2話 蕾

全てを失ってしまったような気分でいたけれど、それ自体が俺の盛大な勘違い。最初から君は俺のものじゃない。さっき君に手渡した自販機の缶コーヒーも俺のものじゃない。


痛いから、君はそれ以上深くは体を切れない。


「もう痛いのは嫌だ」って言えよ。愛してほしいって言えよ。もう痛いのは嫌だって言えよ。


傷つけ合うために俺たちは生まれたんじゃない。


壊れる為に生まれたわけじゃない。泣く為だけに生まれたわけじゃない。


笑顔になって幸せを噛みしめる為に生まれたんだろ。


なのになんで自分の体なんて切ってるんだよ。


もう痛いのは嫌だって言えよ。


誰にも言えないなら俺に言え。全てをぶつけてこい。俺はお前の全てを受け止める。


自傷でボロボロになったこの腕で、お前の全てを受け止める。


俺はタバコで何度も何度も腕を焼きまくった。その度に俺の胸の中の何かが死んでいった。子供の頃の純粋な俺が死んでいった。


決して楽になんてなれなかった。でも、死ぬよりはマシだと思って、腕を何度も焼いた。


人生なんてなかなか好転しないから、日常の中の小さな幸せを見つけようと懸命になった。でも俺にはそれは難しかった。小さな幸せを俺が噛み締めているその上に、数え切れないほどの幸福な人間がうごめいているからだ。


結局、自分を殺すのが1番幸せな方法なのかなと思ったりした。


それでも自分を殺すのは怖い。



さっきうんこをしました


開け放した窓に。ah……


君はどんどん大人になっていく。僕だけを取り残して。oh。いぇい。


あなただけをずっと愛している。woo……


ユーザーを探したら、俺の最愛の女性であるミャウさんがカクヨムから消えていた。寂しかったけど、きっともう1度会えると信じている。


ミャウさん、どうして消えてしまったの。あんなに愛し合ったはずなのに。俺の文をずっと読んでくれるって言ったのに。


(愛し合った記憶は無い)


みゃうさん、あなたの顔は今でも忘れていない。声も忘れていない。


もう一回会いたい。


みゃうさん、もう一回おれと会ってくれ。うるさくない喫茶店とかに行きたい。


喋りたいことがたくさんある。


メモにまとめて、話したいこと持っていくわ。


ここ最近、俺は何度も退会しまくってたから、愛想を尽かされてしまったのかもしれない。



さっき、部屋に母と妹が来た。妹が俺の部屋に来たのは初めてだったから少しびっくりした。妹はモルカーのぬいぐるみを撫でて、「かわいい」と言っていた。


ちなみに今俺はコブクロの蕾を聴いている。サブスクで適当に音楽聴いてたらおすすめに出たから、聴いてる。俺が子供の頃、父親がよくカラオケで歌ってた記憶がある。


蕾は、かなり他者の死を連想させる曲だと思う。なんか聴いてて少し泣いてしまった。久々に泣いた。


いつか、みんな死んでしまう。


いつかはみんな死んでしまう。愛する人もみんな死んでしまう。


その前に自分にできることはないか?


もう一度さがしてみよう。


「さよならだけが人生だ」なんて、そんなの悲しすぎるだろ。


俺には、もう2度と会えない人が何人もいる。


先に死んでしまった友達もいる。そいつの分まで生きたいって、勝手に考えてる。


俺は今、ひとりで、泣いている。そんな夜もある。


一人暮らしでよかったと思う。いつ泣いても家族にバレないから。





次回に続く

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