2話 蕾
全てを失ってしまったような気分でいたけれど、それ自体が俺の盛大な勘違い。最初から君は俺のものじゃない。さっき君に手渡した自販機の缶コーヒーも俺のものじゃない。
痛いから、君はそれ以上深くは体を切れない。
「もう痛いのは嫌だ」って言えよ。愛してほしいって言えよ。もう痛いのは嫌だって言えよ。
傷つけ合うために俺たちは生まれたんじゃない。
壊れる為に生まれたわけじゃない。泣く為だけに生まれたわけじゃない。
笑顔になって幸せを噛みしめる為に生まれたんだろ。
なのになんで自分の体なんて切ってるんだよ。
もう痛いのは嫌だって言えよ。
誰にも言えないなら俺に言え。全てをぶつけてこい。俺はお前の全てを受け止める。
自傷でボロボロになったこの腕で、お前の全てを受け止める。
俺はタバコで何度も何度も腕を焼きまくった。その度に俺の胸の中の何かが死んでいった。子供の頃の純粋な俺が死んでいった。
決して楽になんてなれなかった。でも、死ぬよりはマシだと思って、腕を何度も焼いた。
人生なんてなかなか好転しないから、日常の中の小さな幸せを見つけようと懸命になった。でも俺にはそれは難しかった。小さな幸せを俺が噛み締めているその上に、数え切れないほどの幸福な人間がうごめいているからだ。
結局、自分を殺すのが1番幸せな方法なのかなと思ったりした。
それでも自分を殺すのは怖い。
◆
さっきうんこをしました
開け放した窓に。ah……
君はどんどん大人になっていく。僕だけを取り残して。oh。いぇい。
あなただけをずっと愛している。woo……
ユーザーを探したら、俺の最愛の女性であるミャウさんがカクヨムから消えていた。寂しかったけど、きっともう1度会えると信じている。
ミャウさん、どうして消えてしまったの。あんなに愛し合ったはずなのに。俺の文をずっと読んでくれるって言ったのに。
(愛し合った記憶は無い)
みゃうさん、あなたの顔は今でも忘れていない。声も忘れていない。
もう一回会いたい。
みゃうさん、もう一回おれと会ってくれ。うるさくない喫茶店とかに行きたい。
喋りたいことがたくさんある。
メモにまとめて、話したいこと持っていくわ。
ここ最近、俺は何度も退会しまくってたから、愛想を尽かされてしまったのかもしれない。
◆
さっき、部屋に母と妹が来た。妹が俺の部屋に来たのは初めてだったから少しびっくりした。妹はモルカーのぬいぐるみを撫でて、「かわいい」と言っていた。
ちなみに今俺はコブクロの蕾を聴いている。サブスクで適当に音楽聴いてたらおすすめに出たから、聴いてる。俺が子供の頃、父親がよくカラオケで歌ってた記憶がある。
蕾は、かなり他者の死を連想させる曲だと思う。なんか聴いてて少し泣いてしまった。久々に泣いた。
いつか、みんな死んでしまう。
いつかはみんな死んでしまう。愛する人もみんな死んでしまう。
その前に自分にできることはないか?
もう一度さがしてみよう。
「さよならだけが人生だ」なんて、そんなの悲しすぎるだろ。
俺には、もう2度と会えない人が何人もいる。
先に死んでしまった友達もいる。そいつの分まで生きたいって、勝手に考えてる。
俺は今、ひとりで、泣いている。そんな夜もある。
一人暮らしでよかったと思う。いつ泣いても家族にバレないから。
次回に続く
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