第43話 合宿二日目、でもほぼミッションコンプリートなので和やか

 二日目も少し場所を変えて川を浚うことにした。鉱物博物館で勉強もしたかったが、昨夜全てをお互いにバラして、バラされて、何よりも別人のような蛍の涙の説得もあり、他にもいい石が無いかと予定を変更して再び皆で川の砂を浚っていた。金町のプレゼント分がまだ取れていないというのもある。


 杉だけは相変わらず、焚き火&コーヒー担当であるが。「こんなことだろうと思って燃料とコーヒー豆は沢山持ってきました」と言う辺り抜け目がない。


「驚きました、あの蛍先輩があんなに真剣になるなんて」


「指輪の人の哀しい話を聞いたら、さすがの蛍にも心に響くものがあったのね。んー、これも高温石英だなあ。色付きだから取っておこう。しかし、昨日もそうだったけど高温石英ばっかりね。あとは水晶にベリル、ジルコンだっけ」


「森下部長、ジルコンの写真見たけどあまり宝石っぽくないです。まだ高温石英がいいですよ。地学部サンプルにするなら別ですが。あとは錫石も採れるから、私たちは純粋に地学部のサンプル探しがいいかもしれません」


「そうねえ。あ、これは黒いから錫石かな。川には無いはずだけど、誰か捨てたのかな。これも持ち帰ろう」


 金町も浚っているが、空振りらしく少し焦っていた。


「せめてスモーキークォーツ出ないかなあ。真奈へのプレゼントは二年連続水晶でも種類は変えたい」


「金町、今度は先生も手伝うぞ」


「先生。なんとなく雰囲気というか表情が変わりましたね」


「生徒達に教えられたからな。ただの冷やかしならからかうなと怒るところだが、あの石川があんなに泣いて真剣に説得してきたから驚いた。何か昨日の電話で落とし主から聞いたのだろう。先生にも覚悟が足りなかったのかもしれない」


 そして、当の蛍はというと無言で砂をさらっていた。


(蛍が珍しく無口じゃ、美蘭は昨日ちょっと遊ばせて貰ったし、見守るかの。それか、たまには神通力で石の場所でも探してみるか)


「あー、魚川君。何か考えているようだけど、自力で探してみる。どうしてもって時に頼む」


『え? わしはすまほを使ってないのに何故わかった?』


「長いこといるとなんとなくわかる」


 そうして蛍はまた無口になって砂を浚い始めた。


「今日は昨日より成果は緩いのに焚き火休憩する人少ないなー。コーヒー独り占めすっかなー。それとも焚き火台付近の石でもチェックするかなー。錫石にジルコンとかあるかも。とりあえずそれっぽい石を取って選り分けよう」


 杉は煮詰まりかけたコーヒーをカップに入れて火の番と周辺の石をチェックしていた。


 そうして肩の力を抜いて、黙々と作業したのが良かったらしく、成果はトパーズがさらに数個、高温石英と水晶が複数、錫石らしきものが数個ほどであった。


「よし。真奈へのプレゼントはなんとかなった。おまけにたくさん採れた高温石英の透明感あるやつも付けよう」


「金町、頑張れよ」


「先生こそ」


「蛍、すごいじゃない。二個も採れたのね。どちらかを美蘭先輩にしてあとは自分のにするの? いいなあ、お揃いか」


「ううん、一個は別の人にあげる」


「は?」


「先生に頼んで昨日の交番でお巡りさんに頼む。指輪の人から話を聞いてこれも“落ちていました”と言って届ける。先月トライして失敗したんだって」


「蛍にそこまでさせるなんて、どんな哀しい話だったの?」


「聞かない方がいいよ。私も思い出すとまだ泣いちゃう」


「今回の計画といい、悲恋に涙したり、少しは成長したのかしらね」


「何よ、そのお子ちゃま扱いは」


 ランチ休憩でキャッキャと話す二人をスマホ越しに見ながら魚川は不思議なものを感じていた。


(山の石は拾うなという話もあるが、ここはほとんどないな。しかし、あのサンプル群に何が黒い影を感じる。本体は蛍の家と遠すぎるし、浄化は戻ってからだな)

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