第4話 タバコ吸ってもいい?

小竹本屋は、町の南にある半島にあり、これは国の境目で、海の向こうにはまた別の国がある。魚臭い花の香りが漂っていた。桟橋に立ち寄り、灯台の光が海を照らし、波は金色の服のひだのようにわずかに揺れ動き、うねっていた。


私はフードをかぶって、あごまでチャックを閉める。


「涼しいね、風が。」


「海に近いからさ。」そう言って、彼女はきれいに微笑んでくれた。


「次は大学でしょ。」


「うん。クリスティは、もう卒業したね。」


「クリスティって、」ニコリと笑った。「同僚との話し聞きしていたの?」


「いやいや、小耳にはさんだんだ。」私は恥ずかしい気持ちで頭を下げた。


「僕は、休学したよ。ヨーロッパでもう一度、学部の勉強をすることになる。」


風がクリスティのこめかみの髪を優しく拭いていた。頭を上げた彼女は、灯台をまるで存在しないかのように見つめた。


「いつ?」


「うまくいけば、今年の冬に。」彼女は顔を向け、私に暖かい視線を送った。「タバコ吸ってもいい?」


「構わないよ、私もタバコを吸うから。」


クリスティは体で風を遮りながら、私にタバコを手渡し、火をつけてくれた。


ありがとう、と私は言った。そして、腕時計をちらりと見た。


「あら、もうこんな時間か。地下の駅まで送っていくよ。」


「クリスティはどうなの?」


「僕の家はこの辺りだ。心配しないで。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る