第17話 それぞれの決着(前)-2

 剣士ギルドのトップであると共に魔法使いとしても「超」がつくほど優れたシャネイラさんだけは、ボクが魔法の力を使い分けていることに気が付きました。


 彼女は魔法学の研究者としてもその名が通っており、セントラルによく出入りをしていました。そして、ボクの特異な能力に興味をもったようです。


 ボクは彼女に、目に映る精霊の話をしました。この話を誰かにしたのは何年ぶりだったでしょうか。この人ならひょっとするとボクと同じように、普通は見えないものが見えているのではないかと思ったからです。


 ですが、残念ながらボクの予想は外れたようです。シャネイラさんは理解こそしてくれましたが、を見ている人ではなかったのです。


 彼女はセントラル卒業後についてよく相談に乗ってくれました。いくつかの魔法ギルドから推薦の話はきています。セントラルの教授からは、ここに残って研究職として生きる道も提示されていました。


 ボクは漠然と「魔法使い」として生まれもった力を活かしたいと思っていましたが、それをどう活かすか具体的に考えられていませんでした。



 シャネイラさんはボクにこう言いました。


『あなたの才能ならどこに所属しようと並みの魔法使いでは到底及ばない活躍をできるでしょう。ですが、眠らせている力を真に発揮したいのなら私の元へ来るべきです』


 彼女の言葉は胸に響くものがありました。セントラルの教授ですらもボクが力を制御しながら魔法を使っていることに気付けなかったのです。


 シャネイラさんは、僕の才能の唯一の理解者とも言えました。



◇◇◇



 ボクの眼前に人はいません。燃えさかるフレイムカーテンの炎が少しずつ力を失っていきます。後ろにはカレンが、シャネイラが……、街を守るために戦ったたくさんの人たちがいます。


 視界に無数の光が――、精霊たちの姿が見えます。この光景を意識して見るのはいつ以来かと思いました。ずいぶんと久しぶりですが、それでもきっとボクの要求に応えてくれるはずです。


 炎から飛び出してくるまものの姿が見えました。もう触れても燃えないくらいに力が弱まっていたのでしょう。


 カレンがなにかを言っています。


 きっとボクに下がれと言っているのでしょう。


 けど、ボクはここを動かない。


 この状況で目を瞑り、極限まで心を落ち着かせ、問い掛けます。


『精霊よ、ボクに力を貸して……。いいえ!! もてる力を根こそぎボクに貸しなさい!!』


 目を開いたとき、真っ黒な塊が視界を包もうとしていました。だけど……。



「 カタストロフッ!! 」

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