強制!ラブコンティニュー

@daibutuhab_

第1話

「………ごめんなさい。」


「あの、琢磨くん、別れよ…」


「ごめん、無理。」


「いや、君に興味ない。」


「琢磨は友達としてしか見れない。」


「石本さん、ごめんなさい!!」


ーーーー


「デレレレデレレレデレレレデデデンデレレレデレレレデレレレデデデン〜…」


アラーム…いつもは流れる前に起きるのに…


「デレレーデーデレーデーデデデデーレンデデデデーレー」


ああ、今日は身体重い…起き上がらん…理性が眠いって言ってる…


「…現実常識教養に縛られ〜♪」


ああ、振られたショックで起きたくないって俺の本能がそう言ってる…


「組織の歯車僕もアンドロイド〜♪」


もう無理…今日は仕事休みだし、寝る。


「捧げ尽くしt」


俺は自室のベッドの上で横になったままスマホに手を伸ばし、アラームを止める。


「ぅ〜ん、さ、寝y」


突然ドアが勢いよく開かれた。はぁ…寝ようって最後まで言わせろよ……


てか…誰…ん……?やっぱり誰!?!?

俺はすかさず寝転んだままドアの方に振り向いた。


「お兄〜!もう8時なんやけど〜??」


………は?胡桃?


「ねわぁぁあああ!?!?え?なんなん!?なんで胡桃いんの!?え?おまっ!ここ俺んち!俺!一人暮らしなう!アーユーアンダースタンッ!?てかどうやって入った!!!」


もうごめん、パニック。朝起きたら実家の妹が知らない間にいて、一人暮らしの俺の部屋に勝手に入ってきて……


どうなってるん??


「お兄寝ぼけてんの?うち、昨日泊めてもらってるから今いるんやけど。」


???

昨日?思い出せ…昨日の記憶を……

昨日は確か…えっとー…仕事終わりに同僚の松谷と…二人で焼肉…で…………うん…確かその時に告ったな…うん、結果は……うん…経験上ダメ元だったけど、まあ…うん…キツイことに普通にダメだった…な。うん。んで、その後なんか…やっぱ気まずくなって…焼肉出てから駅まで送ったら一人でバチバチに飲んで…フラフラになって…あかん…その辺からなんか…ふわふわしてる…。


「お兄、昨日うち泊まるのママから連絡来てた癖に帰ってくるまで見やんかった上に帰ってくんのめちゃめちゃ遅くてついでにいうとなんかキモいぐらい泣きながら酔ってたやん?んで家入ったらベッドに猛ダッシュしてなんか言葉にならん感じのきーーったない声出してそのまま寝たんやけど。」


あっ、全てが繋がった。てか記憶ないとき、なんか…振られたショックの勢いとは言え…自分でも思っちゃうが…キモいな…


「お、おう、それはすまんな…」


確かこれで失恋何度目だ…?えーと…9回目や…なぁ…あかん、全部数えてちゃんと覚えてるのもキモい…


「んで、まあ、お前がいることはなんとなしに、理解はできた。だけど、もうちょっと寝させてくんない?ちょっと傷が…」


「え!?お兄どっか怪我してんの!?どこ!?」


なんか急に胡桃の顔焦りだしたけど…?

………あれ?もしかして、物理的に怪我したと思ってる…?


「お兄どこ!?どこ怪我したん!?見せて!!早く手当てしな!!消毒液どこある!?うち取ってくるから!ちょっとお兄じっとしとって!?」


………やっぱりか。違うんだ妹よ、これは傷は傷でも、失恋による心の傷なんだ…


「ち、違うんだ胡桃!!この傷は、目には見えないんだ!!」


まあ、流石に実の妹に失恋した心の傷を癒やすから…って理由は言いづらいからな。察してくれ…胡桃!


「お…お…お兄…おにぃ…?目に見えないって、それ、それ、まさか…」


おおおおう胡桃、察したのか…?いや、察したならそれでいいから!何も言うな!古傷をえぐるな!てかまだ傷ついて新しいから古傷にもなってない!!


あれ…?胡桃の顔、青くね…?


「まじでやばい系のなんか、骨折みたいな…なんか、ほんまに動けんやつ…?」


ちがーーーぁぅ…察しの悪い妹だこって…


「い、いや、まあ、あれだ、骨折とか、そういう物理的な傷ではないんだ。あの…なんていうか…心の……」


心の傷って言うだけならセーフだ!心の傷の原因が失恋と言わなければ良い!言わないだけで良いんだ!それだけで俺の自尊心は守られる!!


「お兄……?それって多分メンタル的にやられちゃってるやつ?」


ああ!そうそう!そうだ!!良いぞ胡桃!!原因までは聞くなよ!!


「まあ、そんなところだ。…あんまり深くは聞かないでくれ。」


よし!この会話終わり!もう寝る!!


「おにぃ…うち…ごめんね…ひっぐ…ひっ…そんなお兄のこと…なんも考えれんくて…」


いや、なんか…そこまで胡桃が泣くことじゃなくない?他人事だよ?ただの失恋での心の傷だよ?

………あれ…?これなんか…まだ勘違いしてる気が……しかも、なんか胡桃どんどん泣き方激しくなってない…?


「おにぃっ!うぢっ!しばらくこの家に一緒におるからぁっ!心の病院一緒に探そっ!!精神科どかっ!なんかうちはそういうのっ!あんま知識ないけどっ!!病院、ひっぐ、探すし、一緒に付き添うから!!ゆっくり!!治してこっ!!」


………うーーん、まずいねぇ。

あの、そういう結構ガチな病んでる系ではないんですけどーーー……あの、失恋した男はそっとしておくって、聞かなかったのーー?てか、そもそも胡桃は俺が失恋したっていうのを知らないのか…なんなら間違った方向に勘違いしてるからなぁ…うーん…これは…もう、しゃあない…最終防衛ライン…崩す…それは…嫌だ…


「あのな?胡桃?落ち着いて、めちゃめちゃ落ち着いて聞いてくれ。」


「なにぃっ、おにぃ…うちっ、おにぃの話ならなんだっで聞ぐょ…?」


もう泣きすぎて2割ぐらい何言ってるかわからん。


「あのな、お兄ちゃんな…?心の傷は心の傷でも、まだ病院に行かなくて全然良いし、それに関しては元気なレベルだ。だk」

「おにぃのばかあっ!!」


あらーこの子話遮っちゃったよー…俺の話だったらなんだって聞くんじゃなかったっけー?


「あのね?お兄?まだ大丈夫で放置してたら取り返しのつかないくらいどん底まで病んじゃって、もう元気になれなくなるかもしれないんだよ?…だから病院行って治そ?」


おおおおおお……察しの悪すぎる妹ぉぉ…

なんなの?嬢ちゃんのお察しレベルはその辺のなんか赤そうな機械で宙を駆けてるような人の言う「坊や」レベルなの?


「あぁ…えっと…そうじゃない…んだよなぁ…」


ブー ブー

なんか、めっちゃ突然、スマホ鳴った。

…え?あれ…?こんな例え出したから国のお偉いさんの息子の怨霊かなんかからの呪いのメッセージかなんかなの?


「お兄、スマホ鳴ったよ。見やんの?」


「ああ、別にいいかな」


今寝たいし、後で見るわ。


「お兄、もしかして…!」


お?やっと失恋まではわからないにしても、なんか触れたらやばそうな感じみたいなのは察するところまで行った?


「お兄…スマホ見ないって…」


ん?


「そんなに…疲れてたんやね…」


そうそう!お兄ちゃん疲れてんの!すごいよ!胡桃今のところ合ってるよ!!


「SNS…」


「……は?」


「いや、だから、疲れてたんやろ…?SNS、ネット。」


やっぱりかぁーーーー。間違っとるんよぉぉーーー。


「じゃあお兄スマホ見やんやろうし、うちが預かるね。」


「おう」


まあ寝てる間にスマホが家の中のどこに行こうが、まあなくならなければ大丈夫だろ。胡桃が持ってるって言うし。


「じゃあお兄ゆっくりしててね。うちもゆっくりしとくから。」


「ああ。」


会話が終わると、胡桃は静かに扉を閉めた。よし、寝よ。


バァァァン!


ん?また開いた?扉が…?いや、さっき確かに胡桃が閉めた…


「お兄…」


「ん?今度はなんだ胡桃?お兄ちゃんは眠いn」

「お兄、預かったスマホの通知のメッセージ見たんやけど。」


あー、そういや、まあ、誰にも見られんもんで普通に通知メッセージとか隠してはなかったなぁ…


ん?…待て…待てよ?


「お兄…?」


恐る恐る、俺は次の展開が最悪の場合にならないように祈りながら胡桃の方に振り向く。


「お兄、これさぁ、会社の人やんな?なんか…振られたらしいな!ドンマイ!って書かれてるんだけど、まさかお兄の心の傷ってこんなしょうもないこと?」


うへぇ…胡桃さぁん…オーラが赤い赤い、そんな動きが○倍になりそうな剛なもん出すのやめときなってぇ…

んで最終防衛ラインちゃっかり突破されたし…


「……まあ…そう…だ…な。」


「………ふぅぅぅん?くっだらな?そんなことで心の傷作ってどうすんの!はよ飯!うちお腹すいてんねん!!心配してめちゃめちゃ損したわ!!」


「ちょちょちょちょ!ごめんて!朝も作るから!!」

後その赤いオーラまじで○掌波出そうだから抑えて!?それパチ○ロだとほぼ即死だから!!


「はよしてな!!もう8時半になるから!秒で作って!秒で!」


「はい!!今すぐやります!!」

もう赤いオーラ見えたら寝てるどころじゃないんよ、命の危機なんよ…!!連チャン終わるんよ!?


ってことで俺は跳ねるようにベッドから起きて台所まで競歩にも見える早歩き。


「まあ、胡桃怖いし…ささっとやるかぁ…」


俺はそそくさと食パンにバター塗ってトースターにぶちこみ、毎日作っているが故に手癖で目玉焼きとウインナーを焼き、塩こしょうをかけて、皿に乗せる。


「はいよ胡桃。」


テーブルに座っている胡桃に飯を出す。


「あい。いただきます。」


「おう、食え。いただきます。」


「んで、胡桃、またなんで実家からこっちに…」


「ちょ、お兄!!!」


なんか胡桃急にキレだしたんだけど…


「おうどうした?」


「この目玉焼き、塩こしょうやん!!外道や!!」


おう…そうか…


「おい胡桃!外道とはなんだ外道とは!塩こしょうは確かにソースと醤油のツインタワーに比べると人気投票では負ける確率は高い!だがしかし!塩こしょうだって頑張ってる!んでもって塩こしょううまいやん!なんか問題があるんか!!んでもって人様の出した飯に文句言うな!」

でもキレるよ?塩こしょうを否定されたは俺はキレるよ?例え可愛い可愛い世界で一人の妹がソース派でも醤油派でも、俺はキレるよ?


「お兄はなんっにもわかってない!!ほんまになんっにもわかってない!!」


「おうおうそうか!わかりあえないんだな!!ならば決闘だ胡桃!!」


「わかりあおうとせんのはお兄やんか!!もうええわ!ほんならもう決闘したるわ!行くで!覚悟はええねんな!!お兄でも容赦せーへんで!!」


「おう!行くぞ胡桃!」


石本流 決闘の儀式


「んじゃ、胡桃、準備できたな?」


「うちはいつでもいけるで、かかってきーな、びびっとるんお兄?」


「おうおう、それなら行くぞ!」


「「最初はグー!!」」


そう


「「ズルしちゃクズよ!!」」


石本流 決闘の儀式


「「じゃんけん ぽん!」」


じゃんけん。


ーーーー


「はぁーー…まさかこっちでも胡桃に負けるとは…」


俺、敗北。

実家からカウントすると178連敗。


「うちの勝ちやから、うちのとお兄の目玉焼き、味変すんで。」


「おー、それは決まりだ、勝者が我を通せ。」


しかしなんで胡桃にはじゃんけんでこうも負ける、負け続けるんだ…まさか不正か?ズルしちゃクズよだぜ?クズなんだぜ?いいのか胡桃…?いや、してるとは限らん…しかしあの勝率はなぁ…


「お兄できたよ。」


「おう…」


………ん?


「おい、胡桃」


「なに?」


決闘で勝った私にまだなにかあるのか?と言いそうな顔でこっちを見る。


「これは…何がかかってるんだ…?」


そう、俺は目玉焼きにかけられた調味料が皆目見当もつかないのだ。塩こしょうより有力な醤油でもソースでもない、こんな色の調味料、うちにはない。


「え?お兄、知らんの?嘘やろ…?」


え、なに、この調味料そんな常識的なものなの?


「あ、うん、すまん、知らん。」


「お兄、かけたことなかったっけ…?」


知らん言うたのにかけたことあるわけなかろう!


……いや…?この色、実家で見たことがあるような…!?


「まさか…!」


いやしかし、それは目玉焼きにかけるものではないと思うのだが??少なくとも俺の経験では一度もない。


「そう、これは…」


やめろ、やめてくれ、それ以上は俺の頭の中の常識という名の平和が警報を鳴らす…!だから!胡桃!それ以上は!言うな!!頼む!!口が裂けても言うn

「ごまだれ」

言ったーーー、この子、言ったーーー


俺の脳内ワーニングだよ〜?もうボス部屋入っちゃったよ〜?倒さないと出られないよ〜?


あぁ…なんか……左上に…ゲージ…見えるなぁ…


特殊武器の塩こしょうさっき取られたから今バスターしかない…ってかバスターすら撃てないよこの身体。


「お兄何ぼーーっとしてんの?はよ食べてな、うまいんよ?ごまだれかけた目玉焼き。」


「お、おう…食べるわ…」


いやあれよ〜…どれだけ言われても初めての目玉焼きごまだれ味は怖いて、チャレンジやて、もうそんなちょんまげつけたロボットが踊ってるようなエンディングのタイトルにつくはじめてなんてどれほど純粋で優しかったかってのが身に沁みてなんか泣けるぐらい伝わってくるよ〜…


「お兄はよ食え!」


いつまでも食わない俺に痺れを切らした胡桃が俺の口に目玉焼きごまだれ味を突っ込んできたぁぁぁ!!やめろぉぉ!!俺のごまだれ版目玉焼きバージンがこんな形でぇぇ!!別にそのバージン失う予定なかったけどぉぉ!!


「ん…………うま…。」


んで塩こしょうよりもマイナー感が否めないのに何気にちゃんとうまいのほんまに…


「うまいやろー?」


なんなのか知らないが胡桃の笑顔、起きてから一番淀みのない晴れた笑顔である。そんなにごまだれ好きだったのか…すまん、胡桃…お前がそんなにごまだれに心酔してるとは知らずに、俺の塩こしょう目玉焼きを押し付けるように与えてしまってっ…!

胡桃にはラブラブで毎日貢ぎたい程に愛してる「ごまだれ」という彼氏がいるのに、俺が無理矢理その仲を「塩こしょう」と言う胡桃に見合う男と勝手決めつけてお見合いさせようとっ…!一歩間違えれば浮気になってたっ!!あんなにも妹が愛しているごまだれ君を信じられなかったっ!!そんなんじゃ俺は…俺は胡桃の兄として失格だ!!


「胡桃。」


「お兄、急に正座して、どしたん?」


「すまなかった。腹を切る。」


「・・・は?なんで?」


「お前は……彼氏のごまだれ君を心から愛していた…だが俺は、親の決めた政略結婚かのように、彼氏がいる胡桃に、塩こしょう君という男をお見合いさせてしまった…胡桃の気持ちを踏みにじった…これは…俺の罰だ…止めないでくれ…胡桃。」


「お兄…?え…?」


「最後に一言、残す。胡桃、俺は胡桃を大切な家族として愛していた。俺はもう腹を切る。しかし、胡桃、お前はごまだれ君と幸せになってくれ…!ごまだれ君…すまなかった、胡桃を頼む。」


「お兄」


「胡桃!止めないでくr」

「とりあえず聞けや!!」


「は、はい。」


「お兄、アホなん…?んでそこまでやばいって………やっぱり、病院、行く…?」


「……え?」


「ごまだれって、ただのドレッシングやで?目玉焼き以外はサラダと冷しゃぶぐらいにしかうちもかけんぐらいに、ただのドレッシングやで…?」


「………あ」


そうじゃないか。


ごまだれって……


人間じゃ、ねえじゃん…


あれだわ、本日最大の気づきだわ…


「そう、だったな……うん。なんか、取り乱して、マジで、おん、すまん。」


「いや、別に、お兄が死なんのやったらまあそれでええんやけどね。」


まあ、そりゃ…調味料ごときで…死んでたら…ねぇ?


「いや、でも普通にうまいな。ごまだれ。」


「せやろせやろ〜!お兄にも食べてほしーて家から持ってきてん!」


あー、だからうちの調味料棚になくてもいけたのね。


「まあそれで、お兄、振られたんやんな?」


「ゴブッ!」


すごいできたてホカホカの傷をえぐり散らかしに来るやん…


「ま、まぁ、そうだな…」


「お兄ってさ、なんでそんなに振られんの?ほぼ振られてない?」


うへぇ…悪意が微塵も感じられないピュアピュアな疑問の視線をものすごく感じる…


「あのなぁ、それに関しては、まじで知るか!俺が知りたい!!」


「いやぁ〜、お兄のことを振るんはアホ極めとるわ〜」


「おうおう、そんなこと言ってくれるのは胡桃だけだよ。冗談でも慰めにはなるくらい嬉しいぜ。」


すると胡桃が座ってた椅子から急に立ち上がる。


「冗談ちゃうよ!!お兄のええとこめちゃめちゃあるやんか!!数えだしたらきりなさすぎて寿命迎えるくらい!!」


「お?まじで?例えばどんなとこよ?2個か3個ぐらい教えてくれよ。」


「え、えっと、それはぁ…あんなぁ…」


めっちゃもじもじするやん。


「あれよ、別に冗談でも全然良いから。ありがとな。」


「ちゃうもん!…お兄は……顔もめちゃめちゃイケメンやし、いつも元気で明るくて、頭もええから!…今回はその3つだけにしとくわ!!」

バチバチに顔赤いやん…?…え?ついに剛のオーラ、顔まで纏ったん…?それってもう○掌波3秒前…?え…命終わる…?


「お、おう、いや、妹とは言え嬉しいこと言ってくれるじゃんか。いや、ほんとにありがとな。胡桃が妹じゃなかったら、俺、胡桃のこと好きになって告ってたかもしれないな。」


「ふん!お兄はもっとうちに感謝してうちをずっと見てればいいのに他の女の人を追いかけては蹴られ追いかけては蹴られの繰り返しやから、もううちしか拾わへんのちゃう?」


「おう、ほんとに誰も拾ってくれそうになかったら老後に頼むかもしれん。だから胡桃もいい男探せよ?」


「…お兄キッモ……先食べ終わったわ、ごちそーさま。」


そう言って胡桃は食器を運びにいった。


……えぇ?俺なんか失言したか…?


「お兄の……ばかたれ……」


ん?あいつなんか言ったか…?聞こえんかったんやが?


「なんか言ったかー?」


「なんもないっ!!」


なんかめちゃめちゃ怒ってるなぁ…

あ、そうだそうだ。


「そういえばさっき聞きそびれたんだけど、またなんで実家からこっちに一人で来たんだ?」


食器を洗っていた胡桃の手が止まった。


「え?普通に大学の夏休み入って、特に今年はやることなかったから気い付いたらお兄のとこ来てた。」


「お前なぁ…」


昔から俺のところに来るときは毎回この理由だ。お前の帰巣本能は家じゃなくて俺なのか。


「あ!でもこっちで行きたいとこはあるよ!!だから今日はお兄を起こして連れてってもらおうと思ってたし!!」


「あぁ、そういうことね…」


帰巣本能ではなく、メインがあるのね…兄としてはものすごい安心したよ…


「じゃ、俺も食ったんでごちそうさん、んでどこ行きたいんだ?」


「ここー!」


胡桃はどこぞやの旅行のガイド本の1ページを見せてきた。これ、どこの本だ…?る○ぶじゃなかったらまた決闘始まるぞこれ…おいどこだ…?


そう思って石本流決闘の心の準備をしながら恐る恐る表紙を見ると……


よし、ちゃんとる○ぶだな!平和的解決に至った!


「お兄?ちゃんと見てる?」


「ん、ああ、すまんすまん、今見るわ。」


俺はその本の指定されたページを見た。


「これは…あれか?ちょっと行ったらある、ドチャクソでかいあの駅か?」


日本の顔のその駅は、まあこっちに住んでなかったら行きたくなるんだろうな。


「そう!ここ行きたいんよ!!お兄おらんかったらうち迷うから連れてって!!」


胡桃がお願いします!みたいな感じで頭を下げてる。まあそれだけ行きたいんだろう。


「まあ、そのくらいなら全然、よし、準備したらすぐ行くぞ。」


胡桃の顔が昔の白熱球よりちょっと眩しいくらいぱあっとした感じで明るくなった。


「うん!ありがとうお兄!」


よっしゃ、じゃあ準備しよ!


「よし!俺、トイレ行くわ!」

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