Prologue. リスクヘッジの鬼

 私の人生には三つの分岐点がある。


 一つは、学校選び。――詳しく言えば、中学校選びだ。


 もう一つは、恋愛。


 最後の一つは、お仕事。

 

 どの選択肢も魅力的で、その当時の私は必死でどちらか一つを泣く泣く選んだというのに、そういった人生における分岐点の話をすると、人は皆、口を揃えてこう言う。


遥香はるからしくて良い選択だったんじゃない?」


 当たり前である。そういう選択肢を選んだ末に今の私があるのだから、「遥香らしい」という言葉がどれほど無意味か理解してから発言してほしいとすら思う。鶏が先か、卵が先かみたいな話だ。


 有馬ありま 遥香はるか、三十歳。第二志望だった女子校を選択し、両片思いだった憧れの先輩を振って今の夫と付き合い、そして小説家の夢をあきらめて、薬剤師という職業に就いた。そんな私のことを、誰もが「リスクヘッジの鬼」と呼ぶ。

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