第2話 歌え!
書類審査からしばらくして、愛子の家に一通の封筒が届いた。
送り主は新アイドルグループオーディションの運営からであった。
愛子は封筒を見るや否や震える手を抑えながら封筒を開けた。
上から手紙をジリジリ読み下りていくとそこには「書類審査突破」の文字があった。
「やったぁ〜!!これで次に進める!!」愛子は喜びを爆発させた。しかしオーディションは始まったばかりである。
次に愛子に待っているのは歌唱審査である。
何を歌えばいいのかわかって分からない。愛子はとりあえずカラオケに行くことにした。
ラブソング、バラード、やっぱりアイドルソング?歌う曲によっても印象が変わってきてしまう。
「とにかく練習するしかない!!」
2時間後—
愛子は長時間歌ったことで喉が乾いてきたのでジュースを取りに行った。
しかし自分の部屋が分からなくなってしまった。
自分の記憶を思い出しながら当てずっぽうで部屋に入るとそこには愛子と同じくらいの歳の女の子が一人いた。
ツインテールで背は愛子より低いが頭が小さくスタイルがいいのがよく分かる。
彼女は人気アイドルの代表曲を楽しそうに歌っており、愛子は彼女の歌声に聞き惚れてしまっていた。
女の子はそのまま1曲歌い終える。
「きゃっ!!あなた誰よ!!」彼女は愛子に驚いている。
「あぁ〜、ごめんなさい。聞き惚れちゃってて、、、」愛子は苦笑いで誤魔化すしかなかった。
「まぁ、いいわ。これも何かの縁ね。私、凛。河合凛。よろしくね!あなたは?」凛は見た目通りの挨拶をした。
「あぁ〜、わ、私愛子って言います〜。勝手にお部屋には入ってすみませんでした、、、」愛子は凛の笑顔に圧倒される。
「じゃあ、失礼しました〜。」愛子はそそくさと部屋を出た。
愛子は自分の部屋に戻り、カラオケの続きを始めた。結局歌唱審査で歌う曲を決められないまま時間いっぱいとなってしまった。
愛子は自宅までの帰り道、さっき話した凛のことで頭がいっぱいだった。何せ自分とは真逆の人間を目の当たりにしてしまったのだから。
「私がアイドルになったらあんなにキラキラした笑顔でファンの人の前で歌って踊れるか心配だなぁ〜。何を歌えばいいのか分からずじまいだし。早く帰ってライブのDVDでも見返そっと。」
愛子は歌唱審査の不安から現実逃避するように今日もまたオタ活に精を出すのであった。
愛子はアイドル 羽造 泰 @uzou-yasu
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