シーサイド・スーサイド

鏑木レイジ

第1話スーサイドは夢の中

 浅い眠りの中で生きてきた。

 遠くから、さざ波の音と共に、孤独の絶歌が聞こえてくる。天上の幻が囁くように。

 僕は思い出す、海の記憶が何度も、押し返しては消えていく。

 それは海岸線の向こうの、痛ましい朝焼け。

 あれは、夕日だったのだろうか。

 定かではないけれど。

 でも、はっきり言えるのは、シーサイドで恋が終わったってことだ。

 磯の香りと、あの子の手のぬくもり、イアン・カーティスの音楽が鳴っている。どうしようもなく、いらだっていたってことだ。

 切なく狂おしいような、香しいような彼女の髪の匂い、あれは、ベルガモットの香水。抱きしめあった、そう、僕らは何度も求め合ったんだ。夜明けを待つ、獣のように。

 絶歌。

 海岸線で恋をした、スーサイドは夢の中。

 踊っている、軽やかに、そしてアダージョのように。

 これから語られる僕のちょっとした痴話話に、付き合ってもらいたい。

 きっと、そうしたら、君の耳にも、何かしら音楽が聞こえてくるはず。

 今宵、この夜。

 ロックン・ロールが打ち明ける、本当に、ちょっとした重い話。

 ヘヴィになる。

 だから、ブラック・コーヒーを飲んで、メンソールの煙草を吸って、タイピングしている。

 ずっと、このまま、記憶を探り続けていたい。

 夢を語るように。

 未来から、このまま、絶望の夜明けを超えていけ!

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