第9話 焦りとカウントダウン
病室の窓から見える、中庭の桜の木。入院した時は蕾だったのが、もう満開だ。時間の経過を感じて、学校を意識する。病院に居る私は、学校の時間から取り残されてしまいそうで、少し焦る。
それに、最近は足の痛みが不定期にやって来る。四月に入って落ち着いていたのに、これでは退院が延期するのではないかと不安だ。痛みが早めに引けば、離任式に出れるかもしれないと、淡い期待をしていたのに。――離任式まで、あと一週間。
夜に眠れなくなった。月の光で目が冴えた日があった。曇りの日には寝れるかと思ったが、そんな日に限って足が痛んだ。――離任式まであと五日。
春の陽ざしを浴びながら、満開の桜を見るのは好きだった。けれど、曇りが続いてそれも楽しめないでいる。雨の降りそうな雲がくすぶっている。今雨が降ったら、折角の満開の桜が散ってしまう。早く晴れないかと願う日々だ。――離任式まであと三日。
雨が降った。桜が散ってしまうのは悲しい。病院ではどうせ暇だから、この日は散りゆく桜を眺めていた。――離任式まであと一日。
離任式当日。やっぱり私は退院できなかった。心のどこかではわかっていたのだけれど、やっぱり悔しい。
その日は一日中、時計を気にしていた。三時間目が終わった。お昼休み。五時間目が終わった。離任式。
――ぎしりと、足が痛んだ。
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