真っ白い殺人鬼

三輪・キャナウェイ/IIV編集部

目次

プロローグ

プロローグ

 夢や希望なんて、風船みたいなものだ。

 だから内に空想を詰めれば詰める程、風船はとても大きくふくらんで、高いところまで飛んでいき、割れた時に、より強烈な音が鳴るのである。

 こうして風船を割るのは、いつだってたいてい時計の針だ。この世で最も恐ろしく、風化や老いといった毒を持つこの針は、人の夢が詰まった風船をやすく割ってしまうのだ。夢や希望とは、こんな風に、そのほとんどが時間によって殺されるのである。

 もちろん、中にはこの毒針をとてもじょうに使う人もいるだろう。そんな人だけが、夢の風船が宇宙まで飛ぶのを守ることができ、だれからも見上げられるような理想になるのだから。

 つまり、何が大事かといえば、生きる上で時間というものは、使い方によって自分を殺す毒にもなれば、自分を強くする武器にもなるということだ。

 ただここで一つ気を付けなければならないのが、あくまでも時間が凶器であることに変わりはないということである。

 そして、それを上手に使うというのが、どういうことかというと、単純な話だ。

 星が輝く宇宙というのは、多くの人が見上げられるほど高く広いものであるが、それに比べて、そこに辿たどり着くまでの空という道は、ものすごく狭いのである。だから高みを目指すために、自分の夢や希望を風船に詰めようとすれば、他の人間が膨らませようとしている風船とり合うことになってしまい、とてもきゅうくつな思いをしなければいけなくなる。いついかなる時も、上を見れば星の数ほど理想があり、下を見れば砂の数ほど欲望があるこの世界では、自分の夢や希望を十二分に押し通すことなど、とにかく難しいのだ。

 そういう時にこそ、毒針を使う。


 相手の風船を、割ってしまうのである。

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