第5話 次の休み時間


 2時間目の授業。


 一輝は前の授業よりは集中して受けることができた。その理由は、やはり羽矢と共通の趣味に関する雑談に勤しめたからだろう。羽矢との会話で一輝の心はどちらかといえば、明るいものに変化した。そのため、授業に耳を傾け、ノートを取る余裕も生まれた。


 一方、ある女子生徒が階段を上がり、一輝のクラスが設置されるフロアに到着する。


 その女子生徒は、雪のような純白の肌、ツヤある白のロングヘア、透き通ったネイビーの瞳、整った高い鼻、小さい桃色の唇など、特徴的な部分が多く存在する。その上、見たからに優しそうな顔つきをしている。


 女子生徒の名前は与田莉菜(よだ りな)。


 莉菜は西城高校でも、指折りの美少女と謳われ、羽矢と並んで西城高校2年生の2大巨頭に君臨する、きれいと可愛さを併せ持った女子生徒だ。


 そのため、莉菜は羽矢と同様、学年関係なく男子生徒達から告白を何度も受けている。驚くことに、入学時から留まることはなく今でも頻繁に告白を申し込まれる。


 しかし、莉菜も羽矢と同様、すべての告白を断っている。羽矢とは真逆で優しい口調で丁寧に。


 莉菜は足早に廊下を通過し、一輝が身を置く教室に到着する。


 莉菜はその教室の戸を開き、室内全体に目を通す。ある人物を見過ごさないように。


 一方、一輝のクラスメイトのほとんどは莉菜に視線を集中させていた。


 その要因の1つとして、教室の前の戸がいきなり開かれ、しかも教室に足を踏み入れた人物が西城高校の2大巨頭の1人である莉菜であったことが挙げられる。


「かずくん!」


 莉菜は一輝を見つけると、彼の席にパタパタと小走りで駆け寄る。


「え!?莉菜!?どうしてここにいるの?」


 一輝は莉菜を視認するなり、思わず驚嘆した声をあげた。


 一輝は休み時間に突入した瞬間から、ライトノベルに身を投じてたため、教室の戸が開いたことも知らなかった。当然、戸を開けた人間が莉菜である事実も存じなかった。


「もぅ!なにその態度!!まるで私が来たらダメみたいな反応して〜。私とかずくんは幼馴染なんだからこれくらいダメなの?」


 莉菜は頬をぷくっと膨らませ、不満気な顔を形成した。だが、顔は美しいままだった。


「ご、ごめんごめん。そんなつもりで言ってないよ」


 一輝は莉菜を不快にさせたと感じ、焦りながら素直に謝った。


「本当にそうなの?」


 莉菜は怪しむように一輝にジト目を向けた。


「おいおい・・。まじか。さっきの聞いたか?」


 一方、周囲は大きくざわつき始めた。


 男子女子関係なく多くの生徒達がちらちらと一輝達を見ながら、言葉を交わす。


 クラスメイト達は、莉菜のビッグワードに対して驚きを隠せずにいた。その上、ある事実も認められないでいた。


 そして、その傾向は女子生徒ではなく男子生徒に強くあった。


 クラスの陰キャである一輝と学年の2大巨頭である莉菜が幼馴染であるという事実が認められない傾向が。




⭐️⭐️⭐️

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