第5話
次の日、9月16日火曜日の朝————時計の針ははまだ5時を指している。
ベットから起き上がると、俺は毎朝学校へと背負っているリュックを取り出し、支度を始めた。支度といっても教科書やらなどではない。今日に限っての特別な準備である。
全身を覆うことの可能な黒いフード付きで顔の隠せるコートに、サングラス、マスク。支度とはいっても準備物はこの程度……
っとまだ足りない物があった。そして最も重要なものでもある……
俺は親に気づかれないよう足音を抑えながら、キッチンへと向かった。そして棚から包丁を取り出した。包丁を持つことなんて小学校の調理実習以来だろうか。世界でウイルスが広まり、中学では調理実習がなかった。
目的の品を手に取ると、俺は自室へと向かった。そして、そこら辺にあった本の中に刃を差し込み、安全な状態にしてリュックへ入れた——
その後は家族が起きる時間まで二度寝をして過ごし、家族が起きるとそれに合わせて俺も起きた。そして朝食を取ると、6時45分に学校へ向けて家を出た。
最寄駅である中山観音に着くと、宝塚行きの電車に乗り込む。
車内は座席がところどころ空いていたので座席に着くと、俺は、これから行なう計画を脳内でシュミレーションした。
計画はこうだ。まずは通常どおり高校へと向かう。学校に着くと、普段からひと気のない北練の空き教室に入る。そして鍵を閉めると、今朝準備しておいた黒いコートを羽織り、サングラスとマスクを着用して誰にも俺だと気付かれないように変装する。このとき包丁を胸に忍ばせておく。その後、魔法石で9月8日の朝、白石さんの殺害された通りへ転移し、犯人が現れれば包丁で殺す。というものだ。現場に俺の証拠を残さないよう、十分に注意して行うつもりである。
ことを済ませればすぐに今日に戻ってくるので、おそらく誰にもバレずに犯人を殺害できるだろう——
※ ※ ※
逆瀬川駅からバスに乗り、10分ほど揺られ学校に着くと、俺はできる限りひと
4階のESS室。ここは年から年中鍵がかかっていない。かなり問題のようにも思えるが、おそらく誰かが鍵を無くしたのだろう。
7時40分。部屋に入ると、教卓のサイドにあった椅子にリュックを置いた。
そして、中から黒のコートを取り出し制服の上から羽織った。後はマスクとサングラスをつける。次に、本に挟んでいた包丁を取り出し、右手にもってコートの中に隠した。
あとは魔法石。これは左手に持つと、いよいよ準備が整った——
先週の月曜日の朝。9月8日の朝の白石さんが殺害された、通りの景色を頭の中で思い浮かべる。
時間は、俺と白石さんの乗った電車が宝塚駅に到着する、7時10分。
目を閉じると、窓から差し込む太陽光に照らされていたまぶたの後ろが、少しずつ暗くなっていった。次第に耳から入ってくる音も消えていった——
※ ※ ※
転移すると、大通りとこの通りをつなぐ、通りの入り口へと向かった。魔法石はコートのポケットへしまっておいた。歩いていると、前回ここへ来たときにいた黒いコートの男性を思い出し、ぞっとしたが、着くと前いた場所にはその男性はいなかった。おそらくこのままいけば、誰にも現場を目撃されずにに計画を実行できるだろう。
その後は5分ほど、下を向いて顔を隠した状態で待機した——
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