異世界アイドルオペレッタ♪♪
山岡咲美
第0話「プロローグ」
「
愛華はかわいらしいが派手すぎず、痛い人に見えないくらいに特徴的な星の輝くバレッタで長い髪を止め、ハートのネックレスを首から下げていた。
その日は愛華にとって大切な日だった、ミュージカルのオーディションとCDの発売日がかさなったのだ。
「じゃ主役のロゼッタのセリフパートAお願いします」
演出の男性が愛華に指示を出す。
ここはオーディション会場、第一次の動画オーディションを終えて、実際に演出家達の前で演技を見せる第二次オーディション会場には三十人ほどのアイドルや女優がオーディションを受ける為に控えており、一人一人防音が整った部屋に呼ばれ、長机の後ろに演出家や音楽監督、アクション監督、プロデューサーの控える前で実際に演技をして見せるのだ。
「はい!!」
愛華は解ってますと言わんとばかりの返事をして演技を始めた。
本作品は異世界に転移したアイドルが楽しく輝く異世界アイドルストーリーである。
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セリフパートA
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「いったいここは何処なの?」
愛華は目を見開く。
「私は地下鉄からエレベーターに乗ってて……」
愛華の動悸が徐々に速くなっていく、恐怖と不安が伝わる。
「石作りの町並み?? ツノ??
愛華の視線が次々と人の頭の高さをおよぐ。
「見上げる位大きな女の子?? 子供のように小さなおじいさん??」
今度は上を見上げ、誰かにぶつかりそうに成り慌ててよける。
「私は何処に来てしまったの?」
最後に愛華は長机のスタッフを見つめ自分の演技の世界に釘付けにした。
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「ありがとうございました!!」
愛華は歌い終わると一礼して部屋を出る、後ろでは愛華の事をささやく声が聞こえる、どうやら好感触だ。
きっと
愛華はそう思い、緊張感漂う控え室を抜け、次の仕事場へと向かった。
***
「ごめんね控え室こんなのしかなくて」
女性マネージャーの
「大丈夫ですよ前野さん、私新しい衣装で歌えるの楽しみです♪」
愛華はパーティションの控え室にハンガーにかけられて用意されていた新曲用の真っ白なフリルいっぱい、星とハートのモチーフのステージ衣装を高ぶる心で見つめた。
「頑張って愛華さん、あなたは今のぼり調子なのよ、ここから伝説を始めましょ♪」
前野マネージャーは愛華をこぶする、たとえ電気街の小さなの特典付きCD発売イベントでも、一人一人のファンを獲得するチャンスなのだ。
「はい、前野マネージャー!!」
愛華は真っ白な衣装に身を包みパーティションの控え室からカーテンを開けて出て来た。
そこは電気街にある大手音楽チェーン、ショップ内に
「私歌う、ファンの心をつかまなきゃ!!」
「皆さん、新曲[☆スターとラブ♡]です、聞いて下さい♪♪」
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☆スターとラブ♡
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
新曲[☆スターとラブ♡]と愛華は一つの一つの動きと音が完璧だった。
愛華が歌うたび踊るたび、無限に溢れる星がキラめきハートが舞うようだった。
それはその小さなライブステージの回りのファンだけでなくただ通り過ぎて行く筈だった音楽ショップのお客さんの動きを止めて愛華に向かせるほどだった。
愛華の視線が、愛華の指先の動きが、愛華のステップが、その体の動きの全てが人々を愛華へと導きその視線を離させないようだった。
愛華は天性のスター、愛華は人に愛される才能を持っていた。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
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「おーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「うおうわーーーーーーーーーー!!!!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「うごごごごごごごごごおおおお!!!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ
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愛華の新曲[☆スターとラブ♡]のステージは新曲と同時に作られた衣装と共に輝いた、星と愛をテーマに作れたその曲と衣装は見事に人の心をつかんだのだ。
***
「前野さんどうでした?!」
愛華は息を切らす事もなく、前野マネージャーの元へ駆け寄る、愛華自身は簡易ステージの前に集まってくれたファンや立ち止まって見てくれた人達を目にしたステージだったし、そのあとの特典付きCD購入者握手会もたくさんのファンが並んでくれていた、愛華は手応えを感じていた。
「前野さん?」
前野マネージャーの元に駆け寄った愛華だったが前野マネージャーが電話中だったので声をかけるのをやめる。
「はい、はい、中央道で事故? はい、迂回すると時間切れ? はい、はい、はい、え? 愛華を一人でですか? はい、はい、車は愛華を回収したあと別の現場で使う? はい、はい……」
スマホの電話を切り前野マネージャーはその画面を見つめる。
「事故、大丈夫ですか?」
愛華は取りあえず中央道の事故が気になったようだ。
「え? 愛華? ああ、ステージどうだった? 事故? 事故は大丈夫みたい、トラックが横転したけどドライバーさんも後続車も死者は出てないって話しみたい」
前野マネージャーは事務所からのスマホの電話で聞いた事故の話をする。
「良かった、生きてれば大丈夫ですよね♪」
愛華はいつも思う、生きてさえいれば大抵の事はなんとかなるのだと。
「……そうね♪」
前野マネージャーは愛華のこのポジティブで更に人の事を想える性格はアイドルに大切な事だと気づいていた、そして同時に少しでも良い場所を、ステージを確保してファンを集めてあげないとと焦っていた、この愛華だってファンが増えなければいつかその光を失ってしまうかも知れないのだ……
「じゃ、生きてる限りあがきましょう愛華!!」
前野マネージャーは意を決して愛華に状況を伝える。
***
「絶対間にあわせます!!!!」
愛華はステージ衣装のまま前野マネージャーのコートを借りてそのステージ衣装の上からはおり、街なかを地下鉄の駅へと走る。
「いい、愛華、中央道の事故でここからの車移動だと次の
前野マネージャーはステージ衣装で街を行くと目立つからと自分のコートを愛華に渡し、愛華のお気に入りの大きなつばの麦わら帽子を被せてくれた。
***
「スマホ、時間は? あっ、しまった、バッテリー切れてる、腕時計は前野さんに預けたバッグだ……」
愛華は地下鉄にのり大手町駅へと降り立ち、すでに上りのエレベーターの中にいた、いつもなら階段を駆け上がり身体を鍛えるのだが今日は息を整えるのを優先した。
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エレベーターの扉が開く。
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「そうだよね、日本に住んでたらこんな事もあるよね…………」
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