お化け屋敷のくじ引きは異議の嵐

秋雨千尋

運命の歯車は力づくで合わせるもの

 部活の仲間たちとお化け屋敷に行く事になった。

 ちょうど四人ずつなので、男子が上の句、女子が下の句を引き、意味が合っているペアで入る事に。


 えーと、私のは……『火曜日』?

 なんか特殊だな、上の句はいったい何だろう。

 はっ、まずい。

 王子くんが『燃えるゴミの日は』を持っている。

 王子くんは嫌いじゃないけど、部の姫が狙っている人だからペアになるのを避けたい。


 姫の句は『願い事』か。

 そうなると私の幼馴染の弓彦の『天の川の』とペアになるみたい。

 部長が手を叩いた。


「はーい。組み合わせを確認しまーす。まず『銀河鉄道の』と『夜』コンビ。次に『河童の』と『川流れ』コンビ。次に『天の川の』と『願い事』──」


「異議あり! 天の川には火曜日です!」


 私は勢いよく手を上げた。みんなキョトンとして、弓彦が目を丸くしている。

 部長が困ったように頭を押さえる。


「いや、火曜日は『燃えるゴミの日は』とペアで──」


「異議あり! うちのゴミの日は月曜日と木曜日です!」


「いやいや、天の川と合わないでしょう?」


「異議あり! 七夕は毎年あるんですよ、火曜日の年があってもおかしくありません!」


「いやいやいや、残った二つが『燃えるゴミの日は』と『願い事』になっておかしいでしょう!」


「今流行りのSDGsエスディージーズですよ!」


「はあ?」


「ゴミを分別しよう。減らそう。地球を綺麗に。そんな願いが込められているわけです!」


 部長は副部長とヒソヒソ話して、私と弓彦を交互に見てから、OKを出してくれた。

 四組のペアでお化け屋敷に入っていく。

 良かった良かった。この機会に姫には王子と上手くいってもらって──。


「なあ、さっきのさ」


 弓彦がこちらを見ずに話しかけてくる。

 あれ、目線が高い。いつの間にかこんなに背が伸びていたのか。


織絵おりえの気持ち、嬉しかった」


 ん? ん? 何て?

 もしかして、私が弓彦とペアになりたい一心でゴネたように見えたのかな。


「あ、あのね、あれは」


「保育園からの付き合いだけどさ、中学生あたりから可愛くなって、正直、意識してた。……好きだ。付き合ってくれ」


 顔を真っ赤にしながらそんな事を言うから、私もつられて恥ずかしくなった。

 自分の胸に手を当てて聞いてみる。

 正直イヤじゃない、というか、叫び出したいぐらいに嬉しい。

 誤解だけど誤解じゃないかも。


「……よろしくお願いします」


 つないだ手の大きさと温かさにドキドキしっぱなしで、お化けどころじゃなかった。

 この日、四組のペアは全部カップルになったのだった。



 終わり。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お化け屋敷のくじ引きは異議の嵐 秋雨千尋 @akisamechihiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ