第2話 軽トラは走り出す。

―――うーむ、理解が追い付かない。


 たしかオレは家に帰る途中で大きな水たまりに突っ込んだはずだが、そこから先の記憶がない。

 そして、今オレは大草原の真ん中にいる。というか、周り全部草原なのでここが真ん中かどうかも分からない。

 遥か遠くには山の稜線が見え、その手前には鬱蒼としてとても広大そうな森が見える。180度反対側は草原が低い丘のようになっている地平線だ。

 

 そして、オレは軽トラに乗ったままである。


 しかも、さっきまでは真っ暗な雨の夕方だったはずが、なぜか明るい昼間になっていた。太陽の光の加減からして、朝に近い午前中の早い時間といった感じだ。


「オレは一晩寝ていたのか?」 

 いや、なんとなくだが水たまりに突っ込んでからそんなに時間はたっていないような気がする。

 

 では、この状況はなんなのであろうか。

 現在地を確認しようにも、軽トラにはカーナビのような便利な設備はついていない。まあ、カーナビどころかカーステレオもAMラジオしかついてないし、エアコンも送風だけだ。ちなみに窓の開閉も手動である。

 ちなみに長男が自動車学校に通っている頃、我が家で唯一のマニュアル車であるこの軽トラで庭で練習をしようと乗り込んだ時には窓の開け方がわからなかったな。今の若い者はパワーウインドウしか知らないのだろう。

 ある意味、軽トラは現代日本のオーパーツだな。

 

 まあ、それはどうでもいいとして。

 オレは家に帰りたいのだがどうしようか。


 まあ、このままここにとどまっていてもどうしようもない。

 現在位置が分からないとはいえ、この場に居続けたところで事態が好転するとは思えない。とりあえず、低い丘のようになっているほうに傾斜を上って移動してみよう。高い所に行けば何か見えるかもしれない。


 オレはギアを入れ、クラッチを操作しながらアクセルを踏み込んで軽トラを発進させた。


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