③サイクロプスの生態(中)
まず、確認しておこう。
サイクロプスは1匹か数匹の群れで行動する。
サイズは6m程度と巨人の中でも大きく、力も強い。
知性は低いが、岩や木を武器に使う程度にはあるらしい。
危険度はキマイラと同程度といったところか…。
ただ、闘うのではなく観察する分にはキマイラより楽だろう。
眼が一つしかないなら、見渡せる範囲は狭い。
それに人型のモンスターは獣型より嗅覚や聴力は劣ると聞く。
俺は適当な場所を見つけ、今回の為に用意した見た目が木に同化するカモフラージュ柄の外套をすっぽり被り、気配を消す。
漂う異臭の都合、少し距離は離れた位置だが問題ないだろう。
後は待つだけだ。
と言っても、人間と排泄の頻度はそう変わらないはず。
長くは待たないはずだ……多分。
俺は双眼鏡を準備し、サイクロプスの汚物溜と奴らの道を俯瞰し始めた。
一時間後…
来ない。
二時間後…
まだ来ない。
野生動物が食べ残しの肉を漁りに来ただけだ。
三時間後…
身体が凝ってきた。
辛い……帰ったらマッサージ行こ……。
それも可愛いお姉さんのいる店がいいな。
ンフフフ……
そんなことを考えていた時。
ズン……ズン……
重く響く足音と共に一体のサイクロプスが現れた。
双眼鏡を構え、観察を開始する。
どうやら、衣服は身に着けていないようだ。
知能が低いというサイクロプスには服は作れないし、人間から奪った服も体に合わない。
毛皮を纏おうにも体に合うサイズの動物などほとんどいない。
せいぜいが手で汚く剥ぎ取った熊程度のサイズの毛皮を噛んでなめし、蔓で体に巻きつける程度だろう。
また、頭髪が長く伸びて腰まではある。
知能的に髪を切れなく、水浴びも禄にしないので、奴らは常に汚く長い髪を振り乱している。
髪を切らないことは、個体の年齢を測れるという意味でもある。
こいつは大体、10才くらいか……。
伸びるスピードが人間と同じなら、だが。
まあまあの年齢だ。
人間にしては短いが、野生に生きるモンスターにとって10年は長い。
それは、ここら一帯の生態系の頂点にいるサイクロプスでも変わらない。
サイクロプスは巨体に対して小さすぎる眼で周囲を慎重に確認する。
それにしても、よく単眼で距離感を把握できるな…生物として不自然な状態ではないのか?
もしかしたら、サイクロプスもキマイラ同様に人が生み出したモンスターなのかもしれないな……。
サイクロプスは、安全を確認するとしゃがみこんで排泄を開始した。
う○こをモリモリ出しながら、周囲をキョロキョロと警戒し続ける。
奴らは目が一つしかなく、視野が狭いので大変だ。
途中、後ろの藪が音を立て、サイクロプスはビクッと目を見開いて振り返ったりしながらも排泄を終えた。
凶暴なモンスターにしてはかなり間抜けな光景だが、アイドル同様にモンスターも排泄はするし、人間型の生物は排泄中は無防備にならざるを得ないので、仕方ないことだ。
しかし、サイクロプスを襲うようなモンスターなんているんだろうか?
とりあえず、不意打ちを行うのであれば、単独行動かつ無防備な排泄中は狙い目だろう。
エドにはアドバイスしておこう。
排泄を終えたサイクロプスは立ち上がると、再び地響きを立てて来た道を戻ってゆく。
俺は見つからないよう慎重に後を追う。
しかし、これだけ盛大に地響きを立てて歩くなら、先に見つかることなんてなさそうだ。
わざわざ尾行しないで道を辿って住処に向かっても良かったな……。
サイクロプスの住処は大きな洞窟だった。
流石に中には入れない。
外から人数の確認をしようにも、暗くて見えない。
どうしたものか……。
石を入口に投げてみるが、反応がない。
洞窟の中にも投げても同様。
やはり音にはあまり敏感ではないようだ。
こんな時に魔法でも使えたら、暗視やら何やらで解決出来るんだろうな。
そうなんだよ、俺は魔法を使えない。
どうやら、前の世界で唯物的な行き方をしてきたお陰か、超自然的な力への素養がないらしい。
まあ、そんなことを言っていても仕方ない、他に方法はないか?
燻り出しは興奮させてしまい、俺が危ない可能性もある。
誘き出すのも、さっきの投石の結果からして難しいだろうし用意もない。
待つ…か…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます