第3話

歳月人を待たず。


いよいよ同窓会の日がやって来た。


うーん…


緊張する。


タカちゃん、来てるかな?


どんな男(ひと)に、なってるかな?


ドキドキしながら、皐月に指導されながら選んだ服とメイクで武装(は大袈裟かな?)した私は、指定された居酒屋の扉を開けると、ワアッと、店内に響く賑やかな声に圧倒される。


当たり前だけど、みんな大人になっていて、太ってたり痩せてたり、綺麗になってたりで、誰が誰だかわかんない。


すると…


「あれー。もしかして夏樹?夏樹智枝?!」


座敷の真ん中あたりに座っていた男性に名前を呼ばれキョトンとしてると、彼は屈託なく笑う。


「オレオレ!八谷光男(やたにみつお)!よく一緒に野球したじゃん!つか、女ってこえーのな?あのお転婆ともちゃんがめっちゃ美人になってる!なあっ!隆(たかし)?」


「えっ、みっくん?!美人だなんてそんな…それより、隣にいるの…が?」



…信じられない。


早く来いよと手招きするみっくんの横にいたタカちゃんは、少し茶色を帯びた髪の毛を短めにまとめて、黒縁の眼鏡に、スラッとした細身のスーツを着ていて…私を見るなり優しくはにかんでくれたので、ドキドキと心臓が高鳴る。


素敵!カッコイイ!!最高!!!


あの山猿タカちゃんがこんな素敵になるなんて、時間の力って凄い!!


みっくんが席を譲ってくれたので、私はタカちゃんの隣に座る。


すると…


「久しぶり。元気?」


「えっ!?あ、うん!元気だけが取り柄かーな?」


なにこれなにこれ!!


タカちゃん、すっごく落ち着いた声色になってる!!


スーツも仕立て良さそうで高そうだし、なんの仕事してるんだろ。


時計も、ロレックス?だっけ?やっぱり高そうだし…


そうしてジロジロ観察してたら、視線に気がついたのか、タカちゃんは僅かに頬を染めて笑う。


「あんまジロジロ見んなよ。恥ずかしい…」


「ご、ごめん!!でも、タカ…秋永君全然雰囲気違うから、びっくりして…」


私の言葉に、タカちゃんはポツリと呟く。


「変わらなきゃ、生きていけなかったんだよ。色々あってさ。…気になる?」


「え、あ、その…」


なんだか、タカちゃんの視線が恥ずかしくて俯くと、机の下越しに手を握られ、心臓が跳ね上がる。


「抜けよう?ちょっと行ったとこに良いバーがあるんだ。そこで2人きりで、話したい。」


「で、でも、抜けるって…どうやって?」


そう問うと、タカちゃんはみっくんに話しかけて、なにやらコソコソ話をしたあと、私の手を握って、3人でトイレに行く。


途中で仲の良かった女友達に誘われそうになったけど、みっくんが的確な言葉でかわして、無事にトイレに着くと、男子トイレに引き込まれ、タカちゃんが窓を開ける。


「こっから出よ。光男、サンキュな。」


「水臭いこと言うなよ。親友だろ?それより、上手くいったら、報告しろよ〜」


「バカ言うなよ。じゃあ智枝、お前から行け。」


「あ、う、うん。」


そうして、木登りの要領で居酒屋の窓から外に脱出し、上手くやれよ〜と手を振るみっくんに見送られて、私とタカちゃんは夜の繁華街へと向かったのだった。

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