第23話 家族でご飯を食べるより友達と食べた方が数倍美味しいよ。

自転車に乗って数キロ先にあるいつものコンビニに着くと、いつものメンバーが夏野を待っていた。

自転車を止めて、肩を組んで夏野合わせて4人でコンビニに入った。

コンビニに入ると毎回のように今日は何食べると話すんだ。

夏野伊吹の友達を紹介しよう。

小4から中2まで引きこもっていて、最近髪を切り金髪にした戸田悠(とだゆう)、17歳。

夢は俳優になることだけど、学校で夢を馬鹿にされて学校に行かなくなり、留年した。それからタバコを吸っている事が見つかり停学にもなっている小森和無(こもりわむ)、風貌は黒髪でウルフカットで17歳。

最後に、伊吹と親友になった立木優仁(たちぎゆうじん)、15歳。彼には悲しい境遇も何もない。お母さんもお父さんも自分を好きで居てくれる。でも、親が両方とも共働きでご飯はいつも置いてあるものをチンして食べる感じだった。だんだん1人が嫌になり、夜出歩くようになった。たまたまいたコンビニで出会ったのが、今の友人たちだった。

そして、話は戻るが今日の遅い夜ご飯を食べる事にした。

立木優仁は夏野伊吹に聞いた。

『伊吹、今日は何食べるの?俺は今日はお腹空いてないから、たらこおにぎりかな』

『あー、今日はカレー食べるわ。今日、僕の家カレーだったんだけど、いつものように無視されたから』

『いやー、何回聞いてもお前の家酷すぎだわ。まあ、家族に愛されてても愛されていなくても酷さは変わらねえよ。まあ、俺は寂しさからここに来たけど、お前の場合は違うだろ』

『ううん、どっちかって言うと家が嫌いだからかな。あー、母さん消えてくれないかな。弟もうるさいし』

そんな話をしながら優仁は会計で俺が払いますと言って、伊吹の分も払ったのだった。

伊吹は千円を優仁に払おうとしたが、優仁は要らないと手を振り、今日は俺の奢りと言ってイートインコーナーに先にいた戸田と小森に合流した。

4人でご飯を食べている時が1番伊吹は落ち着くのだった。

いつまでも4人で居たいくらいだった。

和無は今まで聞きたいことがあったんだけどと黙食から口を開いて言った。

『お前のさ、弟の名前なんで育良っていうの?俺の名前も和無って変な名前だけどさ、お前の弟の方が変だよな。ずっと気になってて...』

伊吹はカレーのルーとご飯を食べた後に答えた。

『なんでって、きっかけは母さんがこれから先偉人になれるような名前を付けようって言うのと、海外でも通用する言葉が良いって言ってたな。それで、僕は伊吹になって弟は母さんも僕もそれに父もいくらが好きだから育良になった。ただそれだけのことだよ。逆に聞くけどわむはなんで和無なの?』

和無は笑って言った。

『俺の名前を付けたのは、ある有名な元俳優さんだった。お母さんが大ファンでその人に名前を決めて欲しくて手紙を送ったら、返ってきた手紙に大きく書いてあったのが『和無(わむ)』だった。由来は1行だけ書いてあった。何もかも全てを飲み込み自分のものにするってね』

それを3人は聞いていた。

すると戸田くんが言った。

『だから、その人みたくなりたくて俳優になりたかったんだね。納得だわ』

『オイ、なんでみんなにバラすんだよ。それは俺と戸田の秘密だってこの前話したじゃん』

『いや、私はみんなと共有してただ分かち合いたかったんだけど、ダメだった?』

『ダメじゃないけど、恥ずかしいんだよ。夢を話すとか小っ恥ずかしいつうか、この際だしお前らの夢も教えろよ。じゃあ、まず戸田から』

戸田くんは一呼吸置き言った。

『私は高校卒業したらどうするかはまだ考えていないが、とりあえず引きこもりから大学生になりたいな。それが、まず最初の目標だ』

それに続いて優仁が話した。

『俺は歌手になりたい。それも、1人でじゃなくてお前らと一緒にやりたい。どうかな?』

『僕はいいと思う。高校生でバンドマン、今しか出来ないことだと思うし、なあ和無さん、戸田さん、バンドやらない?』

戸田さんと和無さんは少し考えた後に言った。

『『じゃあ、3日待ってくれ』』

夏野と優仁は首を傾げて、なんでと聞き返したが向こうから帰って来たのは、理由は内緒だった。

そして、大体午前2時過ぎに解散した。

3日後に何があるのだろうかと少し気になったが、3日の辛抱だと思い夏野は自転車で家に帰った。

家に帰ると、玄関で育良が毛布に包まりながら寝ていた。

伊吹は育良を起こして言った。

『育良!そんなところで寝るなよ。僕のことは待つなって何度も言ったよな。いい加減にしてくれ』

声が大きかったのか、母さんが玄関に来た。

母さんは育良を見て言った。

『育良⁈何してるの?早く寝なさいって言ったよね。この子のことはほっと来なさい』

母さんは伊吹を睨みつけて何かを言おうとした。

伊吹は母さんに笑いながら泣いて言った。

『母さん....やっと、やっと僕のこと見つめて何か言ってくれる気になった?僕は母さんのことずっと見て話そうとしてたよ。僕が夜中出歩いていても何も言わないのに、育良の事になると僕と話そうとするんだね。もう眠いから、育良のことよろしく』

伊吹は足早に2階の自分の部屋に入って行った。

育良は母さんに言った。

『兄ちゃんのことは気にしないで。俺が兄ちゃんの代わりになるから、母さん....何も言わないで....』


弟の母さんへの愛情は歪んでいく出来事のひとつになってしまった。


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