第4話 ノックと足音と来訪者

 昨日、相澤先生が午前授業になったと言っていたから、今日はいつもより早く相澤先生が来るんじゃないかと思ったのだ。


 人前に出れるような少し余所行きの服だ。髪も整えて、身だしなみはなんとか整えた。


 それからしばらくはベッドの上で過ごす。

 課題をやっていると、ノックの音がした。


 珍しい。有馬病院では患者の異変に気付けるように、基本的には病室の扉を閉めないルールだからだ。


担当医で医院長の息子でもある有馬ありま友稀ゆうき先生にも、着替え等以外では扉を閉めないように言われている。


 控えめな性格の人がお見舞いに来てくれたのだろうか。個室だから、自分以外へのお見舞いと言うことも無い。


「はーい、どうぞー」


ペタペタと独特の足音に気付いて、私は顔を上げた。


「え……」

「よぉ。元気か?」


「えっ!? なんでっ。じゃなくて! はい! 元気ですっ」


「慌てすぎだろぉ」


ノックをしたのは鳴上先生だった。ゆっくりと先生は病室に入って来て、いつものように穏やかに笑っている。その笑顔に安心して、少しだけ落ち着くことが出来た。


「そりゃ驚きますよっ! 先生が来るなんて聞いてないし。でも、嬉しいです」


「ん。いつも通り、その騒がしさなら元気だな」


「失礼な! ま、怪我したのは足だけで、他はどこも悪くないですからね」

    

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る