「君は強いね」


 褒められちゃった。

 褒めてくれたんだよね?


「鈍感なだけだよ」


 僕は答える。愛想笑いは上手くできているかな。いっぱい、いっぱい、練習してきたんだし。


 何の気なしに、貴方は口にしたんだろう。

 安易に言ってほしくなかったな。

 そんな、僕のわがまま。


「……鈍感になるしかなかったんだ」


 誰も聞いてやしない。貴方はもう、ほかの誰かと話しながら笑っている。

 楽しいかい?

 楽しいよね。僕なんかといるより、ずっと。


「強くなるしかなかったんだ」


 生きる道がそれしかなかったんだ。


 無能だと蔑まれて。

 変な奴だと嘲られて。

 それでも生きるしかなかったからさ。


 いっぱい、いっぱい、傷ついて、それでも生きていたくて、死にものぐるいで作り上げた、不格好な僕の鎧さ。


 格好悪いけど、誇ってもいいよね。

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