れっつごー、なにかのみちへ
バブみ道日丿宮組
お題:今日のコウモリ 制限時間:15分
「えっとさ、これ本当に意味ある?」
下から見上げるように彼女が見つめてくる。
頭には獣耳、服はゴシックドレス、背中にはコウモリの羽根。
いわゆるコスプレを彼女はしてた。
「じろじろ見られてて……」
手を引かれるがままに彼女を連れ出したのは駅前通り。
学生、主婦、カップル。様々な人に街は溢れてる。
そんな中で彼女はコスプレなんかしてるのだから、視線をどうしても集める。
「本当にこれで緊張しなくなるの?」
頬を赤らめて握ってくる手はとても震えてる。
「私、人前でも目を出して歩けるようになりたい」
それが数日前のこと。
僕は色々考えて、大勢の前でどっとすることをすれば、多少なりとも緊張感がなくなると思った。
着させて連れ出すということに数日、数時間かけたこともあり、成功してほしい。
普段目隠れしてる顔はきっちりと表に出て、彼女本来の可愛らしさをアピール。
これで人前で目を出すということには成功してる……はず。
もっとも学校で同じようにできるかといえば、わからない。登校前に弄ることはできるけれど、彼女の心がそれに伴わなければ目隠れのままだ。
だからこそ、
「緊張は?」
「してると思う」
手の震えはおそらくそれである。
「だんだんと気持ちよくならない?」
「それはただのへんたいさんだよ」
間違いない。
でも、それでも。
彼女は人前でコスプレをした。
その事実は彼女を勇気づけるには十分じゃないだろうか。
「僕だって、猫耳メイドしてるんだから大丈夫だよ」
完全に僕の趣味だった。
女装あるいはコスプレして日常を過ごすのが好きだった。
彼女が着てる服も僕が持ってた服だった。
僕も一緒にするからと折れてくれたのだ。
やっぱり本物の女の子には勝てない。
どうあがいても可愛さというのは性別の壁を超えられない。
ずるいなと思う。
「じゃぁ、ちょっと買い物して帰ろうか」
「う、うん」
手を引いて歩く。
ちょっとした優越感が僕の中で疼いたのだった。
れっつごー、なにかのみちへ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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