義妹は吸血鬼

幽谷 優

多分そんなに変わらない日常

プロローグ

 早く大人になりたい、なんて子供の頃はそう思ってた。それは肉体的になのか、精神的になのか。今となっては前者なのではないかと思う。子供の考える『大人』なんて言うのは自分より背の高い人のことを指しているのだと。それでいうのなら私はもう既にれっきとした大人だ。

 二十三歳もあと少しで終わるというのに、精神的に私は高校生にすらなれていないと思う。そう思うようになったのは二十歳はたちになったばかりの頃だった。

 母が再婚した。それは私が大人では無いと自分にそう印象付けるきっかけだった。

 私に父は居ない。生まれた時から母と二人きりだった。それを苦に感じたことも無い。数少ない友人に自分の父親の愚痴を聞かされることも多々あったが、そもそもの経験が私に無いので何をどう言ったらいいか分からない。答えに困るのだ。

 寂しく思うこともあって母に兄弟姉妹が欲しいなんて言ったこともあると思う。子供の頃だからどう兄弟姉妹が出来るとか分からない。母をそう困らせる子供だったのだと改めて思う。

 再婚相手には子供がいた。女の子。血は繋がって無いが、妹が出来たと思うと少し嬉しい。五個歳は離れている。

 最初はお互い(当たり前だが他人だったのもあり)どう接したらいいか分からず、一ヶ月くらいはあまり会話は無かった。ある日を境に普通に話すようになったが、啓介さん(再婚相手もとい父親)の手助けあっての物だった。本当に助かる。

 専門学校もそろそろ卒業が近づいて、私は一人暮らしを始めた。母からも今更一人暮らしするなんてとか卒業前なのに急になんでとかいろいろ言われたが、なんだかんだ後押しはしてくれた。

 ある日妹のアーニャ(杏奈)が私の住む家にやってきた。急になんの用かと思えば春から一緒に住ませてくれという話だった。

「家から通えば良いのになんでウチ?」

「お姉ちゃんの家の方が近いんだもん。お母さんもいいよって言ってくれたし。邪魔?」

 綺麗な銀色の髪の毛は日本では見ない。啓介さんの前の奥さんは外国の人だったとかなんとか。私がアーニャと呼んでいるのはそういうことがあったから。というか本人の希望。だけど私しか呼んでない。

「邪魔とかそう言うんじゃないけどさ、そのー、ほら学校からの届けとか取りに行くの面倒でしょ」

「地下鉄の二駅しか変わんないでしょ。そんなに面倒じゃないと思うけど」

「学校はどこさ、家からの方が近い――」

「このマンションの裏にある」

「ならウチの方が近いか」

 あっさりと納得していろいろと説明される。姉妹になって七ヶ月。一人暮らしした期間二週間。血の繋がってない妹とこれから住むことになる。

 普通の生活が待っているのか、それとも波乱万丈なのか私もアーニャも分からない。

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