第4話 花の闇(後)-3
私は目的の場所近くで見かけたローブ姿の人を追いかけて、小さな脇道に入っていった。
今日私がサージェ氏を振り切って、単独で動いたのは、思いついたのがたまたま「今日」だったからだ。
最初、その姿を見かけた時は気付かれないように大きく距離を開けて跡をつけた。しかし、脇道を曲がったところで急いで距離を詰めた。ここで見失う訳にはいかなかい。同じ脇道に入って進んでいくとローブをまとった人の姿があった。
そして、その前に立ちふさがるようにいるカレンさんの姿。この光景で、私は自分の考えが的を射ていたことを確信する。
だが、それは決して喜べるような事態ではなかった。
「私はまだなにもわかっていません……。ですから、わかるように教えてくれませんか?」
私は大きな声を発した。静寂の夜に私の声はよく響く。もうここまできたらサージェ氏に見つかるとかはどうでもよかった。
ただ、今目の前にある状況に明確な答えがほしかった。
それが他のなによりも優先された。
続けての一言がなかなか言えなかった。喉が締め付けられているようだった。いいや――、無意識に次の一言を発するのを拒んでいるのかもしれない。口に出すことで現実を受け入れるのを恐れているのだ。
私は拳を固め、2度ほど自分の太ももを叩いた。そうやって自分を奮い立たせるようにして次の一言を発する。先ほどと同じくらいの声で言ったつもりだが、その声は、とても小さく……、かすれたものとして発せられた。
「教えて下さい……。ラナさん」
振り返ったローブの人の、わずかに見える口元には見慣れたUの字に曲がった唇が浮かんでいた。
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