12話 師弟の在るべき形
「――くっ‥‥‥!! まだまだです! この程度では屈しません‥‥‥!!」
――数時間、
その攻撃は
彼女は知らない、この
汗だくで倒れそうになりながらも攻撃を続けるセシリー。
――何だこれ? まるで俺が仕打ちプレイを嗜んでいるみたいじゃないか。‥‥‥違うからね。
"面倒臭い"という感情から、とりあえず
しまったな‥‥‥。展開が全くない。俺から何か言おうにも言えない。何故なら、これはセシリーに課題があるのではなく、俺の
と、とりあえずこれ以上このままにしておくのはまずい。
「セシリー、攻撃を止めてくれ」
「いえ! 私はまだ――」
「良いから止めてくれ」
セシリーは解せないような面持ちで、攻撃の手を止めた。はぁはぁ、と息が整っていない。一体どこまで真面目な奴なんだ。頭にバカがついても良いほどだ。
俺は
かと言ってそのまんま事実を伝えてちゃ、こいつの数時間は無駄だったことになるしなぁ。
「しばらくお前の攻撃を俺の
「も、申し訳ありません‥‥‥」
セシリーは表情を暗くし、視線を落とす。
まずは俺の
「数時間かけて破壊できなかったのだから、俺の
セシリーは絶句した。
努力なんて、そう簡単に実を結ぶものじゃない。少しの成長が垣間見えた時、その喜びをひとしお大きくするためにセシリーの
「なので方針を変えよう」
と言って、"ただ
「俺に初めてそのスキルを見せた時、"荒業"だって言ってたよな。
「どういうことですか?」
うむ、教える立場としては嬉しい反応だ。教え子に未知の事物を教えるというのはこうもやりがいを感じるものなのだな。
まぁ俺の場合、魔族について一つの確信を得れたことへのそれでもある。
魔族は強力だ。そして
"魔族の知能は決して高くない"。
魔族はそもそものステータスが高い。本来、努力などせずとも他種族の上で裕福に暮らせるはずである。なのである程度の表面的な知識があっても、教養はそれほどないのだ。
それがどうしてか、
――強くなろうと励んでいるが、かと言っても知能は変わらない。あれだけ何もかもこなす
つまりセシリーに必要なのは、
「"力任せにしない"ってことだ」
事実、セシリーの
まぁ、セシリーが俺を信用してくれているからか、俺が"無敵の環境下でただ胡座をかいていただけ"だと疑わなかったというのも一つあるだろうけど。
「お前がどんな戦闘訓練を積んできたか俺には分かり兼ねるが、俺が知る限りじゃ攻撃が単純だ」
「計画性がない、ということですか?」
「そういうこと」
俺が知る限りでは、魔族は自分より下の相手に対しての攻撃が単調になりがちだ。セシリーがケルベロスを皆殺しにした時も、ヘルブラムが俺を攻撃する時もそうだった。まぁそのおかげで俺はヘルブラムに殺されることなく生きているんだけどね。
「えっと、
「はい。
セシリーは自分の指を見つめた。それがどうしたのか、と疑問にでも思っているのだろう。
さっきまでのセシリーの攻撃では、俺の
指を刃の如く、しかし乱暴に俺に殴りつけるイメージであった。
彼女のスキルの殺傷能力は折り紙付きだ。ケルベロスが豆腐のように微塵にされるのをすぐ側で見ていたから分かる。
だが俺のように装甲が硬い敵が現れるかもしれない。素早く回避する敵が現れるかもしれない。だから。
「その操作を工夫するんだ」
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