テイマーの傷心家族旅行
闇夜の住人
プロローグ リベラ
第1話 日課の巡回
辺境の村リベラ。人口200人ほどの小さな村だ。教会や冒険者ギルドといった建物は無く、農業や狩りで細々と暮らしている。
王都アルファニアから見て南東に馬車で二週間くらいの距離に位置しているその村は南に広がる悪鬼の森を監視する役目があった。悪鬼の森には多くのダンジョンがあると言われ常に魔物の大発生…スタンピートの危険性がある。
その森を巡回する狩人。それが俺『マーク・ベイガン』の仕事だ。
今日も相棒のレッドスライム『アカネ』と一緒に森の巡回をしていた。
「………あっちか」
スキル『気配察知』生き物の気配を感じるスキルだ。ある程度の小動物も感知してしまうので使いこなすには慣れがいる。
悪鬼の森の浅い場所ではゴブリンやウルフ、たまにオークがいるくらいだ。スライムもいるが益獣なのでスルー。
『気配遮断』『隠密』『忍び足』といったスキルも併用しつつ魔物っぽい気配があった方向に向かって進む。
(ゴブリンか…ハズレだな)
少し開けた場所にゴブリンが5体。食用にならない獲物はハズレ。しかし、ゴブリンは繁殖力が高く、スタンピートの原因にもなるらしいので倒さねばならない。気配を殺しながら8メートルくらいまで近づく。
懐から投げナイフを取り出し隙を窺う。
『ゲヒャヒャ』
耳障りな高い声を出しながらゴブリン達が動き出した。進行方向は俺がいるほう。近づかれすぎたら面倒だと判断して木の影から飛び出す。
『ゲヒャッ!?』
急に目の前に現れた俺を見て硬直するゴブリン。一番前のゴブリンを狙ってナイフを投げる。肩に突き刺さったナイフ。奇声を上げて転がる。
(残り4体)
転がるゴブリンを戦闘不能と判断して腰に下げていた手斧をとる。他の4体が距離を詰めてきたので近接戦になるだろう。
一番早く攻撃をしてきたゴブリンの棍棒が足を目がけて振り払われる。バックステップで距離をとり斧を投げる。腹部に刃が当たり派手に血と贓物をぶちまける。
(3)
2体同時に跳び掛かってくる。俺の手に武器は無いので右に跳んで回避する。地面を叩く2体。すぐに追撃しようとしてくるが俺が飛び出してきた木の影からの火球によってまとめて燃やされた。アカネの魔法だ。
(ラスト)
残り1体は他がやられた事により逃げ出そうとしている。慌てずに懐からナイフを出して投げる。背中に深々と刺さった。丸焼きになった2体は絶命。斧を腹部にくらったのも既に死んでいる。斧を回収し、ナイフが刺さって藻掻いているゴブリン2体のトドメを刺す。
「…ふぅ。怖い怖い」
ナイフの回収をしながらアカネにゴブリンの処理を頼む。丸焼きも含めて食べてくれるだろう。ナイフの血を拭っていると空中に文字が浮かんでいるのに気づく。
「…ナイフ。ランクD?」
このナイフの詳細のようだ。なんでこんな文字が…?周りを見てみる。
グレート ゴブリン レベル6 死亡
パワード ゴブリン レベル8 死亡
アカネ レッドスライム レベル118
「…ゴブリンの名前が強そうだ。それにしてもアカネのレベル高すぎじゃね?」
アカネを持ち上げてジッと見てみる。
火魔法B 風魔法D 魔力増強B 気配遮断 隠密 気配察知 膨張 収縮 吸収
「なるほど。よく見たら更に詳細が…ってアカネ強くね?」
アカネは俺の手から抜け出してゴブリンの処理に戻る。のんびり食事?をしている姿はとても強そうには見えない。
いや、そもそも118って強いのか?ゴブリンが低すぎるだけで普通は100くらいあるんじゃ…などと考えているとふと閃いた。自分を鑑定してみればいいのではなかろうか?
「ん~……」
自分の手のひらを見ながら鑑定を使ってみる。というか鑑定は常時発動?ずっと文字が見えてる。
マーク・ベイガン ヒューマン テイマー
レベル169 投具B 斧B 短剣C 生活魔法B 料理B 薬学C 土魔法C 気配察知C 気配遮断B 忍び足C 隠密B 鑑定E 従魔強化C 育成者S
ふむ。やはり100くらいはあるらしい。育成者って何?とか思ったけどよくわからん。
悩んでいるうちにアカネの食事は終わったらしい。まだ日が高いけど疲れたから今日は帰ろう。鑑定さんの検証もしたいし。
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