【最愛】第三話「ただの儚い夢なのだから」

 彼と出会った日の夜、夢を見た。


 興奮冷めやらぬなかで楽しい夢でも見るのかと思ったら、フラッシュバックのような、そんな一瞬で全てを見るような夢だった。


 彼と出会った影響だからなのか、それとも――



〇 〇 〇 。 。 。 。 



 これは定められた未来――


 赤と白で彩られた建物――


 その高層階、周囲には美しい夜景が見える――


 相対しているのは――誰?



『あなたがレイラ=フォードかしら……?』


『お前が――――か!』



 尋ねられた私は強い語気で相手の名前を叫んでいる。


 そこには黒と赤を基調として、レースやフリルが付いたゴシックロリータの服を着た女性が立っていた。目の下にはクマがあり、パーマのかかったミディアムヘア。


 こうサイを失った瞳がこちらをにらんでいる。


 私はどうして彼女と相対しているの……?


 ただ、彼女からは一生涯いっしょうがい――いや、死んでからもなお延々と続く因縁を感じる。


 それくらい私は彼女に対して強い憎しみを抱いているようだ。


 彼女が何かを話している。



 ――並行世界……? 世界樹……? レイラフォード……? ルーラシード……?



 聞いたことがない単語ばかりの、荒唐無稽こうとうむけいで馬鹿げた話だ。



 ――なんだこれは、わけがわからない。


 ――私の人生という名の『物語』は理解ができないまま終わってしまうのか?



 これはという警鐘けいしょうか――



〇 〇 〇 。 。 。 。



 これはただの夢、起きたらきっと全てを忘れてしまっているだろう。


 二度と思い出すことすらできない、ただの儚い夢なのだから……。

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