「スガワラ・ユタカ」について

 本作の主人公「スガさん」ことスガワラ・ユタカ。


 年齢は25。身長は170より少し高いくらい、細身の体型をしている設定。大事な局面ではよくスーツを着用します。


 外見に関する彼の情報は、ほとんど本作に登場しません。


 もちろん、本編の大部分を彼の主観が占めている、側面はあるのですが、意図的に情報を減らしています。



 これは、日本人の彼を身近な誰か、もしくは自分自身に置き換えて物語を見ていってほしい考えからです。ゆえに彼の外見を特定する情報を少なくしています。


 物語の後半で彼自身が心の内で語るように、いわゆる王道の物語でいうと、彼は「主人公」にはならないでしょう。

 筆者的には、RPGで本編に関連するサブクエストに登場するくらいの人物、といった位置付けです。



 ただ、当然ですが人にはそれぞれの人生があるので、主観をどこに置くかによって「主人公」は変わります。


 RPG風の世界ではありますが、まったく戦えない主人公がいてもいいかな、と思い、ほぼ戦闘力0の設定になりました。


 自称「ツキノワグマに遭遇したら腰抜かす」主人公です(笑)。



 世間で社会人3年目は、人生についていろいろ悩むタイミングと言われています。そういった意味合いから25歳という年齢設定になりました。


 基本的には、頭で考え行動に移す、論理的思考型の人のようですが、後先考えず行動することやその場の勢い任せで行動することも多々見受けられます。

 本質は、直感型の人間でありながら、思考型への憧れがある人間、といった感じでしょうか。


 仕事上の経験から、一人称は常に「私」。話し方は基本的に丁寧ですが、やや他人行儀です。

 ただ、話し方についてのみ、第7話「ケの日」を境に若干の変化が見られるようになります。この話を機に、周囲の人間に心を開いていこうとします。



 彼自身無自覚に、実は魔法を使っている、という設定は、筆者として入れるか入れないかを相当迷いました。ただ、異世界転移における「言語の壁」をおもしろいかたちで消化できる妙案と思い、採用しました。


 そこが判明する前の、ラナンキュラスが「お腹空いていませんか?」を連呼するシーンは、筆者的にこの物語の薄気味悪いシーントップです(笑)。



 本編中盤までは、元々いた現代社会での「都合の悪い記憶」はすべて消えており、単なる運の悪いサラリーマンといった感じになっています。

 彼と同じく、転移した人間「ブリジット」との出会いによって、ほぼすべての記憶が覚醒、彼がなぜ元の世界に戻りたいと思わないのかが明らかになります。



 この物語は、酒場に仕事の依頼主が訪れる限り、永遠に続けることができる内容です。ゆえに、なにをもって「完結」させるか、非常に悩みました。


 元の世界に帰りたい願望もなく、彼が異世界全体の危機を救うような展開も想定しにくい。

 それらを加味し、彼が新しい世界を晴れた気持ちで生きるためにはなにが必要なのかを考えました。


 結果、自分を助け、生活をともにするうちに想いを寄せていくラナンキュラス、彼女の想いに応えることがスガワラの生きる道になると思い、最後の結末が決まりました。



 筆者としては、第11話「漆黒の意思」にて、まものに襲われる瞬間に短剣を抜いたシーンは今後を含めて彼の生涯最大の勇姿となるのではないでしょうか。



 物語終盤、ラナンキュラスの主観からなる話や、スガワラとトゥルーの会話から気付いた方もいるかもしれませんが、実は本作の話は、スガワラが存在しなくてもある程度成り立つようにできています。


 ラナンキュラスの魔法使いとしての内面的葛藤と心の傷は、時間経過と共にある程度癒されており、トゥルーはスガワラに明かされなくても、いずれ真実を語っていたでしょう。


 ただ、筆者はこれを「材料の揃った料理鍋」、と捉えていました。材料はすべて揃っていますが、火にかけないと食べられない状態です。

 動き出す「きっかけ」がない。そして、すべてを動かす火付け役、いわば「トリガー」の役割を担ったのが、本作のスガワラでした。


 そういう意味で、彼自身は地味な役回りでしたが、十分「主人公」としての役割を果たしてくれたと思っています。



 物語のなかで幾度か「間奏」として、彼の日記を紹介しました。日記の書き出しは必ず、「×日目」であり、彼が異世界へ転移してきてからの経過、という様式をとっています。



 一方で、最終話の日記に限り、「×月×日」の表記に変わります。(異世界での暦表記に関しては保留にしてます笑)

 本編としては「最後の日記」になるのですが、主人公スガワラにとっては転移してきた人間ではなく、異世界の人間として書き記す「最初の日記」となっています。「.」は、ペン先を置いた「書き始め」をイメージして残しました。


 最終話にしては不思議な終わり方に感じたかもしれませんが、あの日記含めて筆者としては幸福の花は静かに笑う」は完結となります。

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