある小国「ルベウス」として存在している。汚染された森が近くにあるにもかかわらず、土地は枯れておらず、むしろ豊かな土地とさえ言える。



◯主要キャラクター

ビジュアル・性格・セリフイメージ等


川上藍(かわかみ あい)

 父親が医者でそれなりに恵まれた家庭環境。上流家庭といっても過言ではない。ただ、親は古い考えの持ち主で弟に後継の医者になって欲しいと考えていて弟ばかりに手を掛け、藍はほぼいないもの扱い。小さい頃は仕方ないと諦めたが、後々愛され足りないと感じ始める。

 「公立の高校に進学すること」「家を出て自立すること」と条件を出された上で、後述の三鷹優斗と最終的に同じところに決め進学。しかし、高校生活3年目にして転移してしまった。転移先では孤児院の手伝いや、兵士たちの洗濯なんかをやっていた。最初は知り合いは一緒に転移した優斗しか知り合いがいないことから、かなり警戒していた。相手は割と歓迎ムードで、ちょっと警戒を解いたら兵士は若者からおじさんまでいて、兄弟扱いや子供扱いでだいぶ愛情をもらった。元々優斗に依存気味ではあったが、異世界転移という体験がキッカケで行き過ぎになっていった。

 性格は、おっとりしている。おとなしいといった言葉が合う。

 愛情をくれる人として優斗に依存している。

 身長は150cmほどで腰の辺りまで伸ばされた黒髪。染めたことやアイロンを当てたことすらなく、サラサラ。

「はじめまして。川上藍と申します」

「私は公立高校にしか行っちゃダメで、一人暮らしもしなきゃいけないんだって。どうしたらいいと思う?」

「優斗は私のこと見捨てないよね……! ねえお願い、見捨てないで。優斗に見捨てられたら、私にはもう誰もいない! 私をひとりにしないで……っ、私のこと、抱きしめて……」


三鷹優斗(みたか ゆうと)

 5人兄弟。両親は弁護士で共働き。あまり会うことがない。両親も子供にはあまり関心がない。親の愛情は求めていたけど、貰えないならまあいいかという感じ。だけど、誰かに尽くすのが好きで、誰かに愛情を注ぎたい。しばらくは兄弟の面倒を見ることで凌いでいた。けど、最近は兄弟も自立しはじめてがかからなくなっているし、兄弟からも行き過ぎた世話は拒否される。だが嫌われているわけではなくむしろ今までの分自分の時間を大事にしてとまで言われてしまう。ここで溜まっていく世話したい欲、愛したい欲が藍への依存の始まり。

 藍と一緒に高校3年生の時に異世界転移してしまう。転移先では藍と一緒にいることが多かったが、魔法付与された剣を使って狩りや防衛の手伝いもし始める。ただし、やること終わったら真っ先に藍の元に戻る。

 剣道が強く、大学は県外の強豪校を志望していたが、藍と離れることを考えると決めきれない。

 性格は優しく、困っている人は放っておけない。愛情を与えることに喜びを感じるが、相手に対する執着心が人よりある。

 愛情を注げる先として、藍に依存している。

 スポーツマンらしく、髪の毛は短め。ガタイが良く、身長は180cmほど。

「三鷹優斗だ。よろしく!」

「大丈夫大丈夫。俺らがチビだった頃だって

 制服着た奴らが遊んでただろ」

「なんで……お前も、俺の愛情が重くなったのか? 頼む! 俺から愛情の先を奪わないでくれ! 俺から離れていかないでくれ!」


神官

 異世界転移した先の国の神官を務めている。割とよくある事態で慣れている。来てすぐの頃、衣食住の手配をして、授業形式で藍と優斗に世界のことや魔法のことを教える。


兵士たち

 主な仕事は狩りと国の防衛(たまに汚染された森から獣が襲いにくるからその撃退)

 転移してきた藍と優斗をめちゃくちゃ可愛がる。




◯物語構成

文庫ラノベ1巻で全何章想定か、各章毎に数百字の要約を記載。

だいたい1巻10~12万字ほどの文字数で描こうとしていること、2巻に繋げることを明確にして欲しいです。


・全10章構成

・1つの話の分量は大体1万文字以上を目指す

・2章のみ少なめ。文字数は後半の章に回す


プロローグ~1章 高校見学〜の話

 話自体は藍の母親が藍に中学卒業後の話している回想シーンから始まる。

 藍はもう両親が自分に興味がないことを知っていたから驚きはしなかった。これから先どうしようと現実的に考えている。でもやっぱり自分は愛されていないんだと突きつけられているようで、心は痛かった。

 高校説明会に一緒に行っている優斗に言えば何か助けてくれるんじゃないかと、会話を振ってみる。

「私は公立高校にしか行っちゃダメで、一人暮らしもしなきゃいけないんだって。どうしたらいいと思う?」

「……俺が高校進学してから住む予定の部屋、余ってるからうち来る?」

 二人の間で同居の合意がされる。この時、藍は自分の中で優斗が他の人とは違うと感じていたから少し意識してしまったけど、優斗は友達となんでもない約束をした程度の感覚だった。

 この後、説明を聞いたり校内見学ツアーにも参加する。そして優斗が入部を希望する剣道部にも見学に行く。

 高校見学の雰囲気や距離、学力、公立ということもあり入学を決めた二人。入試には見事合格する。

 入学してからは、順調でそれぞれ友達もできた。しかし、藍の「愛されたい」という欲求は満たされることなく胸の中で燻り続けた。 

 藍はそれを隠しているつもりだけど、だんだん距離感に現れ始める。同居を始めた当初は、たとえばソファの端っこにちょこんと座っていたのが、だんだん近づいてきたというように、さまざまな距離感が近くなってきた。

 優斗はそれに気づいているけど、単に慣れてきて距離感が近くなったとばかり思っている。同居に慣れてきて、なんとなくぎこちなかった会話のぎこちなさがとれてきた頃、昔公園で遊んでいた時の話になった。そして懐かしくなって公園に遊びに行く。テンション上がって当時と同じようにブランコに乗る。

「これまだ乗っても大丈夫かな?」

「大丈夫大丈夫。俺らがチビだった頃だって

 制服着た奴らが遊んでただろ」

 ブランコを漕ぎ始めたらもっと楽しくなってきて、当時遊んでいたブランコ漕いでそのままの勢いで飛び降りて誰が1番遠くまで飛べるかってやつをやる。

着地したら異世界の魔法陣が足元にあった。


優斗→藍:恋愛的にはなんとも思っていない。愛情を与えられる相手。家族愛に近い(と本人は思っている)


藍→優斗:愛情をくれる人。恋愛的にほんのちょっとだけ気になっているのかもしれない。


2章 異世界転移してすぐの話

 転移した先はどこかの町中のようだった。よく見ると周囲にいる人の服装も建築様式も何もかもが違って見える。何が起きたのか全くわからず混乱する二人。突如現れた人に対して混乱するでもなく周りの人々はなぜか歓迎ムード。

 現地の人に言われるがまま教会に移動して話を聞くと、魔法陣の条件指定が緩くて、本来ならトラックに撥ねられた瞬間の女の子が宙に浮いている間に転移する予定だったが、偶然にも同じ時間帯にブランコから飛び降りて宙に浮いていた二人が転移してしまったということがわかった。実はよくある事故だから、帰る手段が確立するまでの衣食住の面倒は見てもらえることも。

「割とよくあることなのです。原因はよく分かっていません。ですが、間違えて来てしまった人々は我々が全力を持って帰還の準備が整うまで保護させていただきますので。そこだけはご安心ください」

 訳がわからず混乱している上に、相手(異世界側の人間)は手慣れていてどんどん話が進んでいく。結局流されに流され、藍と優斗は転移した異世界の小国「ルベウス」にお世話になることになった。

 教会の中に部屋が与えられる。部屋は性別が違うということもあって一人一部屋与えられた。


藍→優斗と優斗→藍は1章と同じ


3章 手伝いと不安の話

 転移して数日。その間、街の中を散歩してみたり、神官からこの世界についてのあれこれの授業を受けたりして過ごしていた。

 この国の名前、国の成り立ち、この世界はどんなところか、魔法についてなど。授業は藍と優斗に元の話を聞きながら、何について知らないのか、何を知ればこの世界でも生きていけるのか考えられた上で作られた授業だ。 

 しかし2人は受け取ることに慣れていない。

それに、異世界の知識もだいぶ詰め込み、授業も終わり時間ができた。どうしても何かしたいと申し出たら、受け入れられた。

 初めに振られた仕事は食事作り(下拵え)。藍も優斗も炊事経験は沢山あるから手際は良い。手元にある芋の山を剥いていく。が、異変があったようで、一緒に雑用している人たちがなぜか藍の方を見る。

「なぜあなたの芋は虹色に輝いているの?」

「え? これって、こういうものなんじゃ」

「断じてあり得ないわ」

 皮は普通の芋だ。だが、一枚皮を剥いた下はなぜか虹色に光り輝いている。結局原因は分からなかった。(のちにわかるのだが、藍には魔法適性がある。無意識に魔力を使ってしまい、こうなっていたのではないかというのがのちに立てられる仮説)

 手伝いを通して友達のようなものもできる。それでもやっぱり自分たちの知らない世界だし、想像もしてなかったことに巻き込まれた不安は無くならない。優斗も藍も別々の部屋を与えられていたがなんとなくどちらかの部屋で一緒に過ごしていた。

 気を許していた優斗と二人きり、閉ざされた空間で誰にも邪魔されないし見られないという環境の中、藍の不安は爆発した。

「優斗、私のこと、抱きしめて」

 愛された経験の少ない藍にとって、愛情表現とは抱き締めるという行動で示すことだった。普段から感じている愛情不足も相まって、つい欲求を口に出してしまった。

 兄弟によく抱っこをねだられていた優斗はその感覚で抱きしめる。藍はひどく安心を覚え、その後も頼んでは抱きしめてもらっていた。

 優斗は自分が安心を覚えているのか、それとも別の何かを感じているのかわからなかった。ただ藍を手放したくないということだけは分かっていた。


優斗→藍:本当に家族愛かわからなくなってきた。愛情を与える人。


藍→優斗:愛情をくれる人。恋愛的にほんのちょっとだけ気になっているのかもしれない。


4章 魔法適性と防衛部隊へのお誘いの話

 ここしばらくは仕事も少なく落ち着いていた。魔獣の襲撃も、他国からの侵略もない。つまり兵士たちは暇だったのだ。だから、兵舎に残っている兵士たちは藍と優斗にちょっかいだしに来ていた。

 具体的にいうと、面白半分で魔法を教えてみたり、魔法付与した武器を持たせてみたりする。そこで意外なことが発覚する。藍に魔法の適性があったということだ。特に回復魔法と防御魔法に適性があった。それに、これは意外なことではないが(兵士たちには意外なことだった)優斗の剣の扱いがとても上手いことも(剣道をやっていたからそれが活きた)。

 この事実から、兵士たちは優斗を国の防衛部隊に誘う。優斗は藍と離れることはしたくなかったから一度断るが、兵士たちも「なあ、頼むよ〜」と引かない。一旦考えるということで今回は決着がついた。

 優斗と離れるかもしれないという選択肢が新たに現れた藍は焦った。昼間の会話がずっと脳内をぐるぐるして、その話にのって藍のそばから優斗がいなくなる想像ばかりをしてしまう。焦った藍は夜に優斗の部屋を訪れた。

 体は冷え切っている。優斗はそんな藍をみて、慌てて部屋の中に招き入れる。ベッドに並んで座って藍の背中をさすってやる。藍は何をいうわけでもなく、俯いている。どうしたものかと優斗が頭を抱えそうになった時、ぽつりと藍は話し出す。

「優斗は今日の話、受けるの……?」

 藍がどのような答えを望んでいるかはわからなかったが、今の時点で受ける気はあまりないということを伝える。藍はただ「そう」「よかった」とだけ答えた。それを聞いて、兵士たちを助けたいという気持ちもあって迷っていた優斗の気持ちは決まった。

 藍には自分がついていないとダメだと。断ることを決めた。

 次の日、防衛部隊へのお誘いを優斗は断った。やっぱり惜しまれたが、優斗が決めたならと意思を尊重してくれた。が、勧誘をやめるつもりはなく、興味があればいつでも稽古に参加してくれて構わないと言い残していく。


優斗→藍:藍と離れたくない。ちょっかい出されるうちにめちゃくちゃ恋バナさせられ、これが恋?! なのかもしれないと思い始めている。


藍→優斗:愛情をくれる人。自分のそばから離れてほしくない。恋愛的に好き(スキンシップしているうちに何となく察した)



5章 恋の自覚と優斗の危機の話

 あからさまにホッとした顔をした藍に、一緒に雑用をしている女たちはピンときた。上手い具合に、藍と優斗に別の仕事を振って、女たちは藍に問い詰める。要は恋バナだ。藍の回答としては、「これが恋かはわからないけど、たぶんそう」とのことだ。

 一方で優斗は頼まれた薪拾いに来ていた。最近は割と安全だと聞いていたし、この国が属していた大国との国境よりの森に行く。兵士に行き先を告げると、持っていけと何かの結晶を渡され、使い方のレクチャーを受けた。

 入り口付近は本当に汚染なんてあるのか疑えるくらいに澄んだ空気だ。

 薪拾いは順調に進み、カゴの半分くらいを満たした時、近くの茂みからガサガサと音し、警戒する。黒に近い紫色の汚染された毛皮をもつ狼のような魔獣が優斗のことを睨みつけていた。優斗はすぐに結晶を空にぶん投げた。結晶は空で砕けちり、宝石でできた花火のようなものを空で形取った。

 数秒して街の方から同じものが上がった。緊急事態を此方でも把握。すぐに向かうという合図だった。

 魔獣は一体で、なんとか逃げていた優斗を防衛部隊が保護したときには優斗は怪我を負っていた。命に関わる怪我ではないが、流血がひどい。

 何も知らない藍は保護されて戻ってきた優斗の姿を見てひどく混乱する。周りがいくら言い聞かせて止めても優斗に縋りつこうとする。

 後日優斗は魔法によって治療され、もう傷跡すらなくなっていた。藍は、貧血は魔法で治せず、ちょっと元気になった優斗を見て落ち着きを取り戻していた。

 優斗の大切さを身にしみてしり、治療の場にいても喚くだけで何もできなかったことへの後悔が湧いてくる。魔法への適性があったのに何もしてこなかった。優斗と一緒にいるために魔法も覚えたほうがいいと思ったのだ。

 一方で優斗は防衛部隊の稽古への参加を考えていた。優斗は剣道では強かったが、その力を使っても魔獣には手も足も出なかった。後で聞いた話だが、魔獣が防衛線を越えた街中への侵入はないとは言い切れない。もしも、そんなことが起きたと思うとゾッとする。せめて稽古だけでもしておいた方がいいのではないかと思い今度頼むことに決めた。


優斗→藍:藍を失いたくない。藍が自分のそばからいなくなることが恐ろしい。


藍→優斗:愛情をくれる人。自分のそばから離れてほしくない。恋愛的に好き。恋ってしたことないけど多分これが恋なんだろうな。


第6章 ルベウスの危機の序章の話

 早速次の日、兵士たちに頼みに行った優斗。兵士たちは快く受け入れたどころか、宴とか始めそうな勢いで喜ぶ。その日から稽古は始まった(稽古は割と容赦ない)。

 しばらく経った日、ルベウスは静かだった。汚染された森から国を襲ってくる魔獣の偵察と退治に兵士たちが出ているからだ。優斗の件があって、一度偵察に出ることになったのだ(主力部隊をといくつかの隊以外。残った兵士が優斗の稽古を受けている)。

 だが、その落ち着きもすぐ喧騒へと変わる。兵士たちが帰ってきたからだ。今回はあくまで偵察であるが、接敵してしまえば戦闘は避けられない。

 部隊壊滅までは全然いっていないが、ちらほら怪我をしている人たちが見える。藍は物品の補充の手伝いでその場にいた。仕事をしながら治療を見ると、元の世界なら縫うことが必要そうな傷であろうと魔法ですぐに治っていることがわかった。

 もしこの力を自分も使えるようになったら、この前みたいに優斗が傷ついて戻ってきても治してあげられる。優斗は死ぬことなく、藍は優斗とずっと一緒にいられると思った。治療が落ち着いたタイミングを見計らって、治療をしていた治癒師に回復魔法を教えてほしいと頼む。此方も快諾された。善は急げとその日から藍の修行は始まる。


優斗→藍:藍と離れたくない。藍を失いたくない。藍が自分のそばからいなくなることが恐ろしい。


藍→優斗:愛情をくれる人。自分のそばから離れてほしくない。恋愛的に好き。守りたい。



7章 ルベウス防衛戦作戦会議

 優斗はまだ藍も自分も幼かった頃を思い出していた。母親が急に冷たくなったと大粒の涙を流してしゃくりあげる藍。

 そして、最近の藍の様子を思い出す。

「俺は、こんなに自分の足で立っている藍を知らない」

 藍も優斗もそれぞれ修行を始め、手伝いの時間も会う時間も減っていた。

 二人とも修行を終えてくたくたになって帰ってきても、お互いのどちらかの部屋で話す時間だけは必ずとっていた。

 魔法の修行を始めた事に言及する優斗。それに応える藍。ちょっと怖い顔をしている優斗を見て、発する言葉は最後には萎んでしまっていた。

「ああ、いや、藍が何かを積極的に始めるのは初めて見たからびっくりしてさ。いいと思うぞ。できることが増えると行動の選択肢が増えるからな」

 言葉では肯定的でも、やっぱり何かまだ隠しているような感じのする優斗。優斗はそれを隠し通すか迷ったが、やめた。隣に座っていた藍に抱きついてそのまま押し倒して抱き締める。

「なあ、藍は俺から離れていかないよな」

藍はどういう意味だか分からなかったが自分が優斗から離れるなんてあり得ないと思っている。

「離れないよ。ずっとそばにいる」

珍しく不安げにしている優斗のことを抱きしめ返す。

 二人とも疲れが限界に来ていたのと、ハグしている温かさにまけてそのまま寝落ちする。

 次の日起きたら、防衛部隊の会議に呼ばれた。会議の内容としては、偵察の結果魔獣たちに街を襲いそうな不穏な動きがあることから、その対策。襲撃地点の予想、陣のしき方、複数回の襲撃可能性があることなどの説明がされていく。

 優斗と藍が呼ばれたのはこの防衛戦に加わってほしいというお願いだった。あとは、襲撃までに、藍に可能な限り防御魔法も習得しておいてほしいというお願いだ。

 防衛部隊は藍と優斗を巻き込むことについてあまりよく思っていないがそうも言ってはいられないほど状況が悪い。

 藍と優斗は迷った。守られているだけより前線に近づくし、優斗に至っては前線に出るかもしれない。もちろん兵士たちは優斗が前線に出るのは最終手段で、救護所の護衛を任せようとは思っている。それでも即決はできず、とりあえず保留という話になった。


優斗→藍:藍と離れたくない。最近藍が色々やり出して、不安になっている。


藍→優斗:愛情をくれる人。自分のそばから離れてほしくない。恋愛的に好き。守りたい。


8章 防衛戦参加への迷い

 優斗は修行中なぜ迷っているのかという話になる。聞いてきたのは老兵で、優斗は本心を打ち明ける。老兵のアドバイスとしては、

「離れたくないなら、護りたいならば戦える力を持つこと。人間そんなに弱くない。閉じ込めておくだけが愛ではないぞ」

「俺一言も藍のこと好きって言ってないんだけど?!」

「でも好きじゃろ」

「まあ」

 ルベウスでの生活を通して、優斗も藍への恋心に気づいた。藍が特別に感じていたのは愛情を注がせてくれるからだと思っていたが、ちゃんと恋愛的な意味で好きだったのだと気づいていた。(兵士のおっちゃんたちにしつこいくらい恋バナ振られて考える機会が沢山あった)

 一方で藍は防衛魔法の習得と強化を始めていた。藍の適性は凄まじく、トランプタワーが一瞬で組み上がっていくようにどんどん知識を吸収して形にしていった。先生役である防衛結界術師は30代の女性だ。藍の迷っている様子に覚えがあるようだ。

「あなたが迷っているのは、優斗君のことがあるから?」

「ええ、そう、ですね。優斗は誰にでも優しいんです。優しいからきっと傷つきそうな人がいたら飛び込んで代わりに傷ついてしまう。私は優斗が死んでしまうのが怖いんです」

「あなた、何のために魔法を習得したのよ。攻撃に合いそうならばあなたが防御結界を張ればいいし、怪我したのなら治せばいいじゃない。まあ、戦への参加は強制するものじゃないからよく考えて。でも、私たちも国の規模が小さくて人材が足りていないから、手伝ったくれるのならば助かるわ」

 なぜそんなに強く入れるのかと聞くと、私もあなたと同じ悩みを持ったことがあるからよ、と。先生には旦那がいる。きっとその人と一緒に今の藍のように迷ったのだろうと思った。

 それぞれアドバイスをもらった藍と優斗は防衛戦に参加することを決めた。それを伝えに行こうとしたとき、国中に非常事態を知らせる鐘の音が鳴り響いた。防衛戦が始まってしまったのだ。


9章 戦の始まり

 数日前の朝の会議で説明された陣を思い出す。救護所へと走る。着いた頃にはもう戦いは始まっていた。怪我人が既に運ばれ始めている。優斗も藍も自分がすべきことを初める。

 しばらく経って、魔獣の方が優勢になってくる。押され始めている戦線。いよいよ救護所も捨ててもっと内側に下がらなければいけないかもしれないとなったとき、一つの案が藍の中に浮かんだ。浄化魔法と防衛結界の組み合わせだ。防衛結界術師やら兵士やらに提案して許可を取り、いよいよ魔法を発動する。


10章 第一波防衛成功

 藍が発動した浄化魔法と防衛結界の合わせ技はまだ未完成ではあったがなんとか発動する。戦線を押し返し、土地を浄化し、魔獣たちの弱体化に成功する。これをきっかけに兵士たちは一気に畳み掛け、魔獣たちの猛攻を防ぎ切ったのだ。

 ルベウス防衛戦の第一波を何とか乗り切れた。防衛部隊の損害は少ないとは言えなかった。ボロボロだが、まだ一波を乗り切っただけなのだ。それでも勝利は勝利だと喜ぶ面々。

 2巻の引きとして、防衛戦の第二波がくる。兵士たちの体制は万全ではないが

気力は十分。動けるものたちだけで編成を組み直していく。

「第二波、くるぞぉぉぉ!!!」

「おおおおお!!!」

2巻では防衛戦の結末の話、そして元の世界に戻る話、戻ってからの葛藤と別れ、再会そして二人の恋がどうなっていくのか書きたい。


○なぜ異世界転移をいれたのか

 藍も優斗も友達がいたから完全な孤独ではなかった。愛したい、愛されたいという欲求は中途半端に満たされていた。だから一度その今持っている関係を全てを消して、中途半端に満たされている欲を満たせなくして、唯一互いとしか関係性のない世界での生活を強いられることで、共依存を深めていくきっかけにしたかったから。

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