第20話 援軍

 力を解放した貴資はすでに暗黒勇者砲の発射体制になっていた。

 くっ……こいつ開幕ブッパを狙ってやがった。

 章吾も胸部の勇者砲を展開しそこに腕を突っ込む。


「うっぐっ!!」


 中にある聖剣を抜き放った。



 そして、暗黒勇者砲が発射される。真っ黒な光束が章吾に向かって伸びてくる。だが章吾はそれを手元まで引き付けると聖剣を使い、カキーーンと野球のバッティングの要領で打ち返した。


「グギッ」(なにっ)


 反射した暗黒勇者砲がまともに貴資に直撃する。だが、反射した瞬間に貴資が威力を絞っていたのか、装甲の一部はひび割れるのみでそれほどダメージは無さそうだ。

 章吾は聖剣に魔力を込めると、追撃に移る。


「ケーーーーーッケッケッケッケ!!」(聖剣の力をみせてやる)


「グゲーーーーーッゲッゲッゲッゲ」(何だよそれ。ただの金属バットじゃないな?)


 膨大な魔力を得た聖剣は、勇者の膂力のみだけでなく、自らも加速して、貴資へと攻撃を加える。


 そのスピードは暗黒勇者の反応速度でも、裁ききれない。

 肉体の性能で拮抗していたからこそ、中身の面で有利だった貴資だが、聖剣の力を加えた章吾の攻撃はその有利を覆すほどの力を持っていた。


 章吾が何度も貴資を切り(殴り)つける。


 ゴンッ


 ガンッ


 ギンッ


 聖剣の攻撃といえば聞こえはいいが、傍から見ると金属バットでめった打ちにしているようにしか見えない。


「ゲーーーーーッゲッゲ!!」(くっ、賢者モンスター来い!!)


 不利を悟ったのか、貴資は援軍を呼んだ。

 第二貨物置場の隅に置かれた、トラックの荷台が開くと、その中には賢者モンスターとイチゴマークのロボットたちが入っていた。


「ギゲエーーーー!!」(加勢しろ)


「私は〝右手薬指〟のような存在だ」


 賢者モンスターが章吾に攻撃を開始しようとする。


「フリュームグラウ!!」


 だが、そこに膨大な量の魔力の本流が突き刺さった。

 第二貨物置場の入口に斬里華の姿があった。ドゥーリンダンテを砲戦モードにして、射撃姿勢をとっている。先ほどの攻撃は彼女のものだ。


「ギーーーーーーギッギッ」(ちっ、あの魔女っ娘ちゃんか)


 貴資が舌打ちする。


「ハヒーーーーッヒッヒッ」(お前もあの娘の事は魔女っ娘ちゃんって呼ぶんだな)


 その辺の感性は兄弟で同じらしい。



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