【200PV感謝!】拝啓、妹が神様になっちゃいました!

添寝型えにぃど☆

第1章「神様になっちゃいました!」

プロローグ〜これが全ての始まり〜

 ___あの出来事から1日前の話

 清々しく朝日が差し込む今の時間、午前8時00分ちょうど。


 窓の外では小鳥が鶏の代わりかのようにさえずり朝だよ〜と私たちに伝えてくれる。


 そんな、何一つ変わらない平穏な日常。

 異常な所すらない悪く言えば代わり映えし無さすぎて退屈する程の日常。

 今日もどこかの家で一日の初めを迎える。


「霧子!早く起きてっ!学校に遅れちゃうよ!」


 彼女の名前は冴島綾音(さえじまあやね)、冴島家の長女であり16歳のごく普通な女子高生である。


 今は妹の霧子(きりこ)を叩き起こそうと体を揺さぶり起こそうとする。


「っうう...霧子疲れた....あと100年は眠りたい...」


 それに対してなんとも眠たげに片目を開けて綾音の顔を見る。

 見てすぐ寝起きとすぐわかるいつもより低い声で文句を口にする。

 今日学校だろうと常にマイペースな彼女は15歳の、今年の年度末に卒業予定で来年度から高校生の姉と同じ至って普通の女子中学生。


 2人揃ってスタイルもよく中学の頃からたくさんの男子に告白されたこともある。


「100年って...霧子それは死んでるでしょ!人間の平均寿命ギリギリなの!」


 なんとも言えない絶妙なツッコミを入れつつ布団をはぎ取ってやる。

 こうすれば大抵の人は起きる。


「!わぁあ!...綾音強引...霧子そういうの嫌い」


 案の定起きた。


 さっきはあんなに眠たげだったのに急に大きな声を出すものだから起こす側の綾音だってビクッと体をふるわせてしまう。


 そして不貞腐れたかのようにプクッと頬をふくらませる。

 自分のペースを崩されたのが気に入らない様子。

 といってもこれがいつも通りなのだか....。


「はいはい、私の事嫌いになるのはいいからさっさと身だしなみしっかりしてリビングに来なよ、お母さんがご飯用意してくれてるんだから」


 とこれまた妹の悪態を軽く流しながらそう言葉を残し部屋を出ていってしまった。

 霧子と違ってせっかちな様子。


「.....まったく、綾音はいつもこう....」


 やれやれとひとつため息をすれば自分も髪をといて寝癖を治し、パジャマから制服に着替えてから部屋を後にする。


 部屋を出てすぐ床がギシギシと軋むような音がする。

 家自体が木造建築で、築50年以上の年季が入った二階建ての一軒家であるからして割と仕方ないことである。


 そんな寿命が近い我が家の廊下を歩き階段をおりてすぐ我らが食卓であるリビングに顔を出す。


「霧子早く椅子に座りな、ご飯が冷めるよ」


 顔を出して直ぐに綾音に急かされる。

 毎朝いつもこれだ。


「分かってる...お父さんお母さんおはよう...」


 綾音のせっかちには軽く答えつつ椅子に座り父と母に朝の挨拶を返す。


「おうおはよう、今日はやけに素直だな?いつもは遅刻スレスレで目が覚めるのに」


 我が娘の朝の挨拶に一旦読んでた新聞を下ろして目線を合わせて挨拶を返すのは冴島務(つとむ)、30代前半の男性でメガネが良く似合うイケメンである。

 仕事はIT企業である。


「あらあら霧子おはよう〜昨日は大変だったでしょう〜、でも今日はもっと疲れると思うわよ〜」


 父の答えに対しなんとも意味深な発言をするのは母親の冴島美智子(みちこ)。

 少々不思議な発言をするがこれでも20代後半の女性。


 父親とは1つ違いで、ふたりはできちゃった婚で結ばれた。

 どこか表現するのも難しく感じるほどの「女としての魅力」に強く惹かれる。


 ちなみに姉妹のうちで一番この魅力が強いのは母親いわく霧子の方なんだそう。


 この女としての魅力を世間では''魔性の女''と言うそうだけど、どこか忘れられない印象を与えてるなんて自覚は霧子には到底ない。


「もう...お父さんもお母さんも変なことばっかり...」


 机の近くに置いてあるリモコンを手に取りテレビを付けてニュースを見ている。

 そして目の前のご飯を改めて見つめ直しお箸を手に取る。


 今日のメニューはキャベツとパプリカのカラフルサラダに五目ごはんと味噌汁、そして目玉焼きである。

 なんとも素朴だがこれでいい。


 下手に着飾って豪華なご飯を毎日3食嗜むよりもこういう素朴なご飯こそ志向で真に美味しいといえる。


「そう言えば今日は霧子だけじゃなくて私も忙しい日か...''もうそんな時期''だったんだね」


 綾音も箸を手にとり目玉焼きの黄身を箸で崩して溢れ出てきたところをご飯にかけてかきこむ。


 行儀自体は少し悪いが実質卵かけご飯である。

 なおどうでもいいが目玉焼きに対して綾音は何もかけない派で霧子は醤油を掛ける派だ。


 話を戻すが今の時期は冷たい風が肌にあたり寒くなってくる 10月下旬頃の話。

 農家ならいよいよ収穫の時期を迎える頃合だ。


「あれ?綾音も....?...霧子''染落とし《そめおとし》''嫌い」


 染落とし《そめおとし》、それは穢れた魂を浄化するためのひとつの儀式。

 世の考えの中に''健全なる魂は健全なる精神と健全なる肉体に宿る''なんてのがあるが、その考え方に基づいた儀式である。


 その儀式を取り扱う時期がちょうどこの秋暮れである。


 年に一度行われ、この儀式を行う上で最も大変なのが「理由を探っては行けない」ということである。


「おいおい霧子、そんなこと言ったら罰当たりだぞ?父さんだって若い頃同じ苦しい思いをしたんだぞ?もちろん母さんも」

「えぇ、歳を増す度に苦労が増大して苦しくなるの。でもこれを乗り越えることに意味がある、理由なんて求めては行けないの。」


 霧子の発言に対して両親が必死に宥めようとする。

 よっぽど特殊らしい。


 なおこの染落とし《そめおとし》、基本的には思春期を迎えた子供が対象で、大人になると染落としは行われない代わりに''清めのきよめのこく''というまた染落としとは違った儀式を年に一度通過しなければならない。

 どちらの儀式も男女問わず必ず通る道である。


「ちょうど今ニュースでも染落としのこと言ってるよ。」


 なんてテレビを見ながらそう口にする。

 テレビの内容自体はよくある報道番組である。

 清めのきよめのこくのことや染落とし《そめおとし》のことなど今年も執り行われるという旨の話が展開されていた。


 そんな家族の話をよそに先に食べ終わったのは霧子だった。


「ご馳走様....歯磨きしてくる」


 とどこか素っ気ない態度を見せながらその場を後にする。


「霧子....やっぱりあの子は『違う』」


 綾音は去ってく霧子をみて呟いた。

 姉妹であるはずなのに何かが違う、性格?顔つき?スタイル?いいやそんな単純なものでは無い。


「綾音もそう思うか?俺もあんま言いたくはないが...霧子はどことなく『違う』んだよ、あんな兆候は近年稀かもしれん」


 父も感じた『違う』、娘との齟齬があるかもしれないが彼もなにかを感じていた。


「........苦しい....なんでこんなに....なんで...」


 一方霧子はというとトイレの中で座り込んで独り言を呟いていた。


 下着を下ろして便器に座り込み、用を足しているさなかでの呟きだった。

 霧子は今のこの状況を''苦しい''と思っているようだ。


 ただ1口に苦しいといっても綾音と話すことや両親と話すことが苦しいという訳では無い。

 それとは別の『なにか』が邪魔をして苦しく感じるのだ。


 どうしてこんなに息苦しく感じるのだろう...なんで居心地が悪く感じるのだろう...そんな倦怠感にも近い状態に悩まされながらも「考えすぎだよね」と生理中だからきっとろくでもない考えしか出来ないんだと自身を追い込みこれ以上考えないようにして、下着を履き直し水を流してトイレから出る。


 今日の染落とし《そめおとし》さえ乗り切れば...何か変わるかもしれない。


「霧子〜!学校いくよ!早く来な」


 また綾音は自分に対して催促してくる。


 ...おかしい、いつもの事なのになんでこんなに怒りが湧き上がってくるのか...なんで「殺意」を覚えたのか、自分では分からなかった。


「ごめん、御手洗が長引いただけ。いってきまーす!」

「いってきまーす!」


 2人揃って声を出して挨拶し両親に対して背中を見せて家を出る。


 ___これが全ての始まりにして物語の始まり、これから明かされるはなんとも未知なファンタジーの世界。


 時が進み、また新たな一日が始まるまでの盛大な物語...明日の道は己で紡ぐ。

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