夏の夜の花畑 KAC202210

真夜中は、不思議な事が起こりますよね?多分…真夜中の学校とか、不思議が詰まっていそう… アニバーサリー・チャンピオンシップ 2022用600~4000字#KAC202210



その日は、バレー部の夏合宿3日目だった。

茹だるような暑さの中、蒸した体育館の中で、限界まで肉体を酷使して、身体中から水分を絞り出すかのような連日の猛練習にそろそろ嫌気がさしてきた頃。

就寝時間の22時を過ぎても、熱帯夜の湿度で中々寝付けなかった。

ぐだぐだと寝返りを打ちながら雑魚寝の部員たちを見ると、みんなは合宿の疲れからかぐっすりと眠っていた。

私は真夜中を指す時計を見てから、そっとみんなを起こさないように起き出して、お茶の入った冷蔵庫を目指して部屋を出た。

3階建ての合宿棟の一階の食堂にある大きな冷蔵庫には、お茶が冷えている。

短パンにTシャツ姿の私は、階段までの廊下を音を立てないように、速足で歩いた。

ふと、外が明るいことに気付いて廊下の窓から外を見る。

普段なら、ここからは運動場の西側が半分ほど見える。

でも、その日そこから私の目に見えたものは、花畑だった。

あり得ない光景に、私は食堂ではなく外に向かって走り出していた。

辿り着いた運動場には、紛れもなく学校の花壇よりも大きい花畑が出来ていた。

ほんのりと輝く、色とりどりの花。花。花。

訳が分からず、立ち尽くす私の前にどこからかスッと人が現れた。

花と同じようにほんのりと全身を輝かせて、静かに私を見つめていた。

男の人にも女の人にも見えるその人は、じっと私を見つめた後でにっこりと微笑んでから、またスッと消えて行った。

その人が消えたと同時に、花畑も消えてしまった。

真っ暗ないつもの運動場に一人取り残された私は、しばらく動けなかった。

お茶のことを思い出して気が付いた時には、何故か蒸し暑さを感じていなかった。

食堂でお茶を飲んで、雑魚寝部屋に辿り着くと、何も考えずに眠てしまった。

翌朝、なんとなくすっきりと目覚めると、友達に昨夜の不思議な出来事を話した。

友達曰く、昔のここはたくさんの人が埋葬された土地で供養のために大きな花畑があったそうだ。

なんとなく私は、そう言えばお盆が近いなと思いながらバレーの練習に明け暮れた。

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