第六話 追手
尾行されてる……か。
今の時点ではあくまで気配だけで人数までは特定できていない。
ここは敢えて狭い路地に誘い込んで、もう少し情報を集めるか。
喧騒とは程遠い狭い裏路地では、壁に反響して音がよく響く。
足音の数もわかるだろう。
ついでにアイツらに知らせて追手の雇い主を吐かせるという手もあるか……。
俺は、携帯型の魔導通信機を取り出した。
『こちらアオバト、聞こえているか?』
俺の問いかけにすぐさま声が返ってきた。
『こちらネスト、どうしたの?アオバトさん……?』
通信機の向こう側にいるのはフィリスだった。
『天敵の隼に追われている真っ最中だ。救援頼めるか?』
アオバトは俺を意味し、ネストは俺と二人の部下に与えられたセーブハウスを意味する。
尾行されているために個人宅への帰宅は避けたのだ。
『それは災難……現在地は?』
『サンマルク通りの一本南側の裏路地をにそっちに向かっている』
魔法通信技術の発展は、それと同時に盗聴技術を確立させた。
つまりは誰かと交信する以上、知らない誰かに傍受されている可能性があるということなのだ。
『了解……そのままネストに最短ルートで向かって』
『頼んだ』
俺たちの仕事が仕事ゆえに名前を出すわけにはいかず、コードネームで互いを呼び合っている。
魔導通信機を閉じて革製の鞄にしまいこんだ頃には、ある程度明確な足音が聞こえてきていた。
数は五人……殺れない数では無いがこの狭い路地において実力の分からない連中と殺り合うのは正直言って避けたい。
イリスとフィリスとの合流が先決だな。
僅かばかり歩調を速めることにした。
すると足音も俄に加速した。
もはや隠す気もないということか……。
さっきの今、雇い主はおそらくスチュアートなのだろう。
教師に暗殺者を仕向けた、十分罪になりうる話だ。
尋問で吐いてくれたのなら喜んでスチュアート更迭の材料にさせてもらうとしよう。
チラリと振り返れば、視界の端に魔導拳銃を抜く姿が見えた。
なりふり構わず、ということか。
【
パスッパスッ!!と破裂音が響く。
サプレッサー付きか……何処かの組織に属する暗殺者で間違いないらしい。
【
マズイな……。
一度命中したところに二発目を貰えば、【
かと言って【
絶え間なく撃ち続けられるこの状況下においてもっとも避けたい選択肢だった。
あぁ……早く来てくれよ!!
パリィィィィン――――
耳障りな甲高い音ともに【
一度命中したところに二発目を貰って穴が空き、強度が低下したせいなのだろう。
【
相手には完全に同業者と悟られていそうだな……。
跳躍し敵の銃口の向きを上げさせ、落下に入るタイミングで【
そして着地、再び走り出した俺の頭上を二つの影が過ぎる。
「さぁさぁ、敵はこっちですわ!」
聞き慣れた部下の声とともに響く銃声。
間に合ってくれたらしいな!
俺は安堵の息を吐いた。
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