秦の誓い

Rona736

はじめに / 秦の誓い

秦の誓い

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「どうしてころもがないといおう


 君と綿入わたいれを共にしよう


 王が行っていくさおこされるのならば


 私のぼうみがいて


 君と王のあだを共にしよう」


詩経しきょう秦風しんふう無衣ぶい



 秦、というのは古くからある国として、各書に描かれています。孔子が編纂へんさんしたという『詩経しきょう』の中にも、秦風しんふう(秦の国のうた)という項目が立てられ、秦の国の民謡みんようがいくつかおさめられています。


 そしてその多くが、戦争の歌です。上にあげた詩はそのうちの一つで、王(ここではしゅうの王を指す)に従って、敵のために戦おう、そう呼びかけています。これは秦という国の、軍事国家としての特質を端的に表しているように感じます。


 秦の国を表す有名な文としては「秦の誓い」、『秦誓しんせい』があります。この文を『尚書しょうしょ』という古代の歴史書で読んだことはない人でも、朱子が編纂した『大学だいがく』(『大学章句だいがくしょうく』ともいう)で、この『秦誓しんせい』を愛唱されている人もいるでしょう。


 ぼくもこの文が大好きです。「己に才能がなくとも、人の才能を受けとめ、自らのもののようにする」(一介いっかいの臣、り,斷斷猗だんだんいとして他技たぎきも,その心、休休きゅうきゅうえんとして,それるるあるがごとし・・・。)そのスピリット、精神は、とても美しいと思います。


 この文の最後には、一人の力により国は隆興りゅうこうし、一人の力によって国は衰退する、そのようなことが書いてあります。


 先に述べたように、秦の国は強力な軍事国家でした。しかしその中心には丞相として国を率いる、優秀な家臣がいました、そのような人物が活躍する素地があったということを、忘れてはいけないと思います。


 もちろん、優秀な人材といっても、優れた武将や、法家ほうか(法によって人民を支配するという思想家)が主で、儒家の政治ではありません。しかし、人を生かそうとする、そして民を守ろうとする歴代の秦の君主や政治家の想いや、まなざしは、随所に見て取れると思います。


 これから、『資治通鑑しじつがん』の訳を中心にして、断片的にではあると思いますが、秦の歴史を追っていきますが、そのベースには、この『秦誓しんせい』のまなざしが、背景に、あちこちににじみ出ていると思います。

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