第18話 応戦

「それで、ここへきて一体何をしてほしいっていうんだいミケレ」


「殿下達にはここで数か月過ごしていただきたいです。追跡者が来る可能性が高いからです。そして現れた暗殺者を私たちがたたきます」


「その追跡者は誰なんだ」


「具体的には言えません」


 言っちゃたら干渉力に触れるからね。未来の私もこんな感じの感覚だったのかしら。非常にやりつらいわ。


「そうかわかったよ」


 あと気になるのが未来の私の動向かしらね。未来の私は果たしてどこに行ってしまったのだろうか。


 未来の私とは前回能力が発動した狭間の世界で別れてから、何も話しあっていない。彼女はあれから記憶喪失を治すことができたのであろうか。


 それが一番重要なことなのである。


「それでは屋敷に入りましょう作戦会議です」




「殿下を狙う追跡者の存在は実はここ数日で我々は察知していました。しかしながら殿下には情報を明かさない手筈だったのですが、ミケレ様が知っているようなので私の方から話させてもらいます」


「このお方は」


「僕の専属護衛のリーダー、アルフィだよ。王国随一の頭脳と剣の腕前を持っているから基本的なことは彼に任せているんだ」


「そうでしたか」


「しかしアルフィが僕のことでそんなに気を使ってくれていたなんて、なんだか申し訳ない限りだよ」


「いえ、とんでもありません。私としても殿下に情報を与えなかった決断をしたことを申し訳なく思います」


「いいよいいよ、全然気にしてないから。それじゃあ続けてくれ」


「はい、してその追跡者はいまだ行方がつかめず、気配だけのあいまいな存在であります。犠牲者も出ておらず、かなり監視の目も緩まっていたのですが、私としても非常にこの事態が怪しいと感じているのでした」


「ではミケレ様の推測はかなり信憑性を帯びたといえますね」


「はい」


「しかし時刻がわからないことにはどうしようもないと思います。一先ずはこの屋敷でゆっくりと過ごしますかね」


「そうですね」


「アルフィ達は引き続き周辺の見張りを頼むよ」


「無論でございます」


 はあ、随分と呑気な殿下ですわ。さて私はどこで待機を。


「どこに行くんだミケレ」


「え? 私も護衛さんたちと一緒に見張りを」


「いや、ミケレ、君は部屋で僕たちと一緒に過ごすんだ」


「え? 私が?」


 まさか私が殿下とエレメナの部屋で過ごすことになるとは夢にも思わなかったのである。








「こうして三人で並ぶの奇妙な感覚ですね」


「そうですか、私は別に、むしろいい気分ですよ」


「ははは、流石はエレメナだな」


「……」


 全く呑気なものですわ。この二人に関係性はイライラするものです。


「しかしながらミケレ様はどうして追跡者の存在を気づいたのですが」


「いやだからそこは言えない話でして」


「私のことも知っていますし、何か特別な能力をお持ちではなくて」


「え?」


 エレメナに確信を突かれそうになり私は驚いた。


「まあ、いいですよ。難しいことまでは聞きません。ただ私の中での疑問を勝手にした解釈で、相殺させていただきます」


「確かに特別な能力か、僕の方からもエレメナの意見で納得とさせてもらうよ。ミケレにはきっと何か凄い能力が備わっているんだろうね。僕からも詳しくわ指摘しないでおく」


「……それはありがたいです」


 なんですかこの二人は、凄いいいところをついてきますね。まあとても私にとって好都合なことだと思いますね。


「一先ず僕たちは普通に過ごさせてもらうよ。そうすれば自然と向こうからやってくるものさ。それにこのままここで住むのも悪くない、僕はエレメナとずっと一緒に過ごしたいと思っていたからね」


「で、殿下、そんな」


「……」


「あ、ああすまない、勿論ミケレとも一緒に過ごせて僕は嬉しいよ。最高の時間だ」


「本当ですか……」


 なんだか、ついでのような言い方で全く信用できないのである。


「しかし、あれですかミケレ様と殿下は以前どんな話をしていたのですか」


「え? えと私ですか。思えばあまり楽しい話はしていませんでしたね」


「そう、そうなんだよ以前のミケレは口を開けば地位名誉の話で、僕の嫌いなことばかりを話していたんだ。流石にうんざりだったよ」


「それは! だって殿下に対して敬意を払うのは当然のことではありませんか。敬意の上に私情を挟むなんて言うことは許されることではないと思います」


「でもそれはミケレの思うことじゃないか。僕はそんなことは望んでないんだ。まあミケレだけじゃないけど」


「それはそうですけど」


 殿下の思い通りに全てのことが運ぶと思ったら大間違いなんですが。


「ですが殿下、中々殿下に対して、そこまで本心で対等に向き合うのは難しい話ですよ。仮にも殿下自身は非常に高貴な御身分ですので」


「そうなのか、中々難しいものだな」


 その難しさのせいで私の心は傷つけられた、本当にとんでもない話である。


「ともかく僕は少し思い違いをしていたようだ。周囲の人が同じようなことしか言わないから、エレメナの自由な話し方はいいものだった。でもこれが重要だったんだね」


「そうですね」


「本当によかった。ミケレには本当に悪いことをしたね」


「その言葉をお待ちしていましたわ」


 やっと殿下からの謝罪をもらえていい気分である。


「一先ず今日はもう休もう」


 

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